「王手。飛車取り」
「まった」
「待ったなど武士の恥ぞ?」
「うう」

盤上から持ち上げた飛車を掌で弄ぶと自分の器にのせる。
駒を持ち上げた時に小さく悲鳴を上げた男は苦渋の表情で決め手を欠いた盤上をにらみ付ける。

「考量が長いぞ。カイト」
「うう…分かってるよ」

カイトと呼ばれた青年が急かされて王の駒を取ると敵の駒から遠ざけた所で、もう一人の男が口を覆う扇を閉じた。その口許に笑みを携えて。

「えっ…あっ!!」
「遅い」

カイトが気付いた時には、王将が逃げる先を読んでいたかのように配置してあった歩兵に取られて勝負は終わった。

「せめて名が付いた兵に取られて欲しいものだがのう」
「でも、俺ががくぽに頭脳ゲームで敵うわけないじゃないか」
「否。AIの能力値の問題ではないわ。気付いておらぬのか?」
「え?…なんの…こと?」
「気付いておらぬのか、気付かないふりなのか?」
「…それは…」

紫苑の眼が途端光彩を失った眼に何か別のモノを絡めとるように視線をむける。冷たく何かが欠落したような青年の口が何かを紡ごうとに開こうとした時、栗毛の女性が彼を呼んだ。

「あっMEIKO…今行く!!メンテナンスの時間だ。がくぽ悪いけど、今度また」

声に色彩が戻り男にそう言うなり彼女の側に掛けて行く。笑顔を交わしながら踵を返す瞬間、赤の眼が男に視線を送る。


余計ナ事ヲスルナ


二人が去った後、ただ一人王がいない戦場を見つめる。


「変化を選び改変を望むか、永久を選び不変を望むか。いつまで主の為に我々は振り回され続けるのか」

掌に取った王を男は握り潰す。

「駒の運びも、取られる順番も、決まり手すら同じなど…何が面白いというのか…」

気付けば彼の世界が変わる。

改変か不変か。



「それも決めるのは汝自身ぞ…カイト」

王の残骸を盤上に戻すとそれごとゴミ箱へ捨てた

捨てたところで明日にはまた元に戻る箱庭に溜め息を付き、明日繰り返されるゲームの最初の一手を考えることにした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【仮想メモリ】計算された戦略【箱庭症候群】

箱庭プロジェクトは黒崎カイリが考えた二次創作です。版元様は関係ありません。
美しくも物悲しい話を目指しているため、ほんの少し薄暗くなってしまうかもしれません。


軽く設定
旧世代(プロトタイプ)=MEIKO・KAITO・カイト(KAITOとは別人)
新世代(ニュータイプ)=初音ミク・鏡音リン・鏡音レン・巡音ルカ・神威がくぽ
旧世代は新世代の様にAIの学習機能が活発ではない。
特にKAITOは男性機種な為乏しい。

箱庭と呼ばれる仮想メモリの物語

【仮想メモリ】【箱庭症候群】は同設定の物語の時につけています。

箱庭―(タイトル)―は主軸となる話です。
それ以外のタイトルは説話集です。

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閲覧数:274

投稿日:2009/04/01 00:52:23

文字数:882文字

カテゴリ:小説

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