*PM 11:00



特殊警察の三本柱を失った。
統括は、カイト先輩に代わって俺がする。
カイト先輩は、近いうちに辞表を出すそうだ。

そしてオレは、カイト先輩から組織の狙いを聞いた。

組織の狙いは、「研究結果の奪還」。
研究結果というのは、「人間兵器」の育成方法など、決してこの世にあってはならない物ばかりだ。
殺戮人形は、この研究結果の賜物。

こんな恐ろしいものを、政府は使おうとしている。
組織は、守っているのかもしれない。
あるいは、研究結果を知ってしまった政府を潰し、革命を起こす気なのかも知れない。

オレがしていることは、「善」ではなかったのではないか。
組織こそが「善」で、特殊警察こそ「悪」ではなかったのだろうか。
分からない――分からない――







「さぁ…始めましょう。最後の戦いを」

最後の戦い。
私も、この戦いで散るのだろうか。

「ミク様。最後になるかもしれませんので、一つ聞いてもよろしいでしょうか」

「なぁに?」

「何故、特殊警察を潰そうとなさるのですか」

「特殊警察は通過点に過ぎないわ。私が潰したいのは、政府。人間が見つけてはいけないものを悪用しようとする、政府よ」

「ニンゲンが、見つけてはならないもの…?」

ピンと来なくて聞いてみたものの、もし聞いても分からない気がした。

「…あなたは、知らなくていいわ。頑張って」

「全ては、ミク様の為に」






*AM 2:00





オレが統括する特殊警察は位置についた。
あれから、答えは出せていないままだ。

三本柱を失った特殊警察。
それは筋道の立っていない説明のように、どこか破綻していて成功することはない。

ましてや、組織を「悪」と認めないオレが統括する部隊なんて。

そんな話なら聞きたくは無かったのに。
聞かないでおけばよかった。
このまま組織は悪役であればよかったのに。

もう、何でもいい。

「殺戮人形が…来たぞ!」

態度には出さなくとも、彼らの顔には恐怖の色が現れる。
カイト先輩やルカ先輩、メイコ先輩が居たときにはこんなことは無かったのに。

オレは倒さなければならない。「政府にとっての悪」である組織を。
そうだ、組織はたくさんの人を殺したじゃないか。
それで、十分に悪じゃないか。
奴らは、狩り取られる定めなんだ…!

「悪を…潰せ!!!」

ようやく出された統括者の指令に、特殊警察たちは奮い立つ。










三本柱を失った特殊警察なんて、すぐに堕ちてしまう…

ミク様の言葉を思い出す。

でも、まだよ。
強いのが一人だけ、脚光を浴びぬままに残っているわ。
私に傷を負わせた、金髪の特殊警察。

他の奴らが邪魔ね。

弾丸を四方八方に飛ばした。
一気に頭数が減り、残った特殊警察の士気も完全に低迷してる。
血はあたり一面にばら撒かれていたけれど、私はもう、美しいなんて思いはしなかった。

「殺戮人形…!」

金髪の特殊警察が、怒りをあらわにする。
そういえば、接触するのは初めてだったわよね。


彼の剣と、私の銃が交差する。


途端、激しい頭痛に視界が眩んだ。







『レン、ずっと一緒だよね?』
『当たり前だろ、姉弟なんだから』
仲良さげに手を繋ぎあう二人。
そのうち一方は、私…?
そしてもう一方は…?


場面が変わった。


『この娘が適任でしょう』
『連れて行け』
そう言ってるのは、ミク様?
『いやっいやぁぁぁ!助けて、レン…っ』
肩に担がれて連れられているのは、私?
取り押さえられながら必死に手を伸ばしているのは、金髪の特殊警察?
『リン!リン…!』


「レン」?
「姉弟」?

心の穴に、欠けていたピースがはめ込まれる。
そうか、私は…









突然、走馬灯のように流れ出した映像は、向かい合って立っている金髪の特殊警察、レンにも見えていたようだった。

交差する剣と銃が揺らぐ。




「もしかして…あなたは…」






「レン?」





答えを聞く前に、私は後ろから打ち抜かれた。


胸を貫通した弾丸が、目の前に飛び出す。
自分の血は何故こんなにも汚いんだろう。


仰向けに倒れるとき見えたのは、銃を構えたミク様。


「やはり洗脳が効いていなかったようね」


これが、私の生涯で最後に聞く言葉となった。









走馬灯のように流れ出した映像。
衝撃を受けなかったといえば嘘になる。

無くしたパズルのピースが、ゆっくりと戻っていく感触。

そうか、オレは。



「もしかして…お前は…」







「リン?」





答えを聞かないうちに、打ち抜かれた。


胸を貫通した弾丸が、コツンと奇妙な音を立てる。
そういえば、銃声はやけに大きかった。
リンも打たれたんだろうか。
すると今のは、弾丸同士がぶつかりあった音か。


仰向けに倒れるとき、視界に入ったのは銃を構えたカイト先輩。


「やはりお前は殺戮人形の身内か」


オレは悟った。
この世に「善」などはない。
蔓延っているのは、「悪」のみ。









戦場では、激しい銃声が響いている。

哀れな姉弟の死は、戦いの片鱗に過ぎなかったのだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【からくり卍ばーすと】善の剣と悪の銃は交差して 4

完結!
短かったけど楽しませていただきました!

無事、文化祭を終えました!
大成功でよかった!
小説ゆっくり書けてよかった!

あんまり盛り上がりの無いような小説で、本家様には申し訳ないばかりです。

ともあれ、最後まで付き合ってくれてありがとうございました!

閲覧数:2,643

投稿日:2011/11/03 10:38:36

文字数:2,333文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • loveLisa

    loveLisa

    ご意見・ご感想

    "からくり卍ばーすと"じたい、凄い好きなんですが…これすっごい良かったです!!!!!!感動しました!!!!!

    2012/06/19 02:34:26

  • 文月

    文月

    ご意見・ご感想

    からくり卍ばーすと大好きなので、
    小説見つけて一気に読んでしまいました^^

    PVのあの笑顔のリンレンを思い浮かべられる作風で、
    結末はちょっと切なかったですが、
    完結には納得でした!!!

    勝手ですが、フォローさせていただきます^^

    2011/12/14 09:59:48

  • 紅華116@たまに活動。

    ああああああああああああああああ←

    リンもレンも死ぬなあああ!!
    tk、ミクもカイトも最低だ!!リンとレンの仇をとりにいってくる←

    …ごめん。思わず暴走してた←
    何か悲しいね…
    切なすぎるよ…うわああああん←


    文化祭お疲れ!!

    2011/11/03 16:46:21

    • 楪 侑子@復活!

      楪 侑子@復活!

      紅華ちゃん  結末は残酷すぎたかなーと思っちゃったり。
             待って!あたしも一緒に行って仇とるぅぅぅ!
             暴走するのも分かるぞ?
             やっぱり結末残酷だ、どうなってんだよ作者ぁ!(←おまえだろ
             ありがとう!つ、つかれたぁ…



      シャインさん  ありがとうございますっ!
              いえいえどれも駄作で申し訳ない限りです。
              ブクマありがとうございます!

      2011/11/09 16:18:49

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