その後、雅彦は記事を読んでいた。記事はアルベルトの記事で、今回のワンオフのミクのバースデーライブに関する記事で、複数回に分けて書かれた記事の締めくくりの記事で、今までの記事の総括的な内容である。記事にはバースデーライブの千秋楽後のオフ会についても触れられており、雅彦が参加していた話や、後日受けたインタビューも掲載されている。もっとも、彼はすでに日本におらず、仮想空間上からインタビューを受けたにすぎない。彼によると、今はイギリスでの有志主催のイベントに参加しているとのことで、その情報は彼自身が拡散していた。このイベントもいずれ記事か何かにはなるだろう。彼を追っていると、色々と情報が得られるので、彼の動向を追いかけている人は多い。彼の場合、抜群の行動力に加え、広範な知識を絡めた話ができる。特に技術的な話は強いし、ボーカロイドの歴史の知識もなかなかもので、それが今回の記事にも現れていた。
「…雅彦さん」
すると、ワンオフのミクが部屋に入ってきた。
「何されてるんですか?」
そういいながらコーヒーを渡すワンオフのミク。雅彦の好みは知悉しているので、それにあわせてある。
「ああ、児童養護施設のライブの話が終わったから、色々と見てるんだ。今はアルベルト君の今回のミクのバースデーライブの新しい記事を読んでいるんだよ。見るかい?」
「はい」
そういって記事を読むミク。今回の連載に関しては、節目の年ということもあって、ワンオフのミクもインタビューを受けていた。ワンオフのミクがその記事を読むのを見ながら、ワンオフのミクから受け取ったコーヒーを飲む。
「アルベルトさんの記事はいつ読んでも面白いです」
「…そうだね、分かりやすくかみ砕いた書き方になっているけど、決して記事の内容の質が下がっているわけじゃないからね。…そうだ、児童養護施設のライブの初回の練習はあさってだけど、大丈夫だよね?」
「はい」
「あと、土曜だけど、午前に用事が入ったんだ。午後からの練習には間に合うと思うけど」
「何の用ですか?」
「高野君から頼まれて、神波君と話をすることになったんだ。あまりオフ会なんかのイベント以外で人と会うことは避けてるんだけど。彼が僕たちから色々と聞いたせいで、もやもやしているらしい」
雅彦の場合、一度特定の個人と会うと、会いたいという申し出が殺到することが目に見えているため、よほどの事情がない限り会わない方針だった。
「そうなんですか…」
「高野君から頼まれて話したけど、彼がもやもやしている原因の一端は僕にもあると思う。もう少し話す内容を考えるべきだったのかもしれない。…その辺の落とし前というわけじゃないけど」
「…大丈夫でしょうか?」
「高野君の話を聞く限り大丈夫そうな気もするけど、木下さんのような例もあるからね。彼女みたいな話も彼女以外にも聞いたことがあるし。いずれにせよ、あまりもやもやしている時間が長くなるのは良くない気がするんだ。進むにせよ、引くにせよ、決断は早いほうが良いと思う」
「そうですね」
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ほむる
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