とある休日の、眠くなるような午後だった。
「ねえ、めーちゃん」
キッチンのテーブルで広告を見ているメイコの隣に座ったカイトはぺたりとうつ伏せになって話しかけた。
「なにー?」
メイコは顔も上げず訊き返す。ペンのキャップを開けて、目当ての商品に丸をつける。きゅっと音がした。
「…ちゅーしていい?」
ポロっとキャップを取り落とす音がした。
「…ちょ、いき、いきなりっ、何言い出すのよ」
今日は珍しく全員が休日だった。ミクとリン、レンはダイニングでゲームをしている。きゃっきゃという笑い声が小さく聞こえた。
「だってー」
むすりとカイトは顔をテーブルに付けたままメイコを向いた。
「俺のアイスがない」
「それとこれとどう関係あるのよ」
大ありだよ、と彼は勢いよく起き上がる。
「冷蔵庫にはビールとネギでしょ!?倉庫には日本酒とワインと焼酎とミカンとバナナだよ!?俺の、俺のアイスはこの小さな冷凍庫の、こーんな小さなスペースにしか入ってないんだよ!?」
両手をいっぱいに広げた後、ぐっと小さくして俺のアイスのスペース、と悲しげに呟いた。
「アイスは常温保存できないからねえ」
諦めなさい、とメイコはまた広告に目を落とす。
「昨日1箱買ったのにすぐ空にするからでしょ?」
俺のアイス…とまたカイトはテーブルに突っ伏す。
「…買っても」
「駄目」
却下とばかりに即答する。えーという呻き声がテーブルからした。
「…だからさあ」
「何よ?」
「充電したい」
「は?」
「アイスの代わり」
めーちゃんで、と付け足すと、メイコは顔を真っ赤にした。
「い・や」
「なんで」
顔を真っ赤にしたまま彼女は顔を逸らす。
「…こんなとこで」
「誰も来ないよ」
「もうすぐ3時だし」
おやつを取りにあの子たち来るわ、とメイコは開いたままのペンのキャップを閉めた。
「1回だけ」
「???」
あー、負けたー、と言うリンの悔しがる声が遠かった。
カイトはカタンと椅子から立ち上がり、メイコの後ろに回った。そしてそのままぎゅっと抱きしめる。
「んー、アイスよりずっといいや」
めーちゃんで充電、とカイトは囁いた。
「…何個分?」
「1めーちゃん1アイス」
「同列じゃないのよ」
「持続力が全然違うよ」
アイスは1個じゃ全然足りないけど。
カイトは手をそっと伸ばしてメイコの顔を横向かせる。
「…充電、いいでしょ?」
吐息のかかる距離でカイトが囁く。メイコはお湯が沸くのではないかと言うくらい真っ赤になって、カイトの目を見た。
「…バカイト」
3時のバナナを取りにキッチンの扉を開けかけたレンは、音を立てないようにそっと閉めたのであった。
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