翌日、プレイヤー8名はいつものロビーでは無く、ホテル内のパーティーホールに集められた。目に見えて判る程、一人に敵意にも似た視線が注がれている。事情を知らない彼等にしてみれば当然だろう。その中に敵意とは違う、複雑そうに孤立した彼を見ている目が在った。泣き腫らして、まだ少し赤い目…貴女が眠ってない事は俺だけが知ってると思って良いの?

『閉じ込めた…?浬音さんを?』
『知らなかったの…あたし、帽子屋さんが今日居ないの知らなくて…!』

正直消えるなら消えてくれたって良かった。仕事が少し減る位にしか思ってない、誰がどうなろうと興味も無い。貴女以外は。

『何であの人が庇うの?何か言ったの?』
『わ、判んないよ!でも…どうしよう?!どうしよう?!』

どうして泣くの?閉じ込めた事を後悔してるから?大事になってびっくりしてるから?それとも自分のした事が皆に…気になってる彼にバレるのが恐いから?


――ねぇ、ブチ壊して良いかな?


作り笑顔のすぐ下で、何度も喉まで出掛かっては飲み込んだ言葉。何度も指先まで満ちそうになっては押し止めた衝動。解ってるよ、これは仕事で、貴女は大事なお客様で、出来る事は限られて、出来ない事でがんじがらめ。泣いてたって涙は拭いに行けない、転んだって抱き起こしに行けない、苦しんでたって何も出来ない。そう、貴女が俺に助けを求めない限りは。

「カカカカカッ!お早う御座います!パーティーホールへようこそ!今回の課題は
 ちょぉーっと特殊でな、まぁ、言うなれば時間をかけてコツコツと~?」
「時間?」
「また面倒そうな…。」
「そう言うなっての!今回のお題は―――これだ!!」


『愛される人形を作り上げろ』


「…人形…?」
「素人が作れるの?」
「ちっが―――う!!お前等忘れたのかぁ?!『チコリ』や『ラビット』はHNではなく
 DN!つまり…人形とはお前らの事だ!!」
「…はぁ?!」
「プレイヤーは『人形』として飾られる側と、飾る側に分かれてペアを組んで貰う!
 飾り付けた『人形』の中で最も視聴者票を獲得したチームが勝者となる!! 解ったか?」
「要するに…着飾るか、誰かを綺麗にしろって事ですよね?」
「その通り!『仲間』として協力出来るNPCは1つの『人形』に対して1人。
 例えばNPCを『人形』に選んだ場合、もう1人NPCを手伝わせる事が出来る訳だ。」
「なるほどねぇ。」
「期限は1週間。その間に服や体系を整える事!途中経過も動画に流すからな!
 そんじゃ!はっじめっるぜぇ~い!カカカカカ!!」

落ち着かない空気、孤立した彼は人知れずホールを出て、貴女はきっとそれを追う。ほら…予想通りだ…。ねぇ、それはどんな感情から出た行動?孤立した彼に対する同情?庇ってくれた事への感謝?気になってる彼はどうする気?貴女が追い駆けて出てったから驚いてるよ?酷い事するんだね、そして貴女は俺を見付けたら、ホッとした顔をしと、次に遠慮がちな声で俺に聞くんだよね。

「チェシャ猫さん…力を…貸してくれる?」
「かしこまりました。鳳仙花様。」

何だって力を貸してあげるよ、何だって言ってあげるよ、俺に助けを求めてくれるなら心からの笑顔を見せてあげるよ、だって頼られて嬉しいのは本当なんだから、例え頭の中で何度も声が聞こえたって。


――ねぇ、ブチ壊して良いかな?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-88.シクラメン-

ぜーんぶ、ね

閲覧数:218

投稿日:2010/08/24 14:17:23

文字数:1,403文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • 帝唖

    帝唖

    ご意見・ご感想

    ん?これは・・・・・・
    男を着飾ってもよかったんか!?そっちのが面白(*゜ー゜)=○)゜O゜)

    2010/08/24 20:34:05

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