それは、ほんの少しの好奇心と、反抗心。ただそれだけ。
「ごめんね、あたし1人暮らしだから、部屋きったなくって。あ、ソファも汚いけどそこに座っててね。はいバスタオル」
「いえ、そんな」
1LDKのアパートの一室。その部屋の主の彼女はちょっと待っててね。そう言って電気をつけた部屋を片付けはじめた。
彼女は一人家出をしたわたしを、拾ってくれた。
「家出したの? 3日ぐらいなら泊まっていっても良いわよ」
笑顔で手をさしのべながら。わたしは悪い人ではなさそうと言うのと、つまらない今までを覆せそうな、そんな気がして、その手を握った。
そして雨が降る夜の中、ルカと名乗る彼女が一人で話し続ける状態で彼女の住むアパートまで歩いてきた。
そこまでが今の状況。
「あーあ、こりゃ捨てなきゃな」
「あの、本当にお構いなく」
彼女は賞味期限が切れている食べかけのポテトチップスの袋の中を覗き言う。
脱いだ服が散らかり、ソファで手の届く範囲には無造作に雑誌やリモコン、ティッシュなどが置いてあり、流しには食べた後の皿が水につけたまま、俗に言う散らかっている状態だけれど、わたし的にはこの部屋は安心できる何かがあってこのままで居て欲しい。
「本当に? 内心きったない部屋とか思ってない?」
「全然。こういう部屋のが生活感が感じられて安心できます」
「わあ、皮肉だね。きみー。そういえばさ、名前なんてゆうの?」
持っていたポテトチップスの袋をポップな柄のゴミ箱に捨てて、隣りの部屋に行って雨に濡れた服を脱ぎはじめた。なんだかいけないものを見ている気分になってそっと背を向けた。
「ミク。カタカナでミクです」
「へー。ミクちゃんていうのね。あたしはさっき言ったけどルカでいいから。あたしもミクちゃんくらいの時ね、持ってるお小遣い全てで海辺の駅まで家出したことあってねえ。ミクちゃんの事見捨てられなかったのよ」
白いTシャツに赤いジャージというラフな格好に、ポニーテールにしたルカが出てきた。まじまじと見るわたしに、この格好が楽なのよ。とはにかんだ。
「あ、ミクちゃんお腹空いてない? 寒くないかしら。ちょっとおっきいかもしれないけどあたしの服あるよ?」
「えっと、じゃあ申し訳無いですけど服をお借りしても」
「いいよ。じゃあどんなのがいいかしら。ちょっと待っててね」
そう言ってまた部屋に入っていく。そして数着服を持ってきてわたしの目の前に並べた。
「好きなの選んで。たぶんちょっとぶかっとしてるけど」
目の前に、グレーのスウェットと、薄ピンクのパジャマ、ブルーのジャージが並んでいる。今日は寒くなりそうだから、スウェットにした。
ルカはじゃあ着替えておいでとわたしを引っ張って部屋へと背中を押した。
「脱いだ服は、そこのカラーボックスの上に針金ハンガーがあるからそれに掛けておいて。あとで洗濯するから。あたしいまからおじや作るね」
そして足跡はキッチンに向かい、料理をはじめる音が聞こえはじめた。
私は着ていたワンピースを脱いで、赤い針金ハンガーにかけた。
スウェットは毛玉がいくつも着いていて、ルカのにおいとタンスの臭いが混じったにおいがした。
「あ、着替え終わった? おじや出来たよ。食べよ」
「ありがとう、ございます」
ミクちゃんかわいー。そう言ってルカはポップなオレンジの水玉模様のクッションに座った。わたしは水色のクッションに座った。
「はい小皿とレンゲ。できたてで熱いからフーフーして食べてね。じゃ、いただきまーす」
「いただきます」
ルカは普段はナベから直接食べちゃうんだけどね。そう言ってお玉でおじやをすくって小皿に乗せた。
ルカさんのおじやはほんのり甘くて美味しかった。
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欠陥品
ご意見・ご感想
読ませて頂きました、続きを楽しみにしています♪
まあ、需要は一番低いでしょうね…(-∀-;)
2010/07/05 08:17:26