KAosの楽園 第4楽章-002

投稿日:2010/10/29 17:13:49 | 文字数:3,290文字 | 閲覧数:218 | カテゴリ:小説

ライセンス:

・ヤンデレ思考なKAITO×オリジナルマスター(♀)
・アンドロイド設定(『ロボット、機械』的な扱い・描写あり)
・ストーリー連載、ややシリアス寄り?

↓後書きっぽいもの





 * * * * *
何かこの話では、カイトを泣かせてばかりな気がします。

*****
ブログで進捗報告してます。各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

ふと気が付くと、闇の中に立っていた。
もしも誰かが見ていたら、きっと幽鬼のようだと悲鳴を上げただろう。

どうでもいいことだけど。

カタカタと小さく音を立てて引き出しの中を探り、目当てのものを取り出した。僅かに差し込む月明かりにかざすと、研ぎ澄まされた先端が冴え冴えと光る。
冷たい兇器は、不思議と誂えたように手に馴染んだ。



 * * * * *

【 KAosの楽園 第4楽章-002 】

 * * * * *



ざわついていた心は、今やシンと凍り付いていた。こうなってしまうと、僕を苛んだのが何だったのかよく解る。

『そうだ、昨夜作ってくれた五目御飯があるの、持ってく?』

気安い声、何気ない言葉。他人(ひと)に薦められるほどのものと思ってくれたのは、嬉しくもあるけれど。
でも、マスター。

それは、マスターに食べてもらう為のものなんですよ?
貴女の為だけに、存在するものなんです。
他の誰かになんて譲らないで。
他の誰かに譲るのを平気だなんて、思わないで。

 僕 の 事 も 。

ねぇ、マスター、貴女の気持ちが嘘だったとは思いません。僕の想いを受け入れてくれた事も、貴女も僕を好きだと言ってくれた事も。
だけど、それだけでは足りないんです。
僕にとっては、『マスター』も唯一の存在だから。僕の根幹を成すものだから。
マスターで、恋人で。総てでいてくれなくては、駄目なんです。

だけど貴女は、そう思ってはくれない……?
僕は貴女のもので、貴女だけのもので。こんなにも貴女が総てで、そう在りたいと望むのに。
貴女は、僕が別の誰かを『マスター』と呼んでも平気なんですか?
僕を貴女だけのものにしてはくれない? 僕を独占したいと、望んではくれないんですか……?

「駄目ですよ、そんなの。ゆるさない」

漏れ出た声は嗤っていた。手の中の兇器を一撫でして、マスターの寝室へ滑り込む。
闇に慣れた目に、ベッドの位置はすぐに判った。その上に眠るひとの膨らみも。



足音を殺して忍び寄り、静かに覗き込んだ。
無防備に寝息を立てる、穏やかな寝顔。一房、髪が口元へと落ちかかり、むずかるように身動ぎする。
そんな様は幼子のようで愛らしく、クスリと小さな笑いが零れた。そっと左手で頬に触れ、髪を払う。

「ん……」

満足気な息を漏らして、僕の貴女はふにゃりと笑う。起こしてはいけないと思いながら、込み上げる愛おしさに触れる手を離せなくなった。滑らかにカーブを描く頬、指の間を零れる髪、柔らかく温かい躰。

やわらかく、あたたかい。

その感覚に、ぎくりと身が強張った。
柔らかいのは、温かいのは、生きているから。いつか貴女がくれた言葉が、耳の奥で木霊する。

『冷たい、話さない、笑いもしないモノなんかより、生きてるままの方がずっといいでしょ?』

――生きているから。
右手の兇器が酷く硬く、冷たく存在を主張する。これを貴女に突き立てたら、貴女も硬く、冷たくなって。二度と笑いかけてくれる事も、歌うようにこの名を呼んでくれる事もなく。
この幸福は、永遠に失われる。

僕も貴女と逝くけれど。その先で、永遠にふたりだけでと願うけれど。
叶うのか、そんなことが。
同じ処へ往けるのか? ヒトではない僕が。貴女を害する僕が。貴女と同じ高みへなど、

「往けるはず、ないじゃないか……」

愕然と打ちのめされ、よろめきながら後退った。がくがくと膝が震え、あっと思う間も無く腰を打つ。
ガタン、と床が大きく鳴って、

「――ぅん……ん? っきゃあ?!」

跳ね起きた影が上げた悲鳴に、身体も思考も凍り付いた。



悲鳴。嫌悪。拒絶。
嫌だ違う、マスター。嫌わないで、拒まないで!
恐慌に陥り叫ぶ脳裏に、同時にもうひとつ響く声がある。
拒絶なんて。僕を拒むなんて。ゆるさない……!
握ったままの兇器に、右手が力を籠める。恐れが全身を駆け巡り、同時に狂気も僕のもので。均衡が崩れタイトロープが千切れ、真っ逆様に堕ちる刹那。

「って、カイト? 吃驚した、不審者に侵入されたかと思っちゃったよ」

安堵の声が耳を打った。
笑みを含んだ声。見えなくたって判る、貴女は微笑みかけてくれている。きっと少し照れた顔で。
噴き上げるような愛しさは、殆ど焦燥にも似て。立ち上がろうと床に手を着き、その違和感に血の気が引いた。
マスターがベッドサイドの灯りを点けて僕をその瞳に映したのは、それと同時だっただろう。

「違、マスター、これは……っ」

掠れた声が飛び出した。何が違うと言うんだろう、こんなものを持ち出して侵入しておいて。浅ましい自分に吐き気がする。俺はあんなに明確に、このひとを害そうとしていた。
それなのに、それでも、無様な願いが止まらない。

「ますた、マスター、お願いです。捨てないで、俺を、此処に居させて」
「カイト」
「お願いです、マスター、離さないで。俺は貴女のものです、全部全部、貴女だけのものです。赦して、マスター、嫌なんです……っ」

喘ぐように綴る言葉は切れ切れで、最早単なる泣き言だった。震える躰、視界は滲み、だというのに右手はまだ張り付いたように兇器を捨てない。捨てたいのに、こんなもの消えてしまって、無かった事になってくれたらと願うのに、強張った指が放さない。

「厭です、マスター、違うんです……貴女と居たい、貴女を、傷つける物になんか、なりたくない……っ」

ボロボロと涙を落としながら、ただひたすらに泣き喚いた。そうするしか、できなかった。



小さくスプリングの軋む音がして、マスターがベッドから降りてきた。おぞましい右手には目もくれず、硬直する俺にゆっくりと歩み寄る。
怯えや警戒の欠片も見せずに、マスターは俺の目の前で膝をついた。しなやかに手を差し伸べて、いつかのように俺の頭を優しく抱いて。

「ありがとう、カイト」

告げられた言葉のありえなさに、俺はとうとう狂ったんだと思った。こんな都合の良い幻想、何処まで浅ましいんだ。
だけど包まれた温もりは本物で、触れてくれる感触も本物で。優しい指が涙を拭って、瞼に、額に、甘い唇が落とされる。

「マス、ター……?」
「ん。泣かなくっていいんだよ、カイト。カイトは何処へも遣ったりしない。そんなの、私だって耐えられないよ」

胸の奥から全身に、灼熱が走った。恐怖と狂気に冷え切った躰と心が、じわりと芯から熱くなる。

「ねぇ、カイト。こんなに思い詰めて、極限で――ううん、きっと『覚醒』の引鉄は引かれてるね。なのにカイトは踏み止まって、私と居たいんだって願ってくれて。それは一体、どれほどの想いなんだろう」

漆黒の瞳が熱く潤んで、星を散らしたように煌めいた。その目が俺を映している。真っ直ぐに。愛しげに。

「こんなに、必死に想ってくれて。カイトの全部で、愛してくれて。ありがとう、カイト――嬉しいよ」

『嬉しい』、と。
こんな俺に尚、そう言ってくれるんですか。こんな想いを尚、『愛』と認めてくれるんですか。
貴女は、ほんとうに、どうしてそんなに。

泣かなくていい、と言ってもらったのに、新たな涙がぼろりと落ちた。喉の奥を締め付けた、苦しいばかりのそれとは違う、不安を融かす熱い涙が。
マスターは俺に身を寄せて、そっと背に腕を回してくれた。何もかもが赦されたようで、眩い光が弾けるようで、奇跡みたいな幸福に目眩がした。何も考えられなくなって、ただこのひとを愛しているのだという事だけが残って、それだけしか要らなかった。

いつしか右手も狂気を忘れ、俺は両腕でマスターを抱き締めていた。堪らない安堵が胸を満たす。
そうだ、これでいいんだ。これが俺の望み、真の望み。
俺の全ては、ただこのひとを感じる為に。このひとに捧げる、その為だけに。

辿り着いたんだ、と何処か遠くでそう思った。



<the 4th mov-002:Closed / Next:the 4th mov-003>

【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。

■小説メイン時々歌詞な字書き……だった筈が、動画編集やボカロ調声、作曲にまで手を出してます。どうしてこうなった。

□ブクマやコメント、有難うございます! 転げ回るほど嬉しいですヽ(*´∀`)ノ
□オールキャラ書くけど9割KAITO。
□使えるものがあればお気軽にどうぞ。使用報告だけお願いします^^ 歌詞については、良識の範囲内であればアレンジや部分使用など改変していただいて構いません。多忙な時期でなければ、ある程度の調整も承ります。

■シェアワールドコラボ主催してます。参加者様募集☆ http://piapro.jp/collabo/?id=15073
■ブログなど
・『藍色書棚 -アオイロショダナ-』http://ioliteshelf.blog.so-net.ne.jp/ (投下テキストのシリーズ別リンク)
・【pixiv】http://www.pixiv.net/member.php?id=2555381
・【ニコニコ動画】http://www.nicovideo.jp/mylist/29644728
・【VCLFAN.NET】https://vclfan.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=46
・【ツイッター】http://twitter.com/y_airu

もっと見る

この作品URLを含むツイート1

もっと見る

▲TOP