[第13話]~手掛かり
こんなことがあるのだろうか。
私と霧岐屋さんの簪の全く同じところが欠けているなど。
私は顔をしかめた。
霧岐屋さんとめい子さんは、唖然と簪を見つめている。
「す、少し、事を整理しましょうか。」
あせり口調で連が言う。
「そうですね」とめい子さんが、言って、霧岐屋さんに書くものを貸してもらった。
さらさらと綺麗な文字で綴られていく、現時点までの状況。
みくさんが殺された。
殺されたみくさんの部屋には、緋色の簪の破片が落ちていた。
巡屋さんにしかない、上方から入ってきた品で、三つしかない。
持っているのはりんさんと霧岐屋さんの二人だけ。
「少ないですね。」
私は、そう言いながら溜息をついた。
これだけの手掛かりで下手人を捕らえるなど、出来るわけがない。
「あたし、もうっ少し知ってますよ。」
そう口にしたのは、さっきからずっと黙っていた霧岐屋さんだ。
「昨日、みくさんが殺されているのが見つかったのが、夕方。そしてそれまでに、初音家に行ったのが、あたしと、鏡屋さんと、巡屋さんです。」
私たちは大きく目を見開いた。
「みくさんの首には、深い刺し傷があって、おそらく簪で殺されたんだろうって。」
偶然に偶然が重なりに重なり、訳がわからない。
「そして、あたしとりんさんの同じところは、みくさんに何かしらの恨みがある事。」
ずいと、顔をこちらに寄せて言う。
「そういえば、霧岐屋さんの縁談がみくさんのせいで破談されたとか…。」
連が思い出したように言うと、こくりと霧岐屋さんは頷く。
「りんさんはお凛さんの話をされたせいで、連さんと話せませんでしたよね。」
つまり、どちらにでも殺せた、ということを言いたいのだろう。
私はそこで、思わぬ盲点を見つけた。
”巡屋さんにだって殺せたはずだ…。”
しかしその考えを言葉にはできなかった。
あんなに優しい巡屋さんを、疑いたくなかった。
なにしろ、巡屋さんには動機が無い。
日はすっかり沈んで、辺りは暗くなっている。
少しの手掛かりと、心に引っかかる何かを持って、私たちは霧岐屋を後にした。
* * * * * * * *
たくさんの人が集まるここで、みくさんの通夜が行われている。
布団に寝かされた、昨日まで可愛らしい笑顔を振りまいて居た筈の、みくさん。
とても綺麗で、死んでいるようには見えない。
どこからか、小さな嗚咽が聞こえる。
その声の方を見ると、見たことのある男の人が顔に似合わず、静かに泣いていた。
かいとさんだ。
その隣では、目を閉じて祈る、巡屋さんの姿。
私は、またみくさんに視線を戻してから、次は隣の連に目をやった。
とても悲しそうな顔。
その拳は、とても強く握りしめられている。
私は、みくさんを殺めてなどいない。
では誰が?
誰がみくさんを、殺したのですか?
ただ、たまたま簪の破片がそこに落ちただけかもしれないというのに。
いったい誰が、みくさんを殺したというの…?
コメント1
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
巡り屋の簪は…欠けてないのかな?
容疑者は三名…
眠りのおっちゃんに頼むか!!w
2012/04/05 19:02:22
イズミ草
巡屋さんの簪が欠けてるかどうかは、小説の中で
書こうと思っているので
ここでいうのは控えますねww
眠りのおっちゃんだけじゃだめですよww
ちっちゃいメガネ小僧がいないと!!
2012/04/06 12:38:01