タグ「巡音ルカ」のついた投稿作品一覧(63)
-
「まあいいわ。それよりもがくぽ、お腹がすいた」
そう言って、ルカはがくぽの来ているシャツの裾を引いた。はたと我に返り、がくぽはそうだったと大きく頷いた。
「マグロの醤油漬けは昨夜に仕込んだからすぐできる。あとは、味噌汁でもつくろうと思うが」
「じゃあ私がお味噌汁作るわ」
冷蔵庫の中を見ても良い? そ...るかとがくぽの日向ぼっこ・7
-
しかしそれにしても。ついにやったか。と、がくぽはルカの話を思い返しながらしみじみと呟いた。
「ついにやった?」
「カイトのことだ。あいつがメイコ殿に好意を寄せていること、ずいぶん前から本人の口から話を聞いていたからな。いい加減にそろそろメイコ殿に想いを告げろ、と何度も叱咤していたのだが。そうか、やっ...るかとがくぽの日向ぼっこ・6
-
他愛のない話は心配事を薄めてくれる。いつの間にかいつもどおりの和やかな酒宴へと空気がもどってきていた。その様子を寝転がったまま聞いていたルカは、けれど。と思った。
カイトのことを案じた瞬間。メイコの握り締めた拳は一瞬だけど震えていて。いつもみんなのことを支えてくれる姉が、時に叱って時に笑い飛ばし...るかとがくぽの日向ぼっこ・5
-
彼女はマスターのことが好きで好きで好きで、彼のことを忘れることができなくなって、ただ一つきりの思いに囚われてしまって。そして機能に障害が生じて。ボーカロイドとしては存在できなくなって。
彼女は、歌姫としての矜持を捨てぬまま、彼への思いも抱きしめたまま、消えることを選んだのだ。
そのことに対して...るかとがくぽの日向ぼっこ・4
-
「えぇっ、本当にカイト君に好きって言われたの?」
眠気を吹き飛ばすような勢いで結子がそう叫んだ。その大声に手放しかけていた意識がルカの元に戻ってくる。その大声に何事だろうか、と寝転がったままうっすらとまぶたを持ち上げてみれば、視界の斜め上、自分の頭上すぐ横に座るメイコが真っ赤に染まっていた。
「結子...るかとがくぽの日向ぼっこ・3
-
それはちょっと前のこと。お洒落をしたミクがこの家を訪れて、一緒に買い物に行こう、とグミを誘いに来たのだ。
「あれルカちゃん。こんなところにいたんだ」
家にいないと思ったら隣家の縁側でのんびりしているルカに驚いたミクを、今日は天気が良いから気持ちいいわよ、一緒に日なたぼっこしない? と自分の隣に誘っ...るかとがくぽの日向ぼっこ・2
-
***
こちらは一連のばあちゃんマスターシリーズの続きものとなっています。
今までの話を知らないとちょっと分からない内容となっています。
それでも良いよ! あるいは、今までのも知っているよ! という方はどうぞ
***
淡い陽光が日を重ねるごとに眩くきらめくひかりになってきた、ある初夏の午前中のこと...Master・るかとがくぽの日向ぼっこ・1
-
森を抜けるとそこには草原が広がっていた。そしてその先にある小さな村。そこが目的地だった。
馬で「塔」のある街から一週間ほど。術者となってからほとんど「塔」から外に出ていなかったルカにとって、一週間もの距離は長旅だった。元々が「庭」や実家からあまり外へ出たことのないルカである。途中で立ち寄った村や...夜明けのはじまる前【シェアワールド】 響奏曲【異世界】
-
積み重ねられた知識の層が織りなす静謐な空間がそこには広がっていた。丈夫なつくりの棚に詰め込まれているのは過去から続く記憶の書。幾人もの賢者が思考錯誤し生み出した術式が記されたもの、この世界の生物全てに関する習性を緻密に研究したもの、古今東西の文化文明を事細かに記録したもの。
そして嘘かまことか、...始まりの日【シェアワールド】響奏曲【異世界側】
-
庭に面した大きな硝子の窓の向こう。音のした方へ視線をやると、庭先にあげは母娘が立っていた。突然の訪問者にマスターが驚いてピアノから離れ、からりと窓をあけた。と、そこからあげはが上がり込み、マスターに抱き着いてきた。
リンが、とあげはが言った。
「私の代わりにマスターを抱きしめて、て言ったの」
そ...透明な壁・7
-
歌を、それでも歌うんだ。それしかできないから、ではなく、それが私たちができることだから。
メイコとカイトの歌が終わった瞬間、間髪入れずにルカは口を開いた。初めてもらった音。日本語が原曲の、英語の歌。アカペラから始まるアレンジ。少し艶のある、踵のある靴でダンスを踊っているようなそんな色気の滲んだ...透明な壁・6
-
マスターが。
そう言って、ミクは泣きだしそうな自分を叱咤激励するように、きっと、前を見据えて言った。必死で泣くまいと食おしばり、皆を見回した。
「マスターが、いま、ひとりなの。だから」
泣くのを堪え、ミクは言った。
双子を視線を交わした。黄色の髪が揺れて、行ってきます、と外へ駆け出した。
続...透明な壁・5
-
マスターが。と、ミクが泣きだしそうな顔で言った。
「マスターがいま、ひとりなの。ひとりで、泣きだしそうなの」
自分が泣き出しそうな顔で、そう言った。
タロは「ミク」を無くしたばかりの友人の元に居るのだという。ミクが居なくなった後の、パソコン内の後処理などをしているのだという。だから、マスターはひ...透明な壁・4
-
その日の夕ご飯の後、昼間の詳しい経緯をメイコが話してくれた。
曰く。以前、この家にも遊びに来たことのある「初音ミク」が壊れかかっているのだという。記憶中枢に問題があるらしく、情報を増やさないためにもずっとパソコンから出る事無く、また、歌う事もその身を壊す行為なので、歌えないでいるのだという。
...透明な壁・3
-
わんわん、と床に座りこんで盛大に泣いているミクの頭を撫でることしかできない。どうすれば、と途方に暮れたルカの耳に、ただいまぁ、と呑気な声と明るい声がふたつ響いてきた。それはメイコとカイトの声だった。
「ただいま、どうしたの?」
家に入った瞬間にミクの泣き声が聞こえていたのだろう。帰ってきたメイコが...透明な壁・2
-
※この話はいっこ前に書いた微熱の音の続きのような話です。
これだけだと、?なところもあるかもしれません。
それでも良いよ!あるいは読んだ事があるよ!という方はどうぞ~
↓
↓
↓
マスターが。と、ミクが泣きそうな顔で言った。
「マスターがいま、ひとりなの。ひとりで、泣きそうな顔してたの」
自分が泣き...Master 透明な壁・1
-
「ずいぶん遠くまで見回りをしたようですね」
きちんとした服装にマントを羽織り、眼鏡をかけた青年が外から『塔』へ帰ってきたルカたちにそう声をかけてきた。眼鏡の奥、読み取ることのできない冷静なその表情に、ルカは思わずがくぽの背中に隠れてしまった。
4人で数日、森付近に点在する町や村の見回りをして。ルカ...物語の始まる前の日 【シェアワールド】響奏曲【異世界側】
-
狂った魔獣が吼えた。大音量の咆哮が森の中の空気を、木々の枝を、逃げる子供の鼓膜を、震わす。肌で感じる魔物の気配に逃げながら子供は悲鳴を上げた。恐怖で走っている足がもつれる、かくんと力が抜ける、水の中に沈み込んだように周囲が重くなる。
そしてそのまま、まるで地面に滑り込む様な勢いで、ざん、と子供は倒...少し昔の話 【シェアワールド】響奏曲【異世界側】
-
自分は案外酷い事が出来る人間なんだな。と、目の前でうなだれる男に視線をやりながら思った。
今まで恋人だった男。長い時を一緒に過ごした肌を重ね吐息を交わした、男。
何がきっかけで、この男に対する熱が消えてしまったのか、良く分からない。川の流れがゆっくりと長い時間をかけて、進む方向を変えていくよ...月光の底~月光食堂itikuraRemix~
-
この作品は、以前書いた、カフェの話の番外編的な話です。
一連のカフェを舞台にした話を読んでいないと、ちょっと分かりにくいかもしれません。
それでも良いよ。または、読んだことあるよ。という方は前のバージョンからどうぞ。
Cafe・お菓子もいたずらも
-
いい加減冷蔵庫が空っぽなので買い物をするために、小岩井さんと一緒に部屋を出て、ほんの少し道中を共にし、そしてY字路で別れた。
先日母からもらった梅のシロップは小岩井さんが作ったもので、梅酒も一緒に作ったから今度飲みにおいで。と誘われたり。別れ際に、小学生の女の子が駆け寄ってきてその女の子は小岩井...多生の縁・15
-
「絵?」
結子の言葉に小岩井さんが首をかしげる。
穏やかなその調子にほんの少し正気が戻り、やっぱりなんでもないです。と言いたくなったが、もうここまで来たら。と結子はパソコン脇に立てかけて置いていたスケッチブックを差し出した。
「ルカさんの歌を聴いて、なんか色々と描きたくなってしまって。それで描いて...多生の縁・14
-
可愛らしい、優しい関係だな。と結子はその様子を見てふと思った。
マスターである小岩井さんを中心に、たくさんのボカロたちが寄り添うようにして歌っているような。そんな幻想が浮かびあがって。いいな。と結子は思った。羨むその気持ちは、自分もその寄り添う側にいたいのか自分が寄り添ってほしいのか、どちらなの...多生の縁・13
-
「違うわよ。」
あっさりと母はそう否定した。その言葉に、そうよねそう都合よく事が繋がっているはずがないよね。と結子が小さく落胆のため息をつくと、間髪いれずに、小岩井さやさんは先生の方よ。と言った。
「あなた、小岩井先生を知っているの?」
そうのんきな口調で母が言うのを結子はぽかんと頭の中を真っ白にし...多生の縁・12
-
この時期の晴れ間はかなり貴重だ。せっかくだから。と午前中から干しておいた布団を取り込むために、結子はベランダへ出た。
大きな白い雲がぽこんぽこんとあちらこちらに浮かび上がり、その合間から目が眩むほどに真っ青な青い空が見えた。じりじりと、太陽光が殺人的な威力でもって皮膚を焼くのだが、雨がここ数日続...多生の縁・11
-
「ごめんなさい、っていうならば。じゃあルカさん歌ってください。」
だけどまあ何を考えても、今はどうにも先が見えない状況だし。ちょっと休憩がてらに絵を描こうと、手元にスケッチブックを引き寄せながら結子がそう言うと、ルカは意図をくみ取ってくれて、はい。と頷いた。
あれから何度か歌ってもらった、未完成の...多生の縁・10
-
迷子、というのはどこかで道を間違えるから迷子になるのだ。ルカが結子の活動範囲が重なった場所で、辿るべき道筋を間違えてしまったから迷子になったのだ。
ならば、どこで道を間違えたのか分かればいい。ルカと結子の繋がりを探し出せばいい。のだけど。問題はどこで道を間違えたか、結子とルカの繋がりは何か、であ...多生の縁・9
-
何を、描いているんですか?と、ようやく手を止めた結子にルカが声をかけてきた。
「もしかして、私の歌の絵ですか?」
その期待に満ちた声に結子はあまり期待しないでね。と苦笑した。
「絵を描くのは好きだけど。上手ではないから。」
「見たいです。」
まるで子猫のように興味津々で大きな瞳をくるくるとさせるル...多生の縁・8
-
見えない彼の輪郭をなぞるように。大人とほんの少しの幼さを混ぜ合わせたその声が一途にひたむきに。桃の声は弦の音を追いかける。まっすぐな眼差しの無垢な声、記憶の底に眠る少女の声、眠る少女に寄りそう女の声。
ざわりと結子の肌が粟立った。
夕暮れの神社、あかい朱い鳥居、泥で汚れた小さなひざ小僧、男の...多生の縁・7
-
「いいなあ。皆、今頃ご飯を食べているのかしら。」
そんなことをデスクトップの端っこで座り込んだルカが羨ましげに呟いた。
「あなたたちも食事をするの?」
AI機能つきのアプリはそこまでヒトと似せてあるのだろうか。と結子が不思議に思って問い掛けると、その疑問を察したのか、ルカは必要性はないですよ。と前置...多生の縁・6