ようやく帰ってきた少年を姉は叱り、そして抱きしめました。
しかし、どこか呆然としている弟に気づいた姉は理由を尋ねました。
ぽつりぽつりと経緯を説明する弟の話を聞いて、姉は確信しました。
「あなたはその子に恋をしたのよ」
そう諭された少年はびっくりすると同時に納得もしました。そしてますます、少女のことが気になり、どうしても会いたいけどどうすればいいのか、と姉に相談しました。
姉はとても迷いました。方法はあったのですが、それが弟にとっていいことなのかが分からなかったのです。しかし、ずっとこのままでもよくないと思いました。なので、姉は唯一の方法を教えてあげました。
それはあの歌にもあるように、魔女に人間になるよう頼みに行くことでした。

少年は姉に教えられた道をたどり、魔女の元に向かいました。
魔女の住みかは日の光が届かないほど深く、また誰も寄ってこないような場所にあったので、水はとても冷たく物音一つしませんでした。
少年が奥に入っていくと、大きな岩の上に巨大な影を見つけました。
その巨大な影こそ魔女でした。魔女は全体的にピンク色で、八本の足があり、それぞれの足には吸盤……つまり巨大タコでした。
少年は一瞬呆気にとられましたが、気を取り直して巨大タコにお願いしてみました。
すると、そのタコは快く承諾してくれましたがそれには条件が付いていました。
「あなたを人間にする代わりに、マグロ……いえ、あなたのその美しい声をもらいますよー。それから海には入らないようにー。元に戻っちゃいますからねー」
少年は迷うことなく人間になることを選びました。

先日、謎の歌声が響いた浜辺に少女はいました。頭にリボンを着けた、少年が思いを募らせている少女でした。
少女は紫の髪の青年に助けられ、目を覚ました次の日から毎日この浜辺に来ていました。
謎の歌声の持ち主を捜していたのです。
少女は浜辺に打ち上げられた後、その歌声で気がつきました。そして顔こそ見れなかったものの、手を強く握りしめられたことは覚えていました。
さらに、少女を救った青年もまたその歌声に惹かれ、浜辺に向かったといいました。つまり、その歌声の持ち主が自分を救ってくれたと少女は思っていたのです。
いつものように浜辺を歩いていると、岩影から人の足のようなものが見えました。
岩の後ろを見るとそこに人間になった少年が倒れていました。

少年が目を覚ましたのはその日の夜でした。
少女が少年を背負って帰った先はなんと王宮の一室でした。少女を拾った紫の髪の青年はこの国の若き王だったのです。
目を覚ました少年に少女はいくつか質問をしました。しかし少年が話すことができないと知ると、少女はいいました。
「じゃあ、困ることがないように、ずっと一緒にいてあげるね」

それから二人はずっと一緒でした。
なので、少年は少女が自分を捜していることも知りました。しかし、声が出せない少年はそれは自分のことだと伝えることはできませんでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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人魚レン3

閲覧数:269

投稿日:2009/05/08 21:08:47

文字数:1,240文字

カテゴリ:小説

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