【がくルカ】memory【24】

投稿日:2022/01/10 02:36:42 | 文字数:2,696文字 | 閲覧数:924 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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2013/04/06 投稿
「命令」


夢の中のがっくんのセリフ、今でもお気に入りです。
改稿しましたが内容はほぼ変えてません。

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TEXT
 

 曖昧な記憶の中で

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「巡音さん……?」
 今、目の前の彼は何を言っているのだろう。だって、確かにあの時まで…彼は、私を「ルカ」と呼んでいたのに。「巡音さん」なんて、一度だって呼んだことはなかった。
「何故……君が、ここに」
「あなたの看病ですよ。先程も言いましたけど、あなたは事故に遭ったんです。……私の、せいで」
「……嘘、じゃないのか」
 いや、頭を打っていたと聞いていたから、少し記憶が混乱してるだけかもしれないし。呼び名や一人称なんて、きっとあと少しで戻るはず。
「どうして、君が……。それに、僕は、死ねなかったのか?」
 ――ああ、少しなんてものじゃなかった。
「え……死ねなかった? 何を言っているんですか? あなたは私を庇った、だからここにいるんですよ」
「……それ、本当? もし君が真実を言っているのなら、おかしいのは僕のほう、か」
 記憶喪失ではない気がする。明らかにそんな気はしない。喪失というより、まるで、認識がすり替わっているような。
 彼は私の苗字を解っていた。じゃあ、名前のほうは?
「あなたに聞きますけど、私の下の名前、わかりますか?」
「君の、名前。……香(かおる)」
 彼はもう、私の知っている彼ではなかった。
「自分のことはわかりますか?」
「僕は、神威……学(がく)」
 今起こっていることの理解ができない。ただ確かなのは、彼の記憶は、“神威先生”ではない、ということ――



 後日、いろんな人が神威先生の元を訪れた。だけど、かろうじて名前(というか苗字)がわかる人は、『Singer』のメンバーだけ。他の人……例えば学園長のゆかりさんは解らなかった。
「皆、苗字だけは合ってたのよ。だけど私、心当たりがあったからそれをぶつけてみたのよね」
 神威先生の病室の外で、初音先生が私達に語る。
「『私は初音未来(みらい)です』って言ったの」
 未来? 確か初音先生の名前は「ミク」だった気がするけど。
「彼は『初音未来』という人物について知っていた。それは彼の反応の仕方で解るわ」
「ちょっと待って、どうして違う名前で? というか………どうして、彼の記憶は少し変なんでしょう?」
 私がそう言うと、皆考え込む表情をした。しばらくの沈黙の後、リンさんが口を開いた。
「あのね、この件について考えてたら、思い出したことがあるの……」
「それ、まさか、合宿のときの」
「そう。私が皆に話したよね? うちの学校の七不思議について」
 確かあれ、七個あったかなかったか。なんか、曖昧だった気がするけど。だけど、私もその中の一つ『彷徨う影』については結構思い当たることもあるんだよね。
「あのね、これは『Singer』の称号を持つ人に関する話。確か皆にはまだ話してないんだけど」
 一呼吸置いて、リンさんは続ける。
「『Singer』を持ってる人は幼い頃から、自分ではない記憶がある。誰に話しても通じない、もしかしてただの夢かもしれない……ってやつなんだけど」
 それ、凄く心当たりがある。
「だけど、その記憶の夢をずっと見続ける。もしかして、それは本当に自分が体験したものなのかもしれない。まあ要するに、変な記憶が残ってる、みたいな……皆はわからない?」
 皆、一斉に黙り込む。全員当てはまるようだ。それは私もだ。あの音のない、空っぽのセカイの夢。
「でね、私、考えてみたんだけど。それは『前世の記憶』じゃないかって、思ってるんだ」
「前世?」
「うん。ありえない話かもしれないけど、その可能性もなくはないでしょ?」
「確かに。さっき神威先生に『鏡音零(れい)』って言われたんだけど、零って名前はずっと、その夢の中に出続けてるんだよな……」
 レン君も別の名前を言われたらしい。
 ……というか、結局どうなんだろう? もしそれが本当に前世の記憶だったとしても、それと今の神威先生に何の関係があるのだろうか。



 暖かい日の昼休み、私は学校内を必死にさがす。何を探しているのか、誰を捜しているのかはわからない。ただ誰もいない校舎を必死に駆け回っている。そして、ある教室の扉を開ける。
 そこには、白衣を風になびかせた“神威先生”がいた。
「ルカ、もう、捜さないで。俺のことを、もう忘れてくれ」
「嫌だ……嫌です。なんで、そんなこと……!」
 彼は、決して私が望まないことを言う。
「つらいんだ。悲しそうな、苦しそうな君を見ているのが。それが俺のせいだってことは解っている」
「……」
「君が笑ってくれることを、俺は願っている。だけど今の俺は、俺じゃないから……」
 ――“俺は、怖いんだ。俺が、俺じゃなくなるのが”――
 あの事故の日、彼は確かにそう言った。それは、今のこの現状を指しているのかもしれない。だけど。
「だから、俺を忘れて……笑って、くれるか?」 どうして、そんな悲しそうな笑顔で言うの。どうして、その声で『命令』するの。私がそういうのに弱いの、知っているくせに。そんな表情をされたら。
「……はい」
 おとなしく従うことしか、できないじゃない。

「そう。良かった」
 彼は私の頭を少しだけ撫でた後、私から目を逸らして歩き出す。気づけば、そこは学校の屋上。
「待って……待ってよ。なら、どうして……私を選んだの……!」
 涙が頬を伝う。
 彼は古くなった柵の前で立ち止まり、振り返る。そしてポケットから、カッターナイフを取り出した。
「……助けたかったんだよ。だけど俺は無力だ。守ることなんて、できなかった」
 そして右手首にカッターの刃を当て…強く、切った。痛がる様子もなく、カッターを放り投げる。彼の右手首からは、赤い雫が溢れていく。それは止まることはなく、白衣にも少し滲んでいる。赤に塗れたその手で、彼は柵に触れる。
「『音のある世界で、もう一度』。……俺は君の幸せを願うよ。だって俺は、君のことが」
 ――好きだったから。

 彼はそのまま、屋上から飛び降りた。私が伸ばしたこの手は、いつまでも彼に届かないままで……。




 そこで、目が覚めた。今のは、夢? どうやら、病室の前の椅子でうとうとしていたらしい。
 あの事故から、二週間が経つ。もう、あの状態の彼を見るのはつらい。違う記憶も、発作に苦しむ姿も、怪我の痛みに耐える姿も。

 そうか、最初からこれを選んでおけばよかったんだ。だって、彼をあんな状態にしたのは、私。全ての原因は――私にあるんだから。
 気づけば、私の足はある所へ向かっていた。

のほほんと生きる物書きです。
ギャグから真面目なものまでいろんなジャンルの小説を書いています。
…のはずが、最近はがくルカを書くことが多いです。


IN率低いです。
マイページ以外では「かなりあ荘」というコラボに出現します。

全体的にgdgdなものが多いです。
小説は、自己解釈もオリジナルもやってます。
だいたいはその場のノリで書いてます。

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作品へのコメント2

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    ご意見・感想

    目が、目がああああああ!(だいぶ古い
    泣けてきますね。まさかここまで哀しく綺麗につながるとは・・・。

    ほんとにゆるりーさん、文才を売ってください!
    人を感動させれるほどの文才を!!

    お騒がせしました☆w

    2013/04/06 19:22:51 From  すぅ

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    メッセージのお返し

    バ○ス!!((
    綺麗につながったかは解りませんが、結構哀しく(?)つながったんじゃないかなと思ってます。

    というか、それ以前に、そんなに凄い文才は持ち合わせていません!
    文才どこかに落ちてませんかね!?(((

    いえいえw
    さて次回(ry

    2013/04/06 23:31:32 ゆるりー

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    ご意見・感想

    (T-T)

    そっか、あの“夢”はこう繋がるんだー…

    リンちゃん先に言っとけよ!←八つ当たり
    いーなーこんな文章書きたいなーぁ…

    ケータイで投稿しようと思ったら題名の【】が使えなかったwww
    でも今見つけた(泣)www

    2013/04/06 08:11:29 From  和壬

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    メッセージのお返し

    こう繋がりますよ。

    リン「え、ちょ…私に八つ当たりされても…いえ、なんでもないです」
    今回はいつもよりうまく書けませんでした。

    私は全部パソコンから投稿してますw

    2013/04/06 17:57:31 ゆるりー

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