「…よし、今日はこんなもんかな」


僕はペンを机の上に置く。
今日も、満足のいくものが出来上がった。

封筒に入れて宛先を書き、切手を貼る。
そして近くの郵便ポストに投かん。


自分の家のポストを空ける。
だが、スーパーのチラシとか、どうでもいいものしか入っていなかった。





僕は君が大好きだ。
そんな君への愛を、僕はポエムに綴った。
そのポエムを、君の家に送り続ける。
君の感想を待ち続けて、もう15年経った。

返事はまだ来ない。
君からの返事は…まだ、来ない。








<<粘着系男子の15年ネチネチ>>









僕は気がつけば、君を好きになっていた。
僕はポエムを書くのが好きだから、君のことをポエムに書いた。
君に、見て欲しかった。




1年目。
その年、僕はがむしゃらだった。
君へのポエムを、毎日毎日、欠かさずに書いた。
夢中になり過ぎて、気づけば数時間経過していたことだってあった。

君に直接渡すのは恥ずかしいし、君は忙しいから僕にあまり会えない。
だから毎日読んでもらえるように、手紙みたいに郵便で送ることにした。


ポエムを書いた紙を封筒に入れて封をする。
そして宛先・僕の住所を書いた。

切手はどこにあったかな?
あ、あったあった。
…うっわ、少な。
後で郵便局とかで買ってこよう。
軽く100枚くらい。

僕は、執拗に切手を舐めた。
…ちょっと、君に引かれるかもしれない。
今のうちに言っておこう。
すみませんでした。


君に届け、僕の唾液。
…気持ち悪いとか言われないのを願っておこう。
あと郵便局の人にも言っておこう。
まことに申し訳ありませんでした。






2年目。
その年も、僕はがむしゃらだった。
君が好きで、とにかく好きで。
その君へのポエムを、ただただ夢中に書いていた。

…夢中になり過ぎて、僕の家が燃えても気づかない程だった。
これは皆「いやそこは気づけよ!!!」とか言うよね。
僕も、そんなバカな自分に言いたい。殴りたい。
アホかって言いたい。

あ、服が下から燃えていったよ、確か。
熱いだろ。気づけよ。いくらなんでもおかしいよ。
そして、ようやく気づいたときには、襟しか残ってなかった。
おかしいだろ。マジツッコミだよ。
ちなみに、ポエムは死守。






3年目。
その頃には、こなれてきた。
僕ポエムの才能あるんじゃね?
僕凄くね?(ドヤァ

自分で言うのもアレなんだけど、もはや文学の域だろこれ。
なんかその辺りのレベルに達した。
やったねレベルアップ。
経験値はもらえなかったよ。残念。

どうせだから他の人にも見てもらいたい。
そう思って、mixiの日記で公開した。
おいマンボウ、ちょっとじっとしてろ。
プルプルすんな。

…なんか、マイミクがカンストした。
なんかPCから煙が出てる気がするけどきっと気のせいだ。
…あ、マンボウ力尽きた。






4年目。
mixiから幅を広げようと、僕は雑誌(月刊ポエム)に投稿した。
おうカッパ、見守っててくれ。

…うなぎパイ食べているときに見たニュース。
「マジキチ!奇才現わる」というタイトルで、僕のポエムは社会問題にまで発展した。
ビデオデッキに犬挟まってるけど、きっと気のせいだ。

そして、どういうわけかポエム集の出版が決まった。
だからサラリーマンを辞めた。
上司はカンカンだったけど、ズラを奪って帰った。
上司呆然。ざまぁw


君へのポエムも、ちゃんと送っている。




4年間待った。
返事は、まだ来ない。




5年目。
僕は、プロポエマーのなった。
サイン会を開いた(強制的にやらされた)ら、差し入れをたくさんもらった。
F1層に特にうけた。

だけど、自分で言うのもアレだが僕は一途だ。
だから、他の子はひじきが生えた大根に見える。
近寄んな。離れろ。帰りたい。




6年目。
僕は、体を壊した。
毎日毎日書いていたから、すでにポエムは二千を越えた。
ちなみに、今の時点で折れたことがない骨というものはない。
壊していない内臓も無かった。

それでも、ポエムは書き続けた。




7年目。
完調し、僕は退院した。
さて、今日は君を、何に例えようかな。
「エクストリーム・アイロンがけ」にしようかな?
「複素内積空間」かな?




8年目。
その年も、僕は変わらない。
今日は、君を何に例えようか?
「幕下16枚目の全勝優勝」かな?
いや、ここは「AMPA型グルタミン受容体」かな?
もうそれでいいや。




8年間待った。
返事は、まだ来ない。




9年目。
僕は、交通事故にあった。
全身に怪我をした。
とくに酷いのは頭。
ひどく頭を打ったらしいのだ。
当たり前のように、僕は入院した。

僕は、自分の名前さえも、自分が誰なのかさえも忘れた。
でも、君が好きだっていう事、それだけはきっちり覚えていた。

だから、ポエムは書き続けた。




10年目、11年目。
頭の怪我以外は治った。
でも、記憶は戻ってこなかった。
それでも、君が好きだった。
ただ、返事が欲しい。
でも、君の家の住所がわからない。
それも覚えていなかった。




12年目、13年目。
頭の怪我も治った。
部屋中にポエムが溢れた。
足の踏み場がなくなった。
まだまだ、君が好きだった。
事故で全てを失くしてしまった僕に出来ることは、ポエムを書くことと君を想い続けること。
それしか、持っていなかった。




14年目。
その年にも、まだ記憶は戻らない。
そのせいか、毎日が怖くて不安だった。
君を一目でもいいから見たかった。
そうすれば、僕は記憶が戻って救われると思っていた。
でも、君の住所がわからない。
ただ、君にたった一言、言いたいことがあった。
それさえも、今の僕には叶わない。




14年間待った。
記憶はまだ戻らない。
返事はまだ来ない。




そして、15年目。
とうとう、僕に記憶が戻った。
君の住所も、君がどんな人なのかも、自分のことも。
あんなに取り戻したかった記憶が、ようやく戻った。
でも、僕は全部思い出し、そして泣き出した。
僕は、一生思い出したくないことを、思い出してしまった。

僕が君のポエムを書き始める前。
そう、今から15年前だ。


その15年前に、君が死んでしまったことを、思い出した。
涙は、とまらなかった。
返事が来ない理由が、今この時になってようやく知った。
僕は15年前から、とっくに記憶を失っていたのだ…




君への愛を綴ったポエム。
それを、ずっと重ねていけば、いつかは天国の君に届くかな?
君のものだった部屋に、毎日のように放り込んだ。

生前、君が僕に家の合鍵を渡してくれた。
その合鍵で、君の家に入る。
案の定、家の中は僕が送ったポエムが山のようにあった。
君と僕の願いで、今この家は僕のものになっていることを思い出した。


君がもう、僕の目に見えなくたってさ。
僕が、君を愛し続けてやるんだ。君を忘れないために。

でも、きっとまたいつか、会えると思っているよ。

僕が君を忘れない限り、君は僕の中で生き続ける。
でも、僕は君を忘れたから、君を何回も失った。
だから君は、『また』いなくなった。










僕は気がつけば、君を好きになっていた。
僕はポエムを書くのが好きだから、君のことをポエムに書いた。
いつか、君に見て欲しかった。

僕は君が大好きだ。
そんな君への愛を、僕はポエムに綴った。
そのポエムを、君の家に送り続ける。
君の感想を待ち続けて、もう16年経った。

返事はまだ来ない。
君からの返事は…まだ、来ない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リクエスト】粘着系男子の15年ネチネチ【自己解釈】

雪りんごさんのリクエスト、家の裏でマンボウが死んでるPさんで「粘着系男子の15年ネチネチ」です。

本当にgdgdで申し訳ないです((もはや日常茶飯事
今回は真面目に構想を練りつつ、ちゃんと本家様の動画のPVも見て書きました。
他のリクエストもただいま執筆中です。
完成は未定。

動画を見ていてちょっと笑ってしまったコメント。
「そして17年目、おでこにビワが生えた」
混ぜるな!って思いましたww


本家様 http://www.nicovideo.jp/watch/sm14989713

閲覧数:2,836

投稿日:2012/03/10 16:52:30

文字数:3,194文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    リクエストありがとうございます!

    自分だったらこんなの書けませんよ…orz
    ホント笑ったり泣いたりですねww
    っていうか自分でツッコミw彼以外とマジメさんだったのね((蹴

    ブクマ頂きます!

    2012/03/11 10:13:06

    • ゆるりー

      ゆるりー

      自分もこんなの書けませn(書いてるし
      ですよねw
      っていうか、友人が大勢の前で堂々と歌って歌詞間違えたのを思いだs(((((
      本人はいたってマジメでs((

      ブクマ感謝です!

      2012/03/11 11:26:24

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