■リンレンリン
■双子とか鏡とかボーカロイドとか色々全部無視
■学園ものなのかもしれない
■読んで気分を害されたらすみません、脳内から消去願います




 お願い、これ渡してくれない?

 放課後、教室の隅でこっそりとリンから同級生に手渡されたのは淡い卵色の封筒。レンに渡して欲しいという。内容は見なくてもわかる、ラブレター。
 こういう手紙は自分で渡したほうが良いんじゃないかと一応、遠まわしに断ってはみたけれど、どうしても渡す勇気が無い、お願いだからと縋られれば突き放すことも出来なくて成り行きのまま受け取ってしまった。

 最近、女の子から彼へのこうした接触が珍しくない。
 一緒に廊下を歩くときにすれ違う、違うクラスの同級生が彼を見ていたり「誰それが格好いい」そんな他愛も無い会話の中で名前が挙げられていたりする。そして多分、彼が誰かから思いを告げられることも今回が初めてじゃないはず。

 少し前までは彼が女の子たちの注目を浴びるようになったことが誇らしくて嬉しかった。
 でもいつの間にか、それが不安でたまらなくなった。
 並べた手のひらや戯れに羽織ってみた上着の大きさの違いに戸惑ったり、ふと見上げた横顔がまともに見られなくて俯いたりするようになったのも同じ時期だった。
 要するに、好きなのだ。リンが自分の気持ちに気付くまでにはそれほど時間はかからなかった。ただ、それからどうすればいいのかわからない。
 好きと言う気持ちをぶつけて壊してしまうよりは、家族という関係に甘えるほうが楽に決まっている。でもそうすることが正しいのか、それでこの先後悔しないのかわからない。何よりいつか、彼が「家族」である彼女より他の人を一番大切に想うようになるかもしれないことを考えるとたまらなくなる。不安の無限ループがはじまってしまう。
 素直に感情をぶつけられる自分以外の全ての女の子がいっそ妬ましい。

 家に着いて部屋に直行したリンはベッドに座り、着替えもせずに手紙を取り出しそれと向き合った。
 夕焼け色に染まるそれをゴミ箱に放り込むのは簡単だがそうはしないと彼女は思う。でもそれは自分に手紙を託した同級生の気持ちを大事にしたいからではない。
 彼が手紙の送り主の気持ちを知った上で、その気持ちを拒絶して欲しいのだ。そして彼に一番近い女の子は私なのだと確認して安心したい。そのためなら人の大事なものですら利用出来る。我ながらあきれるほど性格が悪くなったと彼女は思う。

 軽く二回叩かれたドアの音で我に返った。
「こんな暗いところで何やってるの。ドア開いてなかったらいるかいないかもわかんないよ」
 彼がいつの間にか帰ってきていた。部屋に入りながら後ろ手でドアを閉めて彼女の横に座った。彼女の手にした手紙に気付いたようだ。
「へえ、それ手紙?リンってばそんなの貰っちゃうようになったんだ」
リンはあわてて手の中のそれをレンに押し付けた。
「違うよ!これはレンの!クラスの子から預かってきた。はい」
レンは急に興味を失ったように寝転んだ。
「要らない」
「そう言われても困るよ」どうでもよさそうなレンの様子に心から安堵したリンは一応形だけ言い募って、ぽいっと床に落とされた手紙を拾った。
「どうしても受け取って欲しいの?」
「まあ、頼まれたしね」
 本当はもう受け取ってくれなくてもいい。彼の様子を見ただけでもう十分だと思った。ごめんね、受け取ってもらえなかったんだよと彼女に明日返そう。それでこの件はおしまい。
 ところがレンは起き上がってリンから手紙を取り上げた。開封してざっと目を通していた。その姿にリンは血が引いていくような気がした。
 どうして?要らないんじゃなかったの?また不安が心のどこかから顔を出す。スカートの裾をぎゅっと掴んで彼から目を逸らした。
「で、この後リンはどうして欲しい?」
「そんなの、レンの好きなようにすればいいじゃない」
断ってよ。本当の気持ちとは裏腹な言葉が出てしまう。何なの?興味なさげな癖に結局読んじゃったじゃない。ばかばかばか。
「リンそれでいいの?リンより可愛い子だったら付き合っちゃうかもよ」
からかうように投げられた台詞に対して言い返す言葉より先に出てきたのは涙だった。
「いいじゃない…付き合えば…そうしたいなら…」
ああもう泣きながらこんなこと言ったんじゃ、私はあなたが好きですって言ってるも同然だとリンは気付いた。家族でいようかどうしようかとか、さっきまでそれなりに考えていたのに結局自分でバラしてしまった。これからどうなるんだろうか。
 その時不意に後ろからぐっと襟を捕まれてごろっとベッドに仰向けになった。そうすると片肘を立ててちょっと体を起しているレンと目があった。息がかかるほどの距離。最近こんなに密着することって無かったから、久しぶりで焦った。涙も引っ込むくらい驚いた。そして、ごく小さい声で可愛いなと聞こえたような気がした。
「え?今何て言ったの?」
それには答えてくれずに、レンは違うことを言った。
「ごめん、泣かせたかったわけじゃないんだ」
頬の涙がレンの手で拭われる。ひんやりとして冷たい。指長いなと関係ないことを思った。
「そんな不安そうにしなくていいよ、リン以外の子を好きになったりしないから」
からかってみたくなっただけだと彼は言って、もう一度謝った。
 そんなことはとりあえずどうでもいい。リンが何よりも気になるのは直前の言葉だった。
「レンって私のこと好きなの?」
「好きで悪い?」
彼はちょっとふてくされたようだった。
「悪くないよ!」
リンは慌てて返事をする。
全然悪いことなんか無い、でもどうしてこういう物言いするようになったんだろう。前ってもっと可愛かったよねえ?

 そのまま寝転んだままキスした後に見えた、彼の肩越しに見える窓の外はもうすっかり暗くなっていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

手紙

リンレンでチューが書きたかっただけです。お粗末さまでした…。

恭華さん、メッセージありがとうございました。
勢いで投稿したはいいものの、こっ恥ずかしくてピアプロ自体チェックしておりませんでした。遅レス、すみません。

また何か萌えが降ってきたら書きますね。

閲覧数:2,531

投稿日:2009/01/04 05:32:14

文字数:2,429文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 恭華、

    恭華、

    ご意見・ご感想

    凄く面白かったです^^
    素直じゃないリンに少し大人っぽいようなレンにきゅんきゅんしました(笑

    更新楽しみにしてます\(^O^)/

    2009/01/07 18:22:50

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