忘れてたかのようにランプを点けて
街は気忙しく冬支度
まだ煤けた匂いのする外套を身に巻きつけて
暮れが早くなった、などと 呟いてみたんだ

乾いた葉の上に霜が溜まって
今夜も雪になるでしょう
ふと途切れたビルの隙間 かかる銀色の満月に
窓辺に置いた望遠鏡と、優しい笑顔を思う

夜空を往く月には忘れられた海がある
追憶を象るマキアート
空想と今が交錯する街で
僕は一人こうして星を眺めている

雪の華が極夜を埋めていく
声も無くただ深く
ラピスの色した銀河と 渡ってゆく舟と
他愛もない夢を見ていた

今夜月と空が出逢う丘で
そのままで見つめて
星降る夜 側にあなたがいてくれたなら
こんなにも寒くないのに


ショーウィンドウがさりげなく告げる
気の早い祝祭の準備
厳しい地の人々が生んだ、煌びやかな一夜の夢と
儚んでみたって、何も 変わるはずもないのに

蒼く冷たい夜空に輝く
金星(ヴィーナス)は上質のダイヤモンド
もしも手が届くなら今すぐ 掴み取って君に贈ると
そんな愚かな冗談を 吐いたのも遠い昔

約束だけが置き去りの色のない大地
物憂げに映える地球照
月の裏側に沈める思い出
水のない海をこの涙で満たそう

流星が夜を駆けていく
鈴の音は軽く淡く
街角に舞う幻を 雪のせいにしても
溢れる涙は隠せない

砂漠を歩む旅人のように
一人彷徨うだけ
胸に残る優しい夜ごと忘れてしまえば
こんなにも辛くないのに


夜空を往く月にはモスクワの海がある
祝福の虹の入り江も
「そこで見る星はきっと綺麗だろう」
言った無邪気な笑顔が離れない

奇跡の贈り物(ギフト)を待ちわびるような
幼かりし二人の日々
空想の銀河を渡る 空っぽの舟
ああもう君はいないんだ

今夜月と空が出逢う丘で
もう一度だけ見つめて
素顔のままであの微笑みを確かめたら
この海に眠るよ


思い出にさようなら・・・

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

モスクワの海で星を見て

――――とりあえず何かにつけて思い出すのは、君はもうここにいないのだということです。

なんという気の早いクリスマス詩。
しかも彼の地のクリスマスは1月7日だっちゅうねん。

宇宙番組見ててタイトルから思いつき、かような内容になりました。どうして恋愛物になったんだろう。
ちなみに作中に出てくる「モスクワの海」は本当にあります。月の裏側にあるため地球からは見えませんが。

閲覧数:176

投稿日:2013/11/08 16:11:25

文字数:795文字

カテゴリ:歌詞

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