「・・・待て」
「・・・何か?」
相変わらず人の家でくつろぎまくり、気が付いたら雑誌を散らばしているミク、相変わらず正座のまま微動だにせず動かないルカ。
その妙ちくりんな天使だか守護霊だかを見比べ、ウーンと首をかしげながら、俺は疑問を口にした。
「お前ら二人もココにいて俺にはヘンな影響ないのか?」
「今回は影響があまり出ないように極力努めていますので」
「いやいや」
「大丈夫よ、影響っつったって骨が折れやすくなるとかそんなんだから」
「いやいやいや」
俺はまだ高校生なのにそんなじーちゃんみたいなコトになってたまるか。ふう、と溜息をつき、ミクのまわりに散らばっている雑誌を一つ拾い上げる。ミクが見てたのに、と抗議の声を上げたが気にしない。そのまま二人から三メートルくらい離れて、雑誌を自分の足元に置く。そしてソレを指差しながら、
「いいか、ココよりソッチはお前らのスペース。コッチは俺のスペース。入ってきたら殴るからな」
と一言。
・・・そう言えばなぜ俺は、これ程までにあっさりとこの状況を飲み込んでいるのだろうか。人間はよくわからない状況に直面するととりあえず飲み込んでしまうのだろうか。少なくとも俺はそうらしい。
雑誌を指差したまま、ゆっくりとミクを睨みつける。ルカさんはあんなにしっかりしてるんだから大丈夫だ。問題は人ん家に入ってすぐにくつろぎだすミクの方なのだ。あの様子なら、これでもかと近づいてきて俺に悪影響を与えようと必死になるに違いない。ほらみろなんかニヤついてるよほら。
ミクがニヤついたままスクッ、と立ち上がった。ニヤニヤ顔をさらにニヤニヤさせながら、スタスタと歩み寄ってくる。やめろ、来るな、と声を上げる暇もなく、彼女は俺の目の前までやって来た。ニヤニヤ顔がニヤニヤしすぎてなんかスゴイ事になってる。
「そんなに怖いの?」
「怖いよだからコッチ来んな畜生」
「へええー?」
ぴと。
ミクの指が俺の頬に・・・!
「うわああああ言った傍からお前ええええ!!」
「ハッハッハッ聞こえんなー」
「聞こえてんじゃねえかあああ」
「ミク!よしなさい!」
ルカさんの一喝が聞こえた。よし、ナイスルカさん。かっこいい!
「えええ、だってえー」
「だっても何もないでしょ!守る人を傷つけてどうするの!」
「ぶうう」
ミクの指が離れた。というかミクがルカさんに引き剥がされた。
「ごめんなさい、カイトさん」
「いえいえ・・・」
ばたばた暴れるミクを必死で取り押さえながら、ルカさんは頭を下げた。いい人だ、とつくづく思う。しかし、なんだかこの図が、おもちゃを買ってほしくて暴れてる子を引きずってくお母さんの図にも見えるからフシギだ。待て。じゃあおもちゃは俺なのか。
暴れていたミクがやっと大人しくなると、ルカさんは、はあ、と溜息をついた。ミクは相変わらずブーブー言っているが。俺も溜息をつく。なんだかものすごく疲れた。
「ごめんなさい。とりあえず、五メーター程離れていれば平気でしょう。では、私共は離れていますので、何かありましたらお呼びください」
ルカさんはそう言うとペコリとお辞儀し、ミクを引っ張って向こうの壁まで下がっていった。そして、また正座で座り込むルカさん。ミクは雑誌の山を持ってきてまた寝っ転がっていた。
さて・・・どうすればいいのだろうか。
とりあえず今は何をすればいいのだろうか。レンのコトに関しては何もしないのだろうか。ただ今はココでだらだらしてろと言うのだろうか。
「な、なあ、二人共・・・」
とりあえず聞こう。そう思い口を開く。ルカさんはすぐに、はい?、と反応してくれたが、ミクは相変わらず雑誌に夢中だった。
「・・・レンはどうすんだよ。アンタらの言うコトがホントだとしたら、レンは今ヤバイんじゃないのか?」
「・・・そうですね。しかし・・・」
しかし、なんだ。
「しかし、我々の力を使ってもなぜかレン君やリンちゃんの居場所がつかめなくて・・・。先程から試してはいるんですが・・・」
「・・・なんで?・・・てかそんなコトもできるのか」
「はい。・・・何故かは私にも分かりかねます・・・」
「こうなったら手当たりしだいに探してみる?」
ミクが口を開いた。
「いえ・・・。まだ様子を見ましょう。何か事情があるのかもしれません」
「・・・事情?」
「・・・ええ、私達の考えのつかない所で・・・。彼らは彼らなりに、何かあるのかもしれませんね」
彼女はそう言うと、窓の外に目をやった。大きな月を眺めるその姿は、とても、・・・そんな言葉では言えないような、それ程までに美しかった。
「・・・私達の力に及ばない何かが」
--続く--
鬼さん此方、手の鳴る方へ。 -七-
今回はいつもより短い・・・かな?
なんかよくわかりませんがミクさんはくつろぎたいようです。
・・・またもグダグダですみません。orz。
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