「ふぅん。僕も見てみたいなあ。その、“しゃべる看板”」
「びっくりするわよ」
興味シンシンの顔で言う、カイくんに、アン店長が説明した。

「アタシも最初に見たときは、じっと見入っちゃったもの。発明するの、大変だったでしょ?」
「んー、そうですね」
アンさんに聞かれて、デフォ子さんはのんびりと答えた。

「大変でもないけど、時間はかかったですね。爆発とかもしたし...」
「爆発ー?」
聞いていたカイくんは、目を見張って、身を乗り出した。

東京・青山にある輸入商社「ハミングス」の会議室。
お昼前の日の光がさす、おだやかな部屋で、
デフォ子さんはのんびりと、物騒なことを言う。


●「すてきな発明ね!」

ちょうどそこへ、美里課長が入ってきた。

「課長、こちら、デザイナーで発明家の唄音ウタさん。通称“デフォ子”さんですよ」
カイくんが、紹介する。
「はじめまして。きょうはご来社ありがとうございます」
「はじめまして」

4人は、テーブルに置いてある、商品パンフレットに目をやった。
「これが“しゃべる看板”ね。すてきな発明ね」
美里課長は言った。
「御茶ノ水の“らら”の店先で、この看板を見つけて、ぜひ、私の店でも使ってみたいと思ったんですよ」
アンさんが、説明する。

「ぜひ、よろしくお願いします」
ベレー帽を手に持ったデフォ子さんは、ぺこりと頭を下げた。


●おしゃれなしゃべる看板

とりあえず、アン店長の店「ナチュラル・ハウス」で、その“しゃべる看板”を、近いうちに採用することが決まった。

商談が終わって、カイくんはデフォ子さんに誘った。
「キディディ・ランドに寄って行きましょう」

青山から、原宿までは歩いて30分くらい。2人はとりとめのないことを話しながら、歩いていった。

「あれ、アニキ!あ、デフォ子さんも」
店に着くと、ちょうど商品の打ち合わせに来ていたミクちゃんが、2人を出迎えた。
ミクちゃんは、自分の商品を、キディディ・ランドで販売しているのだ。
「お久しぶりです」
デフォ子さんは、にこにこと挨拶する。

カイくんとデフォ子さんの説明を聞いて、ミクちゃんはうなずいた。
「そう。“しゃべる看板”をアンさんの店に入れるの?」
「そうなんだ。楽しみだよ」
カイくんは答える。

「アンさんの店は、化粧雑貨がメインの品物だから。おしゃれな看板にしたいよ」
「それじゃ、かっこいい男の人の看板が、しゃべるようにしましょうか?」
デフォ子さんが聞いた。
「うん、いろいろ考えてみますよ」
カイくんは言った。

ミクちゃんは言った。
「とにかくやってみて、お客さんの反応を見てみたいな。またアニキに働いてもらってもいいし」
「おい、また女装するのかよ!」
カイくんは情けなさそうに叫んだ。

その時はまだ、別の目的で、やっぱり女装させられる羽目になるとは、知らなかったカイくんだった。人( ̄ω ̄;)


(part2に続く)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌 (109) デフォ子さんの、しゃべる看板 (part1)

次回、名探偵ミクさんと相棒カイくんの活躍にご期待を!

閲覧数:136

投稿日:2011/06/26 17:47:49

文字数:1,230文字

カテゴリ:小説

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  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    おお、発想が面白い 続き期待しています! GJです!

    2011/06/26 23:21:28

    • tamaonion

      tamaonion

      ありがとうございます。お暇な時また読んでくださいね!

      2011/06/26 23:35:13

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