『グミナ=グラスレッドの独白』
アスモディン地方、故郷を離れてからそれなりの時間が経っていた。ヴェノマニア事件の被害者かつその加害者サテリアジス=ヴェノマニア公の幼馴染みである彼女、グミナ=グラスレッドはエルフェゴートへと亡命すべく馬車の中で一人揺られていた。しかし彼女はいたって平静だった。他の被害者らがショックやヒステリー状態になっている時でさえ、彼女は何か一つの概念に取り憑かれたように熟考し続けていた。そして今、彼女は重々しくもどこかすっきりしたような気持ちであるようだった。彼女は自分の足下をぼうっと見ながら、考えていた。
―――――どうして私はこんなに落ち着いているのだろう。恥じる思いも鬱蒼な気持ちも全て、今の私には持ち合わせていない。そしてこの妙に納得出来てしまったような感覚は一体何なんだろう。サテリアジスに対しての同情?私自身の悲しみ?いや、どちらでもないわ。こういった感情を"責任感"と呼ぶのかな。
今回、彼がこのような狂行に走ってしまったのには私の責任もあるのかもしれない。もしあの時、私が彼を馬鹿にしたりしなかったらこの事件は起こらなかったかもしれない。もしそうだったとしたら私は被害者の皆様に顔向け出来ないことをしたというわけでもあるわね。
ただ、彼の自分の容姿に関するコンプレックスは私一人が植え付けたものではないから、やっぱりいつか事件は起こったかもしれない。もっとも、彼が私をどう思っていたかにもよるけれど。彼が私に少なからず好意を抱いてたのならば、やはりこれは人災と呼ぶべきものなのかもしれない…。私は放置するのを通り越して一緒になって彼を虐めたのだ、それは変わらない。加害者の作製者だ。
でも既に事件は起こってしまった。だから私はこれから自分に出来ることをしようと思う。
私を含めた被害者の女性は、被害者だと言うのにも関わらず責められたのだ。今回の件だけにかかわらずいつもそうだ。誘惑するお前らが悪い、この子はませてるから変な輩にちょっかい出されるのよ、大人の女までがこう言うのだ。この常識を覆さない限り、彼女たちは救われない。女性がいつも男の犠牲になっていいはずがない、食い物にされる存在だなんて。
だから私は正直言うとサテリアジスにではなくて、事件に直接巻き込まれなかった方の連中に腹を立てている。彼らに何が判ると言うの。被害者と加害者のそれぞれに対して何を考え見出したと言うの。そんな常識が大手を降って浸透しているなんて…。
だからこそ私はエルフェゴートに行くのだ。向こうもそういったことに対して厳しい。女性の地位も同様に低いと聞いた。もし向こうでこのような女性問題で成功することが出来たらそれは強いインパクトとなる。それが何らかの形でアスモディン地方にももたらされることを私は願っている。
でも今思えば、私と彼の間に差はなかった。容姿を馬鹿にした私と、魔力で私を服従させた彼。結局のところ私たちは同じ目の高さの人間だった。お互いを、それぞれの弱みとする部分において虐げた。やり方は違えど同じレベルだった。
同じ目の高さの社会の中で、私たちは生きていた。彼がいなくなった今、私は今まで見えなかったものが見えるようになった気がする。それが良い方面に働くよう私は努力しよう。
エルフェゴートに到着した彼女は馬車を降りて歩いてみると冷たい空気を感じた。エルフェゴートの土を踏むと、故郷の土よりもやや固かった。でも彼女が踏みしだいていくその道から、少しずつ土は柔らかくなっていくようだった。
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ご意見・ご感想
目白皐月
ご意見・ご感想
こんにちは、目白皐月です。
お話、読ませていただきました。
で……うーん、あのですね、いきなり苦言から入るのもなんですけど、「一体何を言いたいのか、わたしにもわかりません」と書かれていますけど、これ、読む側からすると結構見ていて困る文章なんですよ。だって、書き手がわからないものを読み手にわかれって言ってるわけですからね。なのでどう答えたらいいのかわからないというか……。
まあなんとなく、栖夏さんの言いたいことは想像がつきますが、それでエルフェゴートに行く、というのが、正直私にはピンと来ません。だって「日本の現状をどうにかしたいから、北朝鮮に行きます」なんて言われても「止めておけ」としか言えない気がするんですよね。ただ私は、曲は聞いていても関連書籍の類は読んでないので、これが原作者の設定だというのでしたら申し訳ないのですが。
なんだか微妙な感想になってしまって申し訳ありません。
2011/11/17 23:51:36