妙な着信メール。
彼はメールを開いてみた。

そこにはこう書いてあった。
「ソノ電車、降りたほうがイイヨ。コヨミサン」

「なんだよ、このメール。誰だ?...“はっちゅーね”?」
わけがわからない。
自分で登録していないのに、文字で“はっちゅーね”と発信されるのも、変だ。

ガタン、ゴトン。
次の駅が、近づいてくる。

車両にいる人たちは、相変わらず、一人残らず眠ってしまっている。


●この電車、降りようか

電車は、駅にゆっくりと停まった。
「あれ?」
暦君は変だなと思った。ドアが開かない。

車両はホームにとまったまま、しんとしている。

窓から見える地下鉄のホームには、待っている人が誰もいなかった。
1分くらい、そんな状況が続いただろうか。
“プ・プシュ”という音とともに、電車のドアが開いた。

「あ、開いた」
何となくホッとして、彼は周りを見る。
外のホームを見て、ふと、「この電車、降りようか」と思った。

そのとたん、するすると電車のドアが閉まってしまった。

また、地下鉄はゆっくりと走り出す。

暦君は思った。
「そういえば、今、駅名のアナウンス、なかったよなぁ」


●“ご乗車、有難うございます”

ゴトン、ゴトン。
電車はスピードを上げていく。
すると、車内に小さな声で、アナウンスが流れる。
「...ご乗車、有難うございます。この電車は、ヨミ行きの各駅停車です...」

暦君は、首をかしげた。
「ヨミ行き?ヨミってどこだ? これ、本町行きの電車じゃないのか?」

聞き間違えかと思ったが、確かにそう聞こえた。

と、そこにまた、メールが着信する。
開くと
「降りたほうがイイヨ、それ。黄泉に行っちゃうヨ」

また、“はっちゅーね”からのメール。
彼は、文面を読み直した。黄泉?こうせん?...そうか、「黄泉(よみ)」だ。

彼は思った。
「黄泉、って、死の国だよな...え?」ヾ(゜0゜*)

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玩具屋カイくんの販売日誌(274) 地下鉄のアナウンス 

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投稿日:2016/04/24 11:21:42

文字数:814文字

カテゴリ:小説

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