-密室-
「あ、メイコさん…どうしたんですか?」
自分のほうにメイコが走りよってくることに気づいたカイコは、できるだけ平静を装い、笑顔でメイコに声をかけた。するとメイコは少し困ったような、それでもさっきより少し安心したかのような不思議な表情になった。
「ねえ、カイコちゃん、メイト知らない?見当たらないのよ。カイコちゃんなら会ってるかと思って」
「会ってません。トイレか何かじゃないですか?何にしても、少ししたら出てきますよ」
「そうかしら…」
「それじゃあ、私、まだやることが残っているので…」
「あ…っ」
そのままメイコの前を通り過ぎ、その後ろで話を聞いていたルカの前を横切って、玄関に置かれた買い物袋を取ると、キッチンへと入っていってしまった。頭をかきながらメイコはカイコの後姿を見つつ、ルカに話しかけた。
「…どうもねぇ…」
「主、何かおかしくありませんか?」
「ちょっとおかしいわね」
「普通なら先ほどのレンのように『買い物から帰っていない』と思うのでしょうが、彼女はそういいませんでした。しかし、メイトさんに合ってはいないという」
「もう一つ、あの買い物袋、普通に歩いていたら棚に隠れて見つかりにくいところにあるのに彼女、何の迷いもなく袋を取って行ったわ」
二人はそういって頷きあうと、リンとレンがいるはずの部屋のドアを開いた。しかし、中にはそわそわしているリンだけで、レンはおらず、メイコたちに気づくと、リンはすぐによってきた。
「母さん、ルカ、レン見なかった?トイレに行ってから、もう十五分も戻ってこないの」
「見てないわね。…リン、ちょっとお願いされてくれないかしら?」
「――え?」
少し困ったことになってしまった。
まさかメイトに気づかれるとは思っていなかったものだから、そういうときの対処をきちんと考えていなかったのが、まず間違いだった。しかも、あの少年まで。少なくともメイトは逃げられないだろうが、あの少年はわからない。自由に動ける状態だから、本棚を壊して出てくる可能性もあるのだ。そうなったら、間違いなく自分は『ブタ箱行き』になるだろう。それはつまり、これから来るはずだった自分たちの幸せな生活が壊れることにつながる――。
「どうしよう…」
あの三人に気づかれるのも時間の問題だ。
「元はといえば、全部めーくんがわるいんだから…っ」
「――カイコ、ちゃんと分かるように説明しろ。これはどういうことだ?」
地下室で客人たちに聞こえないように、メイトはいった。目の前にはカイコガ立っていて、二人の表情はあまりにも違いがあり、対照的といっても間違いではないように思えた。
「やっぱり、あの爆弾事件はお前だったのか?」
「…ごめんなさい…」
「謝れといってるんじゃない!説明をしろといっているんだ!」
「…だって、ボカリア教の教えでは、私たちは罪人を裁く権利があるじゃない!だから、その権利を有効に活用しただけ!何が悪いの!?」
力いっぱいの声を出して反論したカイコを見てメイトはため息をつき、一旦目をそらして目線を戻すと残念だというような目でカイコを見た。
「な…何?」
「…『何が悪い』かって?そんなこともわからなくなったのか?」
いうなり、メイトはカイコに背中を向けて地下室を出ようとゆっくりと歩き出した。
「どこ行くの、めーくん!」
「…警察。大人しく捕まって、罪を償うんだな」
「そんなことしたら、結婚もなくなっちゃうよ?めーくんもマスコミとかで…っ」
「別にいいさ。結婚は待てばいい。マスコミなんか耐えれば良いだけだ」
そういいながらメイトはカイコに見向きもせず、それどころかカイコの方へ振り返ることもなく、スタスタと歩いていく。
とっさにカイコはその場にあった木の棒を手にとり、後ろ姿のメイトの頭に思い切り振り下ろした。鈍い音が地下室に響き、少ししてメイトの体が少しぐらついたかと思うと、その場に倒れこんだ。
倒れたメイトを地下室の隅に運び、片手に手錠をかけてから棚の足の後ろを通し、もう片方の手にも手錠をかけた。これで逃げられないだろう。しかし、気がつくのは時間の問題である。急いでその場を離れ、本棚を戻して本を適当にぐちゃぐちゃにいれて…。
そこで、レンがきてしまったのだ。
「…なるほどな…。で、どうするんだよ?やっぱりあの木の壁をぶち壊すか…」
「いや、無理だ。お前も見ただろう?あの本棚は特別にできている。特にあの壁に当たる部分は分厚くなっていて、中にからくりになるようにいろいろな機械が入っている。しかも、それが壊れにくいように薄い鉄板が入ってる。どれだけ怪力でも、あれを壊すことはできない」
淡々と可能性をつぶしていくメイトは冷静だった。勿論レンもすぐに興奮するタイプではないので、リンが閉じ込められたのではなくレンだったと言う点ではまだよかったのかもしれない。しかし、流石にそう広くない密閉空間で二人、十分はゆうに過ぎているだろう。そろそろ危なくなってくるかもしれない。
ずるずると時間だけが流れていく。
「せめて密閉されていなければな…」
「どういうことだ?」
「炎系の魔法で一気に本棚を燃やす。中の鉄も溶かせる程度の魔法ならこの体勢でも使える」
「…今、この場で使うと酸素量が一気に減って危険か…」
「…クソ…頭がぼうっとして…っ」
「おい、大丈夫か?おい…!」
いきなりがくんとメイトの体勢が崩れ、うつむいたようになったかと思うと、レンの呼びかけに応えなくなった。そんなメイトの駆け寄ったレンもその場に崩れた。意識が朦朧とし始め、視界がぼやけていく。一気に体中の力が抜けていった。
本を並べなおし、カイコはそっと中を覗き込んだ。
一気に酸素が薄くなったように感じてカイコは顔をしかめ、中に足を踏み入れた。隅のほうでメイトが壁と棚にもたれるように気を失っているらしく、一向に顔を上げようとはしない。その近くでレンが眠るように気絶している。
メイトの方に近づくと、カイコはそっとメイトの耳元で囁くように、呟くように小さな声で言った。
「――めーくんが悪いんだよ?」
整った顔を確認するようにメイトの顎に指を添えて少し持ち上げると、自分の顔を近づけた。長いまつげが女性のようだ。それから、唇に唇を重ねた。
ぴくり、とメイトが反応を示したが、目が覚めたわけではないらしく、目を開くことはない。
それから手錠をもう一つだし、レンの片手と棚の足をつないだ。
これで、もう、自分とメイトを邪魔するものは何もない――
「カイコちゃん、それ、楽しい?」
鏡の悪魔Ⅳ 6
こんばんは、リオンです。
いつもよりちょっと投稿が早いから、
ちょっと調子に乗ってアンケートなぞとって見ようかと思うわけですね。
ってことで、わかる人には何を聞こうとしてるのかわかるかもしれませんが(汗
ちょっと早いけど次回はどんなシリーズにするのか、アンケートです。
1,ボーカロイドという設定重視。
2,まあ、ファンタジーだよね。
3,音楽団系ブラックファンタジー風味なアレ。
4,俺が設定考えてやるからリオンテメェ話考えろやぁ!!
さあどれですか?
アンケートは『鏡の悪魔Ⅳ』の最終回までです。
もう誰でもいいからアンケート答えてください…。お願いします…。
まあ、そんな感じでまた明日!
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ご意見・ご感想
リオン
その他
こんばんは、Ж周Жさん。
今日の分、投稿しましたから、続きは見られますよ♪
アンケートご協力ありがとうございまーす♪
皆さん1か2と答えるのですね…。どうしよう、このまま同着だったら!!!(汗
また来週ですね♪しばし、お別れです。
2009/11/09 22:30:30
リオン
ご意見・ご感想
どうも、ユウさん。
1か2ですね、わかりました!
期待されても、期待に添えるかわかりませんが…。頑張りますね!
2009/11/09 20:53:41
ユウ
ご意見・ご感想
いつも読んでいます。
アンケートと言う事なんで 私の意見を言わせてもらいます。
私は1か2が良いと思います。
次も期待してます。
2009/11/09 20:31:10
リオン
ご意見・ご感想
返事が遅れましたね、始めまして、神威 弥奈未さん。
読んで頂いて、ありがとうございます!
1か2ですね、わかりました!
4だったら簡単かなぁと思ったんですが…。ダメですか(笑)
面白いネタがあったらくださいね(何)!!
2009/11/09 17:43:24