そして、3月9日。雅彦は自身の病室でライブを見ることにした。今はライブ前で、いつもだと、ライブには出ないボーカロイドが前説をするのだが、今回は六人全員が出るライブであるため、ボーカロイドが前説に出ることは無い。今回はボーカロイドと関わりの深い企業の広報が新商品やイベントの説明をしたりしていた。それらを見ながらライブの開始を待っていると、ミクが現れた。わき立つ会場。最初は、ミクが一曲歌う。そうして歌い終わると、ミクが口を開いた。
 「みっなさーんー、こーんばーんわー」
 『こーんばーんわー』
 「初音ミク、です♪」
 ミクの声に歓声が上がる。
 「今日は、私たちのライブに来ていただいて、ありがとー♪」
 再び歓声が上がる。
 「今回のライブ、楽しんでいって下さいね♪」
 再度観客席から歓声が上がる。ミクはその歓声に一礼したあと、次の曲を歌いだした。
 (…問題無さそうだな)
 ミクの歌や動き、表情といった全体の雰囲気を見ながらそう判断する雅彦。少なくとも、目に見えるレベルで、悪い所は無い。
 そんなことを考えていると、どんどんライブは進んでいく。次の曲は、ミクとリンとレンの三人の曲だった。三人の歌は完璧で、聴いているほうも気分が良い。曲が終わると、リンが口を開く。
 「ねえ、ミク姉、この曲、三人でライブの会場で歌うのって、久しぶりね。リン、張り切って歌っちゃった」
 「そうね、実は結構要望が多かった曲だったんですが、他の多くの曲との兼ね合いもあって、ここしばらくのライブでは歌う機会がありませんでした。みなさん、この曲を心待ちにしていらっしゃった方って、どれ位いらっしゃいますか?」
 そのミクの問いに、沢山の拍手が上がる会場。
 「みんな待ってたよな。この曲、盛り上がるし」
 その盛り上がりを受けて、レンが話す。
 「毎回歌えたら良いのにね」
 「リン、俺たちの曲は沢山あるんだから、バランスを考えたら、そういう訳にはいかないだろ」
 「でも…」
 「リン、リンの曲だって、他に沢山良い曲はあるわよね?毎回同じ曲を聴くより、色んな曲を歌った方が、お客さんも喜んでくれるわ」
 そのミクの言葉に、やはり沢山の拍手が上がる会場。
 「ね?」
 「うー」
 会場からの賛意をバックにされると、流石にリンも退かざるを得なかった。
 「二人とも、そんなことより、次の曲、行かないと」
 「それじゃ、次は俺たちの曲です」
 そのレンの声に、わき立つ会場。
 「…ということですので、私はここで失礼します」
 そういってミクはいったん退く。すると、残ったリンとレンの衣装が、一瞬で替わった。そうして二人は歌い出した。それと同時に観客席のサイリウムが緑と黄色から、黄色一色になる。その後も、ルカやKAITO、MEIKOも出て、そのたびに観客先のサイリウムの色が変わっていった。ボーカロイドたちもそうだが、観客のボルテージもずっと上がりっぱなしである。
 (…いつも通りのライブだな)
 ライブを見ながらそう判断する雅彦。この調子ならミクは問題ないだろう。雅彦は心配しすぎたのかもしれない。

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初音ミクとパラダイムシフト2 2章22節

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投稿日:2017/02/23 22:28:14

文字数:1,298文字

カテゴリ:小説

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