眩しすぎる、今日も。
「ねえ、今日もあんた死んだ顔してんの」
君は今日も。
真昼間に俺のような社畜が外に出たなら、そりゃあもうクラクラして。
健康のために、行き詰まりの解消のために、というか暗々とした空間から逃げたさすぎて消去法で外に出るものの、日陰のような涼しさが性に合う僕には下界が眩しすぎて。
例えば、目の前の。
「あぁ、ええと…」
「メイコよ。流石に名前くらい覚えてよね」
「あぁ、メイコさん」
「飯くらいちゃんと食いなさいよ」
「ええと」
「その顔見るほうが嫌っつってんのよ」
「……いつもいただいていますね」
「私だってここで休憩してんだから」
「他の場所に移動しましょうか…?」
「人殺しになりたくはないわ」
「えっ、いや……」
「見殺しにするほうがこちらの夢見が悪くなるのよ」
さっさと食べなさい、と隣に腰掛けた彼女は言う。
メイコさん、で合っていただろうか。
俺がこの会社に入ってから1ヶ月、みるみる顔が痩せ頬がこけ、クマが絶えなくなりウ●ダーインゼリーのみを淡々と啜る過程を遠目から見ていたらしい。
人殺しって。まるで俺が放って置いたらすぐ死ぬみたいな。
いや、まあ否定は出来ないし実際時間の問題だが。
「あんたさぁ、そんな顔して生きてて楽しいの?」
「?楽しいも何もこの人生に無いというか…」
「馬鹿じゃないの?」
「と言われても」
「美味しい?」
「美味しいです」
「……そりゃ良かった」
少し不満げな顔をしながらも、彼女も同じご飯をかき込んでいる。
つくづく、よくわからないなぁと思いながら睡眠時間3時間の頭で考える。
味の濃いソース焼きそばが残業続きの身体に染み渡る。
***
「あんたさ〜〜〜〜〜〜〜〜」
今日のお弁当はオムライスだ。
黄色い玉子の層をこじ開けると赤くてつやつやしたチキンライスが出てくる。コーンやグリンピース、鶏肉といった具もしっかり入っていて、味付けもとても美味しい。
この黄色と赤の平和なメニューを平和なお弁当箱でいただく日が来るとは思わなかった。
「美味しい?」
「美味しいです」
とても。
メイコさんのお弁当は、いつも細々とした感じではなく主食がバンと詰め込まれている感じなのだが、それが逆にありがたい。
「メイコさんのご飯を食べると、お腹が空いてしまうから困るな」
「ハ?」
「いや、誤魔化していた空腹がより顕著になるというか……」
「あんたちゃんと食べてんの!!」
「ええと」
正直、今彼女が言えば安心しそうな言葉は言えそうにもない。
「てかあんた、新卒だっけ」
「一応」
「若い頃の苦労はなんて昔は叫ばれたけど、今はそんなの進んで背負う必要はないわよ」
「エンジニアなんてこんなもんですよ、どこも」
「……あんたはその仕事やってて楽しいの?」
「うーん、こんな俺が社会に出れている時点でありがたいというか」
「馬鹿じゃない?」
「俺は馬鹿ですよ」
「……今日8時、ここ集合」
「??」
「いいから。今日は残業も捨てて集合よ」
「ええと…?」
「美味しかった?」
「美味しかったですよ!それは!」
「ならいいわ」
そんなやり取りをしたのが大体新卒でこのどブラックと有名な企業に勤めて3ヶ月くらい経った頃か。
***
[今日も絶対遅くとも10時には帰ってきなさい]
ピロリンと通知が彼女からのメッセージを伝える。
半ば押し切られる形で何故か彼女の家に住まわされている俺は、彼女によるやや強引な生活改革トレーニングを受けている。
[わかってます。あと1時間で死ぬ気で終わらせます]
文章を打って、取り急ぎ送信。
そしてディスプレイにまた向き合い死ぬ気でコードを打つ。
この絶対早く帰れそして飯を食い風呂に入り寝ろ、という生活を半ば強引に送らされわかったことがある。
一つは、仕事の効率がめちゃくちゃ悪かったこと。
この企業の風土的に、定時上がりはもってのほか、残業をし最悪寝泊まりという勤務スタイルが平常なので誰も意外と能率的に仕事をしてはいなかった。人は期限があれば死ぬ気で働けば終わるんですね。
もう一つ。メイコさんがどんな会社に勤めてるかは知らないが、俺よりは数時間早く上がり帰宅している彼女の作るご飯は夕飯であろうと変わらず美味いこと。
そしてもう一つ。俺は大概この数か月で……餌付けされてしまっていることだ。
正直、この数ヶ月で。
彼女の作るご飯から始まったこの生活が、少しずつ、少しずつ俺を健康にしている。
そうして、彼女に向けた感情も少しずつ、ご飯をくれる人なんてものだけでは無くなってきている気がして。
彼女が「美味しい?」といつも聞いてそれに俺が「美味しい」と答えた時、良かったと笑う顔がいつしか。
まだ今のままじゃ、言葉にも形にも出来ないけれど。
少しだけ、まだ少しだけ見ないフリをしながら今日のご飯はなんだろうと考える。
出汁の美味しいいつもの味噌汁が待ち遠しい。
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