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静脈を泳ぐ蝶がいる
名前のない翅音が、夢の輪郭を破る夜
「わたしを、ほどいて」
骨の軋む音で朝が鳴る
嘘のように繊細な、君の欠片
硝子の指が わたしの頬をなぞるたび
“これは愛?それとも慈悲の模倣?”
息をひとつ 落としただけで
世界が軋む
ねえ 誰がこんなにも
わたしたちを脆くした?
あなたのこころを手にしたとき
それは宝石ではなかった
むしろ——幼い死体に似ていた
優しさという名の棘が
指の腹に刺さるたびに
わたしは考える
「これは愛か?それとも、…わたし自身への復讐か?」
(囁くように、あるいは咆哮の前の静けさ)
感情という液体を
すこしだけ零すと
世界は美しく壊れた
……そう思っていたのに
心拍が遅れて響く夜は
誰かの悲鳴と酷似している
ふたりは似ていた、血の色が
でも、哀しみの食べ方が違った
ねえ、「愛してる」の定義を教えて
できれば詩的じゃないほうで
崩れかけたこの関係を
どの言葉で”保存”すればいい?
あなたのこころを手にしたとき
この手の温度を失った
白くなっていく指先で
ただ “綺麗だね”と笑えた
それを優しさと呼ぶなら
わたしは 優しさを否定する
君を壊すという行為の中に
愛を——刻みたい
蝶の亡骸を、手のひらに乗せて
「きれいだね」って言った
その瞬間、
たぶん わたしの魂は——消えた
あなたのこころを手にしたとき
わたしはもう人ではなかった
美しいという呪いを纏い
君の呼吸を封じた
最後に選んだこの手のひらが
まだ君の鼓動を映すなら
壊したのは——君ではなく
わたしの「人間(ひと)」だったのかも
ひらひらと 宙に溶ける
蝶の輪郭(きおく)に手を伸ばしながら
ただ、こう呟いた
「愛している」は、なぜ痛い?
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the English version of the lyrics for ‘Lepidoptera’
『Lepidoptera』
― When I hold your heart in my hands, will I crush it? Or love it? ―
A butterfly swims in my veins
Nameless flutter breaks the dream’s edge
“Unravel me,” you whispered
Morning creaks with bone and regret
Delicate lies scattered—your fragile fragments
Glass fingers trace my cheek
“Is this love, or mercy’s hollow mimicry?”
Just one breath misplaced
and the world trembles
Tell me—who made us
this unbearably fragile?
When I held your heart in my hands
It wasn’t a jewel,
More like a small and silent corpse
With thorns named kindness
Piercing the pads of my fingers
I wondered—
Is this love?
Or a vengeance against myself?
Spill a little emotion—
and the world shatters beautifully
…or so I believed
Heartbeat echoes like someone screaming
We were alike in blood,
but we devoured sorrow differently
Tell me the definition of “I love you”
But not the poetic kind
Which words can preserve
This collapsing connection?
When I held your heart in my hands
My warmth vanished
With pale fingertips, I could still smile
“If that’s kindness,” I said,
“Then I renounce it.”
I want to carve love
Into the act of your destruction
I held a butterfly’s corpse in my palm
“Beautiful,” I whispered
In that moment,
perhaps my soul vanished
When I held your heart in my hands
I was no longer human
Wrapped in a curse called beauty
I silenced your breath
If my palm still reflects your pulse,
Then maybe—
It wasn’t you I broke,
but the part of me that was human
Fluttering away into silence
I reached for your fading outline
and whispered:
“Why does ‘I love you’ hurt so much?”
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lepidoptera
(レピドプテラ:鱗翅類=蝶や蛾の総称)
『Lepidoptera』という名の羽の下で
―― それは「蝶の属名」にして、「魂のかたち」の隠喩。
この詩は、ひとつの**心の破片(かけら)**が、他者の魂に触れ、
やがてその羽根を震わせるまでの、繊細で痛ましく、そして美しい変容の記録です。
「あなたの心を手にした時、私はそれを握り潰すだろうか? 愛するだろうか?」
――という根源的な問いを胸に、
この詞は始まりから終わりまで、愛と破壊、支配と献身、光と影を両手に抱いたまま、
いっそ罪深い美しさで舞い続けます。
⸻
蝶とは何か。
それは、儚く、軽やかで、美しく、そして何よりも脆い存在です。
この歌に登場する「蝶(レピドプテラ)」は、他者の心象を宿した象徴であり、
同時に語り手自身の精神の比喩でもあります。
「愛する」とは、時に、その柔らかく繊細な羽を撫でることと同義であり、
「潰す」とは、意図せずにすらも、それを傷つけてしまうこと。
このふたつの行為は、ほんの紙一重の狂気と激情のあわいに並んで立っている。
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詞に込めた美学と構造
『レピドプテラ』の詞は、意図的に退廃と耽美の美学を織り交ぜ、
• 英語と日本語を混在させることで「異世界的な音の漂流感」を演出し、
• シンボルと比喩を濃密に散りばめて、「誰かの心にしか棲めない物語性」を孕ませました。
「罪」と「祈り」、「咎」と「献身」――
そのいずれもが、純粋な愛の別名であり、
また、誰しもの心の奥底で蠢く、**“触れてはいけない場所”**のかたちなのです。
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最も美しい蝶は、最も壊れやすい。
それを知った上で、手を伸ばすか。
その羽音に涙するか。
『Lepidoptera』は、愛という名の精神の蝶標本。
この歌詞を読む者一人ひとりが、そこに**自らの「壊れそうな羽音」**を見出してくれることを、私は願っています。
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