誰っ?」
いきなり3人の盗賊が入って来た。かなりゴツめの大男だ。
「盗賊…」
「よう、お姉ちゃん、死にたくなかったら金目の物出しな」
「ウヘヘ、何ならその身体でも良いぜ」
「まぁ、身体はともかく、面が良いから金にはなりそうだ、ねぇ?アニキ」
「そうだな、胸もねぇし、面だけしか使えねぇな」
私は、護身用に太ももに差していた短剣を手に持ち、後先考えずに盗賊に目掛けて飛び掛かった。
「失礼ね!まだ成長途中よ!」
「おっと…あぶねぇなぁ」
「…っ!」
盗賊は飛びかかってくるミクを余裕でかわして、ミクの腕を掴んだ。
私はあっさりと捕まった、大の大人に勝てる訳が無い。
後先考えずに突っ込んだ私の愚かさの負けだ、私の馬鹿…。
私は、目をつむって願った、お願い、カイト助けてと…。
盗賊に捕まり外に連れ出された時に急に一人の盗賊が倒れたのだ。
不思議に思った私は後ろを振り向くと寝ていたはずのカイトが盗賊の頭に向けて剣を向けていた、凄い形相で。
「おい…てめぇ、その汚ねぇ手を離しなっ!」
「カイト!」
剣を盗賊の首に突き付けるカイト、しかし盗賊もその程度じゃ怯む様子も無く、ニヤリと笑い盗賊は背中に装備していた身の丈程もある剣を手に取る。
「坊主、俺に喧嘩売るたぁ、いい度胸じゃねぇか。さぁ、楽しもうぜ!」
盗賊が喋り終わると同時に剣が振り下ろされる。
鈍い音と共に大地にヒビが入る。
カイトは、素早く避け、盗賊の腹に一閃、剣をふる。
「食らえっ!閃派斬!」
「ふっ…、甘いぜ」
盗賊はカイトの技を剣で受け止める。剣と剣がぶつかり合って火花が散る、その時盗賊がミクを掴んでいた手が離れる、その好きにミクは盗賊からすかさず離れると同時に盗賊の脇腹に蹴りをお見舞いする。
「ぐおっ!いってーじゃねぇか、この女ぁっ!」
盗賊の鋭い剣がミクを襲う、ミクはとっさに避けるが、盗賊頭の振るった剣の風圧で吹っ飛ばされるミク。
「ミクっ!」
「私は大丈夫!」
「よそ見してんじゃねぇ!」
ガキーン。鈍い音がした。ミクは短剣で盗賊頭の剣を受け止めるが力の差は歴然、そのままミクはカイトの足元に吹っ飛ばされた。
「キャッ」
「ミク!大丈夫か?」
ミ大丈夫よ、それよりあいつかなり強いわ、私は力との差があり過ぎる、カイトじゃなきゃ勝てないわ」
「解った、あいつは俺が殺る!だが、その前に…」
「残りの二人を片付けないとね!」
ミクはそう言うと、二人目掛けて飛び込んだ、それに合わせてカイトも飛び込む。
「舞妖閃!」
「閃派斬!」
カイトの一閃とミクの短剣が盗賊を切り飛ばす、二人の攻撃に手も足も出せぬまま、盗賊二人は地面に倒れた。
「さぁ、後はお前だけだ!」
「畜生!俺を本気にさせた事、後悔させてやるぜ!」
盗賊は、カイト目掛けて突っ込んで来た、カイトはゆっくりと目を閉じて、目を見開いた。
「甘いな…」
カイトは呟き、盗賊の剣をカウンターで返す。盗賊は勢いよく飛び、地面に強く叩きつけられた。
「カイト…凄い…、まるで別人みたいじゃない」
ゆっくりとカイトは盗賊に向かって歩みだした、その後ろ姿はどこなく殺意が感じられる。
「人の睡眠を邪魔しやがって!許さんぞ!殺してやる!」
「えっ?睡眠を邪魔されたから怒ってたの?って…そんな事言ってる場合じゃないわ。カイトを止めないと…」
カイトは盗賊の首に剣を当て、大きく振りかぶった。
何かがカイトの剣を止める、ミクの短剣だった。
「ミク?どうして…?」
「良いからカイト、剣を下ろして」
不思議がるカイトはどことなく真剣なミクの顔を見て剣をおろした。気を失っていた盗賊も目を開けて疑問に思った。
「貴方、賞金がかかってるでしょ?100万Divaも、だから、生け捕りにして町に持って行くのよ」
「お嬢ちゃん…、まぁ、そこの兄ちゃんに殺されるよりマシだな、仕方ない捕まってやるよ」
「お前…良いのか?」
「あぁ、良いんだ」
「じゃあ町に行こうか。なぁ、ミク?町にはどうやって行くんだ?」
「ねぇ、盗賊さん、貴方、馬車とか持ってないの?」
「あるにはあるが…」
ミクは頂戴と言わんばかりの笑顔で手を差し伸べる。どことなく恐怖を感じる笑顔だ…。しかしミクの目から殺意が感じられるのは気のせいだろうか…。
観念したように盗賊の首領はため息をついた。
「はぁ…、仕方ねぇ、どうせもう帰って来れないだろうしな…使いな」
「やったね♪」
顔を合わせてハイタッチするミクとカイト、早速小屋からミクは縄を持ってきて盗賊をグルグル巻きにする。
そして一行は馬車に乗り町へ向かう。
「なぁミク、あれって何だ?」
カイトは夜空に輝く星に指を指す。
「あれは星って言うのよ、綺麗でしょ?」
「そっか♪星って言うのか、綺麗だな、まるでミクみたいだ」
「ちょっ……あんた何言ってるのよ……ねぇ?それどういう意味なの?」
「ん~、良く解らないや。なんか頭に浮かんだから言っただけ」
「そう…まぁ良いわ、もう町に着くから準備して」
「なぁミクぅ。俺腹減ったぜ…ってか今日は何も食ってねぇ!あっ?ミクの飯食い忘れた」
「ご飯作ってる最中にカイトが寝るんだもん。私に文句言われても…。文句言うならこの盗賊に文句言いなさい!こいつのせいでご飯たべそにれちゃったんだからね!」
「あぁ!腹立つ!ミク!金入ったら飯食わせてくれよ!」
「しょうがなわいねぇ…。でも今の時間じゃ開いてるお店少ないよ?」
「もう何でもいいから飯!飯食わせろ!」
「解ったから、静かにして!ほらカイト着いたよ」
「まず、何処に行くんだ?」
「確かギルドで良かったと思う。私も初めてだから良く解らないのよ、とりあえずギルドに行きましょ」
二人は盗賊を引きずりながらギルドを目指す。
「はぁ~、着いた。腰痛ぇ…」
「だらしないわなぇ。すいませーん、賞金首を捕まえたんですけど、賞金の手配って此処で良いのかしら?」
「はい、こちらでよろしいですよ」
「カイト、こっち来て!カイトーっ!もう、何やってるのかしら?」
カイトはギルドに貼られているポスターをずっと見ていた。
「あ、あぁ悪ぃ。呼んだ?」
「早く盗賊を連れてこっちに来なさい」
「へーい」
盗賊をズルズルと引きずるカイト。面倒くさいのか、腹が減っているのか、とりあえずだるそうな顔をして受付の姉さんに渡した。
「どう?100万Divaの賞金首の奴でしょ?」
「はい、確かに賞金首100万Divaの盗賊頭オーウェンですね。賞金を手配致しますのでお待ちください」
「ねぇカイト、さっき何見てたの?」
「いや、あのポスターの人が気になってさ」
「ポスター?あぁ、巡音ルカさんのこと?でも、それがどうかしたの?」
「なんでもねぇよ。ただ何か気になっただけ」
「そう…(まさかカイト巡音ルカさんに惚れたんじゃ…確かに美人だしスタイル良いし、胸も…はっ!まさかカイトは胸の大きい人が好きなんじゃ…)
」
「ミク!賞金の手配出来たってさ。…ミク?」
「あぁ、ゴメンね。ちょっとボーッとしてたみたい」
「お待たせ致しました。こちら100万Divaになります。大金ですので気をつけてお帰りください」
「ありがとうございます」
礼を言って札束を鞄に詰めるミク。カイトはお金と言うのを見た事がなかったのでゆっくり見たかったが、大金なのでミクに断られた。
「ミク、これで飯が食えるな!早く行こうぜ!」
「今の時間、店もあんまり開いてないからとりあえず私の行きつけの酒場に行って軽めに食べて、何処かの宿屋に泊まりましょう。お腹いっぱい食べるのは明日にしよう」
「何でも良いから早く行こうぜ」
「解ったわよ」
空腹でだるそうなカイトを強引に酒場まで連れていく。
「こんばんわ~」
「おや、ミクちゃん今日はどうしたんだい?出勤の日じゃないだろう?」
「マスター。今日はただ遊びに来ただけだよ、お腹が空いて死にそうな人がいるからさ、マスター何か作ってやってくれない?」
「うちは飯屋じゃねぇから本格的なもんは作れねーぞ?」
「とりあえず空腹を満たされば良いから、お願いね♪」
「ミクー。メシまだぁ?」
「うるさいわねぇ!ちょっと待ちなさいよ!今作ってもらってるから」
ミクはテーブルの水を飲み、マスターに言った。
「ねぇマスター?一曲だけ歌って良いかしら?」
「あぁ?彼氏にラブソングを贈るのかい?ミクちゃんも大胆になったねぇ」
「だから違うって言ってるでしょ!」
「アハハ、構わんよ。歌って行きなさい。」
ミクはステージに向かって歩いていく、マスターは厨房に行き、しばらくすると帰ってきて、テーブルにご飯を置く。カイトはテーブルのご飯を見ると目の色を変えてご飯に飛びついた。
「こらー。カイトー。ご飯食べるのは良いけど、ちゃんと私の歌も聞いてよー」
「おー。ちゃんと聞くよ、にしても美味いなぁー」
カイトが凄い勢いでご飯を食べる。カイトが食べ終わると店内の雰囲気が変わり、照明が落ち、ミクの立っているステージがライトアップされる。
「では、私のオリジナル曲聞いてください【星と君と思い出】」
拍手をするマスターに合わせて、カイトはとりあえず手を叩いた。
「♪この星の降る夜を貴方も何処かで見ていますか♪」
「おぉっ、これがあのミクなのか?いつもと全然違うじゃん♪なんか上手く言葉に出来ないけど…」
「おや、お前さんミクちゃんの歌聞いた事無かったのか?」
「あぁ。」
「ミクちゃんの歌には不思議な力があるんだ、腹痛で苦しんでいた客がミクちゃんの歌を聴くと元気になったりと皆を癒す力があるみたいじゃよ」
「あいつにそんな力が…。すげぇ良い声してるよな。なんかミクの気持ちが伝わってくるよ」カイトはその言葉を最後に歌ってるミクを最後まで見つづけた。ミクが歌い終わると同時にカイトは席を立ち大きな拍手をした。
「皆ありがとう♪ふーっ、気持ち良かった。カイトどうだった?」
「ミク、俺良く解らないけどさ、ミクの歌聞いてたら急に体が熱くなったんだ。それに目から何か出てきてさ…」
「え?カイト泣いてるの?」
カイトは、涙を流しながらミクを優しく抱きしめた。
「俺、こんな感覚初めてだ。ミク…いったいこれって何なんだろうな?」
「カイト…。ありがとう…。その答えはいずれ解るよ。さぁ、もう夜も遅いから宿屋に泊まろう」
「ミクちゃん。良かったら今日は此処に泊まって行くと良い」
「え?どうして?」
「ああ、構わないさ、最近物騒な連中が増えてきてな、宿屋に泊るより安全だろう。ところでカイト君だっけ?君は何者だね?」
「…………」
「あぁ、マスター。ちょっと訳ありでね、カイトは記憶が無いのよ。自分が何者かも解らないし本名だって解らないの、カイトって名前も私が勝手につけた名前よ」
「それは失礼な事を聞いてしまった、すまないね。今から部屋を用意するから待ってなさい」
「ありがとうマスター。行こうかカイト。ねぇ、カイト?」
カイトはご飯を食べてミクの歌を聞いたら満足して寝たようだ。気持ち良さそうに寝ている、まださっきの涙の跡が頬に残っている。
「部屋の準備が出来たよミクちゃん、おや?カイト君はもう寝たのか?」
「そうなのよ、マスター。悪いけどカイトを部屋まで運んでくれない?」
「あぁ、先に行っておくれミクちゃん」
部屋に着くと二人はすぐに就寝した。
「さて、私も寝るか♪しかしカイトが私の歌に感動してたのはびっくりしたなぁ。カイトといたら毎日が楽しいや♪」
ミクは色々と考えているといつの間にか寝ていた。そして…翌朝―。
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