雲より高い所に、誰も知らない、誰も見たことのない世界がある。

そこは、地上の人間にはない、白い翼が背中から生えており、真っ白な服を身に纏う「天使」と呼ばれる種族が住む世界。
争いも憎み合いもない、とても平和な世界。

「また、下界を見てるの?リラ」

「あ、カイウ」

雲の上に寝そべり、下にある世界に目を輝かせ目つめていたリラにカイウは呆れながら声を掛ける。

「なんかね、楽しそうな事をしてるの。みんなが、笑ったり踊ったり」

その言葉にカイウも下界を見下ろす。

「あぁ…たぶん、祭りをやってるんだよ」

「祭り?」

「みんなで、お酒を飲んだり、踊ったり…祭りは楽しいよ」

少し哀しそうな声音で話すカイウを、リラは不思議そうに見て、下界をまた見下ろした。

「っしょっと」そう言いなが立ち上がり、服に付いた埃を掃い、カイウを見上げる。
カイウは、薄く笑みを浮かべリラを見ると、リラも同じく笑みを浮かべ口を開いた。

「カイウ…私、下界に行きたい」

強い眼差しを向け、そう告げるリラ。
カイウは言葉も出ないのか表情が固まる。
一陣の風が吹き、リラの金色の髪が揺れ、風が止むと同時に話し出す。

「毎日毎日、下界を見てると知りたくなったの。本当は、どういう所なんだろ。良い所なのかな、本当は悪い所なんじゃないかなって…私の目で本当のことを見たくなったの」

強く揺るぎの無い眼差しを向け、カイウを見る。

行かせてあげたい。
リラは、決めた事は誰がなんと言おうと曲げない。

それを、分かっているのにカイウの表情には笑顔はなかった。 一向に、カイウからの言葉がない事を心配したリラは、カイウの顔を覗き込む様にし、「…カイウ?」っと、声を掛けると…

「―…痛っ!?」

「絶対…絶対に下界には行かせない」

カイウの手により、肩を強く握られ、痛みに耐えながらカイウの表情を見ると、リラは息を飲み、背中に冷や汗が伝わるのが分かった。

今までに、見た事のないカイウの表情。
焦り、哀しみ、怒り、そういった感情がカイウの表情から読み取れる。

肩を離そうとしないカイウ。
リラは、痛みに耐えながら口を開こうとすると

「リラには、下界は合わないよ」

「っ…なんで?カイウは、下界に行ったじゃん!」

「俺は、長(おさ)から許しをもらったから」

「じゃぁ、私も長から許しもらってくる」

カイウの言葉に怒りを覚えたリラは、肩に置かれているカイウの手を振り払う様に体を力強く動かし、天界の長の所に行こうと歩みを進め様とすると、カイウが制止の言葉を掛け、自分の方に引き寄せ様とリラの腕を引っ張ると

「…え?」

「…っリラァァ!」

カイウが、強く腕を引っ張ってしまった反動で、リラは足を滑らせ、身体が雲から離れてしまった。

突然の事に、頭が付いていかないリラ。
カイウは、伸ばされているリラの手を掴もうとするが、落ちるスピードが速い為に届かない。
唇を噛み締め、飛び出してリラを助けようとしたカイウの背後から声がかかる。

「止めておけ」

「っ…ガウラ!リラが…リラを助けに行かないと、地上にっ!」

「…リラ!良い機会だ、このまま地上に行ってみろ」

どんどんと下に落ちて行くリラに聞こえる様に声を張るガウラ。
その声が聞こえたのか、リラは小さく笑みを浮かべ頷いたのが見えた。

それを見たカイウは、鬼の形相でガウラの服の襟を掴み、怒鳴り散らす。

「ガウラ!お前、何をしたのか分かってるのか!リラには、まだ地上は早い!」

「なら…いつ、地上に行かせる?お前は、自分の側からリラが居なくなるのが怖いだけではないのか?」

ビクッと肩を揺らし、ゆっくりと掴んでいた手を離したカイウ。顔を下に向けるカイウの肩に、ガウラは手を置き

「…リラは、視野を広げるべきだ。まだ、お前のものではないのだからな。」

そう言って去って行くガウラ。
カイウは、下を向いたまま下唇を噛み締め「・・・リラ」っと小さく呟いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

禁断の真っ赤な果実【プロローグ-1-】

初めてしまった...

【秘蜜~黒の誓い~】の歌詞を自分なりに解釈した小説です。
パソコンに保存しているものを投下!

キャラの名前は、変えました。
・リラ…鏡音リン
・カイウ…KAITO
・ガウラ…がくぽ


閲覧数:262

投稿日:2011/05/23 13:08:27

文字数:1,665文字

カテゴリ:小説

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  • 芽衣

    芽衣

    ご意見・ご感想

    はじめまして!芽衣というものです(`・ω・´)

    私も同じく秘蜜の小説を書いているのですが
    白葉さんの小説が気になりすぎてもじもじしててついコメントをしてしm(

    なんだか文才ありすぎて私ひゃっはーです(どういう意味だ

    次回があるのかとても気になるのです…|壁|・ω・)次回wktk
    白葉さんフォローさせてもらいます!あと小説ブクマさせていただきます!
    失礼しました!

    2011/05/07 15:36:37

    • 白葉一縷

      白葉一縷

      >>芽衣様

      初めまして。メッセージありがとうございます(´ω`*)
      まさか、こんな放置状態の所にメッセージが来るとは思ってもみませんでした!

      文才?何を仰るんですか芽衣様。
      自分に文才なんてありません!自分の辞書にも『文才』という言葉は記載されてませんから←

      次回…次回…考えてはいるのですが、なかなか文章に出来ないんですよね(´Д`;)
      リンの傷ついたをどうやって…って考えると進まないんです…あと、後から出てくる他の子たちの名前が…
      っというか!!フォローにブクマですと?!あ、ありがとうございます!
      嬉しいです!目から炭酸水が(意味わからん
      是非また、読みに来てくださいませ!

      2011/05/09 16:31:26

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