☆*゜・。
来緒が部屋の中へ入っていってしまったのを見ていた三人は、顔を見合わせて小さな声で話し出した。
「…どうする?」
「どうするも何も…来緒が案内してくれるみたいだし、行かないの?」
「ですが、この洋館が地図で示された場所ならば、彼も敵の一人かも知れませんわ」
「来緒はそんなことしないわ」
「何も彼が本人であるなどという保障はありませんわ。信用させるための罠かも」
相手が誰なのかすらよく分かっていない鈴と、兄を信用しまくっている未来、そして用心深く疑っている流香の話し合いは意見の食い違いにより進まなかった。しかし来緒が部屋から顔をだして、三人に催促するように靴でトントントントンと床をたたき出したのをみて、流香も行動を起こすことに決めたらしい。
仕方ない、ここは腹をくくっていってみるしかないだろう。三人は頷きあって、大きな螺旋階段を先頭に流香を鈴、未来の順番に一歩一歩、ゆっくりと上がっていく。その間も来緒は苛立ちを隠そうともせずに足で音を鳴らし続けていた。
「…こっち」
三人があがってきたのを見ると休ませる間も作らず、来緒は部屋の中へ三人を誘導していった。しかし何故か電気はつけようとしない。
「来緒?」
「もうちょっと、こっち」
その誘いにすぐに進もうとする未来を手で制して、流香が用心深くゆっくりと前へ進み出た。途端、空中に飛び出したかのような浮遊感に襲われ、流香は自分の不覚に気がつき、とっさに呪文を唱え、手のひらに発光体を作り出し、その場を照らした。だが、それも一瞬のこと。声を出す暇もなく流香は重力に引かれ、姿を消してしまった。
「流香姉!!…きゃあ!!」
一瞬でも照らされた場に見えたのは大きな穴で、流香はその穴に足を滑らせて落ちて行ったようだった。それを助けようと手を伸ばした鈴も、バランスを崩してそのまま穴の中へとまっさかさま―――。
「流香姉ちゃん、鈴ちゃん!」
そう叫び立ち尽くす未来に来緒は、流香と同じように呪文を唱えて発光体を作り出すと、部屋の中を明るく照らして見せた。
「来緒…。どういうこと?」
「こういうこと」
そういうと軽い未来の体を持ち上げ、そのまま穴の上で服をつかんでいた手をぱっとはなした。勿論未来の体は重力のままに穴の底へと落ちていった。
「…ふぅ。全く、嫌な役だよなぁ」
兄に通された部屋へ辿り着いた芽衣子は、その場で当たり前のようになじんでいる仲間の姿を見つけた。
「あ、めー姉。遅かったね」
「れ…怜、何してるの?」
呆れたような驚いたような、いろんな感情がごちゃ混ぜになった表情で、芽衣子は怜が手にした黒いシャープペンシルと、床に広げられた大きな紙に書かれた文字の列を見つめていた。
「…兄貴、コイツ頭いいけど…全く男らしさがない」
「お前、今報告しなきゃいけないことか?それ」
ため息をついてそういった芽衣斗の表情は一欠けらも笑ってはいなかった。けれどその不安を断ち切るように怜の高い声が、部屋に大きく響き渡ってそれと同時に部屋は暖かい空気に包まれた。
「――できた!」
「…本当?」
「よくやったな、チビ!」
「はい!めー姉も、協力してね。ちょっと大掛かりなんだ」
さっきから驚いて呆れて、呆然として――なんだか表情だけでも十分忙しそうだわ、と芽衣子は分けの分からない感想を心の中でもらしていた。
落ちたのは、深い深い暗闇の中だった。
呪文を唱えてさっきのように発光体を作り出すと、自分たちの周りが薄ぼんやりと照らし出され、これが地下の通路であることが分かった。そして狭い通路の壁には走り書きで一枚の紙が貼られていて、よくよく見るとその紙の左上に自分たち三人へ当てたのであろう、宛名が書かれていた。
『未来ちゃん、流香さん、鈴ちゃんへ。この紙の指示の通りに行動してください。まず、この地下通路を抜けるために…』
どうやら自分たちがここに落とされたのには、違う意図がありそうだ。三人は張り紙を綺麗に破けないように壁からはがすと、紙にかかれた指示通りに通路を進み始めた。
携帯電話があの不思議な音楽を奏で始め、芽衣斗がまたあわてて上着やらズボンのポケットやらをあさりだした。しかし携帯電話が見つからないのか、芽衣斗は何度も何度もズボンや上着に手を突っ込んでいた。
「…兄貴、ここ。さっき置いてただろ」
「あ、そうだった。忘れてた」
「…もう歳じゃない?」
「五月蝿い、流騎」
そういいながら携帯電話の着信履歴を確認すると、芽衣斗は舌打ちをして携帯電話を閉じると仲間たちに
「クソアマ共、きやがった。流騎、芽衣子に今の状況説明して、協力仰げ。俺はこっちに来ないように奥に誘導するから、計画を進めるときは極力小声でな」
「…はーい。了解しましたぁ」
ふざけたように言った流騎も芽衣斗が出て行くと芽衣子の方へ向き直り、これまでのいきさつと計画、怜に協力してもらっていることを分かりやすく噛み砕いて説明を始めた。
満月の夜に Ⅶ
はーい!リオンです!!
投稿時間がいつもよりずば抜けて早い…!やった★今日は寝られるわぁ
あ、そうそう。前回のアンケートですが…。一応ちゃんと回答してくれる方がいまして…。その方からの熱烈なアピールによりまして、次回シリーズは
『22222222222222222222222番の次回作はなし』ということで…。あ、いや、冗談ですよ。ジョークです、ジョーク。見捨てないでくださいよ、中学生のちょっとした嘘じゃ…いや、冗談じゃないですか…。
ごめんなさい、すみません、もうしません、だから見捨てないでくださいぃぃ
と、いうことで(どういうことだ)正解(?)は『2番の鏡の悪魔シリーズ』続編になりました。回答してくださり、アリガトウございました。
このアンケートで得た回答のシリーズが始まるのは今書いている『満月の夜にシリーズ』が終わってからですが、それまで根気よく見守ってやってくださいね。
では、また明日です!
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おにゅうさん&ピノキオPと聞いて。
お2人のコラボ作品「神曲」をモチーフに、勝手ながら小説書かせて頂きました。
ガチですすいません。ネタ生かせなくてすいません。
今回は3ページと、比較的コンパクトにまとめることに成功しました。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
↓「前のバージョン」でページ送りです...【小説書いてみた】 神曲
時給310円
8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
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バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
ピノキオPの『恋するミュータント』を聞いて僕が思った事を、物語にしてみました。
同じくピノキオPの『 oz 』、『恋するミュータント』、そして童話『オズの魔法使い』との三つ巴ミックスです。
あろうことか前・後篇あわせて12ページもあるので、どうぞお時間のある時に読んで頂ければ幸いです。
素晴らしき作...オズと恋するミュータント(前篇)
時給310円
自然は資源ではなく
パートナー
あなたの目指す幸せとは
なんですか
今だけ自分だけの幸せ
それで幸せなのですか
それならそれでも
いいでしょう
資源は消耗品
ここは限りある空間...自然はパートナー
普頭
初めての目覚めと見知らぬ天井にこの手を伸ばせど
1mmが届かないの連鎖 回る電子の海
時間は進めどどうやら空腹の予定は未定で
この先の世界を超速とスローで駆けて行く
ある日私の頬を掠めた柔らかなその音は喜怒哀楽で溢れていて
無作為にばらまかれていたような言葉たちを集めて声を当ててみたんだよ
こうして...未来へと 歌詞
kwing
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
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ご意見・ご感想
リオン
その他
みずたまりさん
何で分かったんですかね?名前は伏せておいたのになー(棒読み)…わかります(←何が?
中学生ですよ?それが何か?(逆切れ)
文才だなんて!!
…みずたまりさんはホメ上手ですね…。浮かれてしまう…。
ずっと見守っていてください!!紙が降臨する瞬間が見えるかも知れませんよ!?(←学校で「神降臨キタ――――(゜∀゜)―――!!!!」とか言って学級旗作ってた馬鹿なんで)
また明日も見てやってくださいね。鏡の悪魔シリーズも着々と進めるつもりなんで!!
2009/07/28 21:49:20