*PM 11:00
特殊警察の三本柱を失った。
統括は、カイト先輩に代わって俺がする。
カイト先輩は、近いうちに辞表を出すそうだ。
そしてオレは、カイト先輩から組織の狙いを聞いた。
組織の狙いは、「研究結果の奪還」。
研究結果というのは、「人間兵器」の育成方法など、決してこの世にあってはならない物ばかりだ。
殺戮人形は、この研究結果の賜物。
こんな恐ろしいものを、政府は使おうとしている。
組織は、守っているのかもしれない。
あるいは、研究結果を知ってしまった政府を潰し、革命を起こす気なのかも知れない。
オレがしていることは、「善」ではなかったのではないか。
組織こそが「善」で、特殊警察こそ「悪」ではなかったのだろうか。
分からない――分からない――
*
「さぁ…始めましょう。最後の戦いを」
最後の戦い。
私も、この戦いで散るのだろうか。
「ミク様。最後になるかもしれませんので、一つ聞いてもよろしいでしょうか」
「なぁに?」
「何故、特殊警察を潰そうとなさるのですか」
「特殊警察は通過点に過ぎないわ。私が潰したいのは、政府。人間が見つけてはいけないものを悪用しようとする、政府よ」
「ニンゲンが、見つけてはならないもの…?」
ピンと来なくて聞いてみたものの、もし聞いても分からない気がした。
「…あなたは、知らなくていいわ。頑張って」
「全ては、ミク様の為に」
*AM 2:00
オレが統括する特殊警察は位置についた。
あれから、答えは出せていないままだ。
三本柱を失った特殊警察。
それは筋道の立っていない説明のように、どこか破綻していて成功することはない。
ましてや、組織を「悪」と認めないオレが統括する部隊なんて。
そんな話なら聞きたくは無かったのに。
聞かないでおけばよかった。
このまま組織は悪役であればよかったのに。
もう、何でもいい。
「殺戮人形が…来たぞ!」
態度には出さなくとも、彼らの顔には恐怖の色が現れる。
カイト先輩やルカ先輩、メイコ先輩が居たときにはこんなことは無かったのに。
オレは倒さなければならない。「政府にとっての悪」である組織を。
そうだ、組織はたくさんの人を殺したじゃないか。
それで、十分に悪じゃないか。
奴らは、狩り取られる定めなんだ…!
「悪を…潰せ!!!」
ようやく出された統括者の指令に、特殊警察たちは奮い立つ。
*
三本柱を失った特殊警察なんて、すぐに堕ちてしまう…
ミク様の言葉を思い出す。
でも、まだよ。
強いのが一人だけ、脚光を浴びぬままに残っているわ。
私に傷を負わせた、金髪の特殊警察。
他の奴らが邪魔ね。
弾丸を四方八方に飛ばした。
一気に頭数が減り、残った特殊警察の士気も完全に低迷してる。
血はあたり一面にばら撒かれていたけれど、私はもう、美しいなんて思いはしなかった。
「殺戮人形…!」
金髪の特殊警察が、怒りをあらわにする。
そういえば、接触するのは初めてだったわよね。
彼の剣と、私の銃が交差する。
途端、激しい頭痛に視界が眩んだ。
*
『レン、ずっと一緒だよね?』
『当たり前だろ、姉弟なんだから』
仲良さげに手を繋ぎあう二人。
そのうち一方は、私…?
そしてもう一方は…?
場面が変わった。
『この娘が適任でしょう』
『連れて行け』
そう言ってるのは、ミク様?
『いやっいやぁぁぁ!助けて、レン…っ』
肩に担がれて連れられているのは、私?
取り押さえられながら必死に手を伸ばしているのは、金髪の特殊警察?
『リン!リン…!』
「レン」?
「姉弟」?
心の穴に、欠けていたピースがはめ込まれる。
そうか、私は…
*
突然、走馬灯のように流れ出した映像は、向かい合って立っている金髪の特殊警察、レンにも見えていたようだった。
交差する剣と銃が揺らぐ。
「もしかして…あなたは…」
「レン?」
答えを聞く前に、私は後ろから打ち抜かれた。
胸を貫通した弾丸が、目の前に飛び出す。
自分の血は何故こんなにも汚いんだろう。
仰向けに倒れるとき見えたのは、銃を構えたミク様。
「やはり洗脳が効いていなかったようね」
これが、私の生涯で最後に聞く言葉となった。
*
走馬灯のように流れ出した映像。
衝撃を受けなかったといえば嘘になる。
無くしたパズルのピースが、ゆっくりと戻っていく感触。
そうか、オレは。
「もしかして…お前は…」
「リン?」
答えを聞かないうちに、打ち抜かれた。
胸を貫通した弾丸が、コツンと奇妙な音を立てる。
そういえば、銃声はやけに大きかった。
リンも打たれたんだろうか。
すると今のは、弾丸同士がぶつかりあった音か。
仰向けに倒れるとき、視界に入ったのは銃を構えたカイト先輩。
「やはりお前は殺戮人形の身内か」
オレは悟った。
この世に「善」などはない。
蔓延っているのは、「悪」のみ。
*
戦場では、激しい銃声が響いている。
哀れな姉弟の死は、戦いの片鱗に過ぎなかったのだ。
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ご意見・ご感想
loveLisa
ご意見・ご感想
"からくり卍ばーすと"じたい、凄い好きなんですが…これすっごい良かったです!!!!!!感動しました!!!!!
2012/06/19 02:34:26
文月
ご意見・ご感想
からくり卍ばーすと大好きなので、
小説見つけて一気に読んでしまいました^^
PVのあの笑顔のリンレンを思い浮かべられる作風で、
結末はちょっと切なかったですが、
完結には納得でした!!!
勝手ですが、フォローさせていただきます^^
2011/12/14 09:59:48
紅華116@たまに活動。
ご意見・ご感想
ああああああああああああああああ←
リンもレンも死ぬなあああ!!
tk、ミクもカイトも最低だ!!リンとレンの仇をとりにいってくる←
…ごめん。思わず暴走してた←
何か悲しいね…
切なすぎるよ…うわああああん←
文化祭お疲れ!!
2011/11/03 16:46:21
楪 侑子@復活!
紅華ちゃん 結末は残酷すぎたかなーと思っちゃったり。
待って!あたしも一緒に行って仇とるぅぅぅ!
暴走するのも分かるぞ?
やっぱり結末残酷だ、どうなってんだよ作者ぁ!(←おまえだろ
ありがとう!つ、つかれたぁ…
シャインさん ありがとうございますっ!
いえいえどれも駄作で申し訳ない限りです。
ブクマありがとうございます!
2011/11/09 16:18:49