リンと出会って、10年がたった。今日が10年前、丁度リンと会った日。
あれ以来、リンとは会ってない。家がどこにあるかとか知らないし。
それに、人間と関わることは幽霊として良くないから。人間とずっと関わっていると、悪霊になってしまう。
それでも俺は、リンのことを忘れられなかった。
姿形変わらない俺とは真逆で、リンはきっと大きくなってちょっと大人っぽくなってるんだろうな、とか妄想してしまう。
「レン、あんたこの日になるといつも一日中外を眺めてるわよね」
「…メイコ」
そんなことを思っていると、同居人の幽霊…メイコが背後にいた。
「メイコお姉ちゃん、でしょ。全く…」
「…うん」
「あら、いい子。…今まで何も言ってくれなかったけど…そろそろ言ってくれてもいいんじゃない?」
リンとのことは誰にも言ってない。
「…」
「ま、言いたくないならいいんだけど。私としては寂しいなーってちょっと思ったり、ね」
「抱かせてくれたら言うよ、メイコお姉ちゃん」
俺がそう言っておちゃらけると、メイコは俺の頭に鉄拳を落とす。
俺は、痛む頭を摩りながらその場を去った。
「…」
自分の部屋に戻って、再び窓から外を眺める。
薄汚れてボロボロの白いレースのカーテンは、もう役目を果たしていない。
あらゆるところにある蜘蛛の巣は、生きていた頃なら気持ち悪がるだろう。
昔この廃墟に住んでいた人間のものがあちこちに散乱している。
グラスやボトル、ペンにノートに分厚い本。全てホコリをかぶっている。
基本、特別なことがない限り人間世界にあるものは触らない。
人間世界は人間世界の流れがある。俺達幽霊は、それに除外された存在だ。
俺がこのボトルを割ったら、迷い込んだ人間が怪我するかもしれない。つまりはそういうことだ。
人間世界に関与すればするほど、俺達は人間世界の空間から反発を受けて悪霊になってしまう。
「―レン」
そんなことを考えていると、ドアの向こうから声が聞こえた。―がくぽだ。
「なに、がくぽ」
「―いや、ただ…メイコが寂しそうな顔をしていたからな」
がくぽがドアをすり抜けて部屋に入ってきた。
「また何か言ったのか」
「…言ってないよ」
「……そうか」
がくぽはベッドにドサリと腰掛ける。
「みんな、勘違いしてるよ。別になにもない」
「そうは見えない」
「それは、がくぽ達からして…だろ。俺がなにもないって言ってるんだから、なにもない」
「…10年前の今日の日の夜、お前の荒れようは凄かった」
がくぽはそう言うと俺の髪をくしゃりと撫でてそのまま壁を通り抜けて森へと出かけていった。
あの日、本当に俺は荒れた。
リンと出会って別れたあの日―。
+-+-+-+-+-+-+-+-+
「―…」
ガチャ…
「あら、レン。おかえり」
「…」
「レン、聞いてるの?」
「…」
「レン!」
「え、あ、ああ…うん。なに?」
「なに?じゃないわよ。女の子が3人来てるわ。またアンタ手を出したの?」
「俺の勝手だろ、ルカ」
いつも通り、そう冷たく返して俺は自分の部屋へと向かった。
部屋のドアを開けると、見たことがあるようなないような女が3人いた。
1人は昨日俺に抱かれた奴、もう1人は一週間前に俺に抱かれた奴、最後の1人は10回も俺に抱かれたと豪語する奴。
はっきり言ってよく覚えてない。
「レン、会いたくてきちゃったぁ」
「今夜もいいでしょお?」
「ねぇ、レン…」
一人の女が俺の頬を撫でた。そして瞼にキスをする。キスされた瞼が気持ち悪くて仕方がなかった。
「……な」
「え?」
「俺には触るな!!」
その女を蹴り飛ばして、首を締め上げる。
幽霊同士なら触れるし、殺すことは出来ないけど苦しめることはできる。
「ぁ゛、…っ!」
「きゃあああ!」
「だ、誰か―…!」
叫んだ女の髪を乱暴に掴み、床に叩きつける。
逃げようと壁を通り抜けたもう一人の女の脚を掴み、爪を食い込ませる。
すると、いきなりバンッ!と扉が蹴破られた。
「レン!」
蹴破ったのはメイコ、そのあとにルカやがくぽが部屋に入ってくる。
部屋の光景をみるなり、三人は顔を青くした。勿論最初から顔色は悪いけど。
メイコに殴られ、吹っ飛んだあとがくぽに押さえつけられる。
ルカは、泣いている女の背中を優しくさすっていた。
すると一人の女が逃げようとした。
俺は、近くにあったティーカップを投げつけた。
「やめろ、レン!」
ガシャンッと大きな音をたててティーカップが割れた。
「汚い、汚い汚い汚い汚い!!!」
この女達はなんて汚いんだろう。
リンに触られて全てが純白に戻ったような俺を、女にぐちゃぐちゃに汚されたみたいで腹立たしい。
「レン、落ち着いて」
「だまれ、だまれっ」
「大丈夫。もうあの娘達はいないわ」
「うっさい、うっさい…!!」
気づいたらもう女達はいなかった。
俺を押さえつけていたがくぽの腕も放されていて、ただ俺が泣きじゃくってぐずっているだけだった。
「レン、なにがあったの」
「―でてけ」
「レン、」
「出ていってよ、頼むから…」
弱々しい俺の声を聞いて、3人は戸惑いながらも部屋を出ていき俺を一人にしてくれた。
+-+-+-+-+-+-+-+-+
その日以来は、以前と同じように過ごした。
女に触られても平気だ。
ただ、四六時中リンのことを考えていることを除いて。
10年の月日がたっても、リンは俺のことを好きでいてくれているのだろうか。
早く、早く会いたいよ。
-第2話END-
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