「・・・・・・ちょっと、良い?」
終業式が終わり、各自家に帰ろうとしたり、友達と夏休みの予定を話し合っている中、帰り支度をしていたレンに、リンはそう言った。
レンはリンに話しかけられたのが自分ではないと思ったのか、ポカン、とした顔でリンを見つめていた。そして、小首を傾げる。一方、リンはと言うと頬を少し赤らめて、もう一度、今度は少しだけ聞き取りにくかったがちゃんとレンの耳に届いた。
「・・・・・・ちょっと・・・良い・・・? 鏡音君・・・」
今度は丁寧に名前まで付けてくれた。名前を呼ばれた事に少しだけ驚きを感じながらもレンはふ、と柔らかく微笑んで
「良いよ」
と応えた。その様子にリンはカァ、と顔を赤らめ、自分の荷物を持ったまま蚊の鳴くような声で「じゃ、じゃぁ、ついて来て」と言うと足早に教室から出て行った。慌ててレンもその後を追った。
そのリンとレンの行動に気付いた者は誰もいない。只一人、リンの親友、亞北ネルを覗いて。
「・・・とうとう、その気になったか、リンは」
そう呟いたネルの表情は何処と無く寂しげだったが、直ぐに何時もの様にうクスリ、と可愛らしく笑うと
「でもまぁ、友達が幸せになれれば、私はそれで、良いの・・・。リン、幸せになんなさいよ」
そう呟いたネルの言葉はクラスのざわめきの中にかき消された。
フワリ、とリンの頭の上で結ばれている白いリボンが風に踊る。リンとレンは屋上に来ていた。ザワザワと聞こえるのは下校していく生徒達の声だろうか。
「で、話って何?」
ふ、と息を吐いてからレンはリンに問うた。レンに背を向けていたリンはゆっくりと振り返った。ギュ、と胸元で手を握り締めたまま。
そして、一回、深呼吸をして、言葉を紡ぎ出そうとした時だった。
「ちょっと、良いかな?」
レンに手の平でそれを制された。思わずピタリと動きが止まる。
「鏡音さんが俺に何言うのか、何となく、分かってる。けど、その前に、言わせて貰いたい事があるんだ。・・・良い?」
少しだけ、困った顔でレンはそう言った。リンは拍子抜けした、と言う表情をした後、
「呼び出したの私だし・・・。・・・迷惑かけてるから・・・。どうぞ、言って。何?」
何時ものレンに対するぶっきら棒な言い方で言った。レンはクス、と少し寂しそうに笑った後、スゥ、と息を吸って、こう言った。
「俺、鏡音さんの事・・・・・・・・・好きだ」
「え・・・・・・」
言おうと、してたのに。何だか先を越されて放心状態になっているリンにレンは続けた。
「俺、ずっと鏡音さんの事、知ってたんだよね。俺と苗字も背格好も殆ど同じの子がいるって聞いてて。まぁ、その時は全然気にも留めなかったんだけど・・・二年になって・・・同じクラスになった時に鏡音さん見てさ、何だろう、一目惚れ・・・っかな・・・? 直ぐに気になって・・・でも鏡音さん、俺に冷たいから嫌われてるのかなー・・・とか思ったりしてさ・・・。実はさ、本当は俺も今日、鏡音さんに声掛けようかと思ってたんだよな・・・。・・・・・・ってごめん、俺ばっか話してて・・・。嫌だったらごめん。でも、これが俺のき・・・」
「私も貴方の事が好きです!」
レンの言葉を遮り、リンは大声でそう言い放った。え、と何処か間抜けな声を出してレンはリンの方を見る。リンは、と言うと顔を赤らめハァハァ、と肩で大きく息をしながら俯いていた。
「私も・・・っ、何かずっと鏡音君の事気になってたけど・・・何でか分かんなくって・・・! 鏡音君に話し掛けられるとすっごい胸がドキドキしちゃって、自分の気持分かんなくなってつっけんどんな態度取っちゃって・・・! ごめんなさい・・・ごめんんさい・・・!」
ポツ、ポツ、とコンクリートの地面に水が落ちる。と、同時にガクリとリンが膝から崩れ落ちた。その蒼色の瞳からはポロポロと涙が零れていた。
その様子にレンは一瞬、息を飲んだが、ふ、とその口元を緩めると自分もしゃがみ込んでそっとリンを抱き締めた。
「大丈夫だよ。鏡音さんがああいう態度してた理由が分かったから。それに、返事も聞けたしね」
「返事・・・?」
レンの腕の中ではて、と首を傾げたリンだったが直ぐに先程叫んだ台詞を思い出し、カァ、とその頬を更に赤くした。そして顔をレンの肩に埋める。
「わ、私が先に言おうとしてたのに・・・!」
「ごめんごめん。でもさ、こう言うのってやっぱ男から、でしょ?」
ス、とリンの顔を覗く様にして、ね? と首を傾げてみせる。その様子にリンは顔を赤らめた後、何も言わずにレンに抱き着いた。
「何? 照れてるの? 大丈夫?」
クスクスと楽しそうに笑っているレンにリンは何も言わずにただレンに回している腕に少しだけ、力を込めた。
「失恋ですか? ネ~ルちゃん」
「ミク姉」
帰り道、ネルが一人で歩いていると近くの高校の制服を着た青緑の髪をツインテールにした少女がネルに話し掛けて来た。
「・・・まぁ、ね」
フ、と息を付いてネルは空を見上げる。ミク、と呼ばれた少女も同様にする。
「でも私は友達の幸せの方が大事だから・・・。リンが幸せならそれで良いんだ・・・。リンは私の大事な友達だから・・・」
空を見終わった後、今度はミクに視点を合わせ、ネルは柔らかに微笑んで見せた。その様子を見てミクは少し困った様な、残念そうな、少し表現し辛い笑い方をして見せた。
「ネルちゃんは・・・他人の幸せを願う子だね・・・。悪い、とは言わないけど・・・でも・・・」
「良いの。これで。これが私の生き方だから」
ね? と小首を傾げて笑って見せるとミクは呆れた様に笑った後、
「まぁ、確かにその方がネルちゃんらしいね」
と言って笑った。周りから何処かおぼろげに蝉の鳴く声が聞こえた。
コメント1
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ご意見・ご感想
かりん
ご意見・ご感想
こんにちは!!
あああっ!!
ネルが切ない・・・
ネル、いいヤツだ
でも、わたしはリンとレンが結ばれたからそれでいいのよ!!←
2010/08/04 10:39:53
lunar
こんにちは。先日はアンケートに答えて頂き有難う御座いました!
すいません、ネルがこんな役回りで・・・。
でもこれは自己解釈メランコリックを書いてる時から決めてた設定なので・・・
ネルは良い子です。恋愛よりも友情を取ります。友達の幸せ第一! な子なので
リンとレンはこれからもリンがツンツンしてレンはそれを楽しみながら過ごしていくと思われますよ!(←
メッセ、有難う御座いました♪
2010/08/04 11:38:58