伸び盛りの、デザイナーやクリエイターが入っている施設「ニコニコ・デザイナーズ・ビレッジ」。
きょうは、年に2回ほど開かれる、“オープン・ビレッジ”の日だ。
ふだんは入れない、施設の中のデザイナーのアトリエや、仕事場を、一般の人が見学できる。
建物の一室の、一日限定の小さなティールーム。
キッチンで忙しく働くのは、ツナちゃん。
ふだんは、移動自動車カフェ「ドナドナ号」で働くシェフだ。
ティールームの机で話をするのは、たこるかちゃんと、友人のぱみゅちゃんだ。
たこるかちゃんはドナドナ号のスタッフ。ぱみゅちゃんは、ビレッジの入居者のデザイナーだ。
「お客さんがすごいね。たくさん来て、にぎわってるじゃん」
「うん」
2人は、周りの席を見わたした。ちょうどお昼時で、なかなかの繁盛ぶりだ。
●デザイナーのアトリエを見て回ろう
そのうちに、お昼の時間も過ぎて、人の流れもひと休みとなった。
「ねえ、ちょっとビレッジの中を見てきていいかな」
たこるかちゃんは、キッチンの中に向かってたのんだ。
「いいですよ」
にこにこ笑ってうなずくツナちゃん。
もとは、小学校だったこの建物。
アクセサリーのデザインや、布製のバッグや小物の製作、いろんなタイプのデザイナーが入居している。
「あ、ここは“てんわ”」
ぱみゅちゃんが、たこるかちゃんを案内して入った部屋では、2人のデザイナーがお客さんの相手をしていた。
「あら、お知り合い?」
ぱみゅちゃんはうなずいて、たこるかちゃんを2人に紹介する。
「こちら、移動カフェのドナドナ号の、多胡流香ちゃん。こちらは、デザイナーの名護根マコさんと、天菜ルナさん」
「はじめまして」
3人はにこやかにあいさつする。
●いい作品作ってる?
「みんな、いつもこんな学校みたいな、楽しい建物で仕事してるんですか?いいなあ」
部屋の壁にある“黒板”を見て、たこるかちゃんは言った。
「うん、みんなええ方ばっかりで。でも、ここにおられるのは3年間なんですわ」
マコさんが答える。
「私たちはいま、2年目です。ここ出たら、自分で事務所やお店を出さなきゃね」
ルナさんも言う。
「あらあ、なつかしい。みんな元気してたかしらー」
のん気な声に、みんなが振り返ると、そこにデザイナーのゆくりさんが立っていた。
「あれ、ゆくりさん!」
「マコちゃん、ルナさん、ぱみゅちゃんも、ガンバってるみたいねー」
にこやかに言う彼女は、この春にこのビレッジを「卒業」して、自分の店を持ったばかりなのだ。
「みんな最近、いい作品作ってるー?」
「ええ!そうそう、ゆくりさん、お店開店したそうですね。今度是非行きます」
ルナさんが言う。
「うれしいわ。きっと来てねー。そういえば、ぱみゅちゃん、来月、展示会するんですって?」
「そうなんですよ。さすが、情報通のゆくりさんだな。モモさんのサンセット・ギャラリーで、ガラス・アクセサリー展をするんです」
ぱみゅちゃんは、うれしそうに言った。
「うん。“葉丸美優アクセ展”っていう、チラシを見たのよ」
ゆくりさんはうなずいた。
●怒るとダメですよー。
みんなの様子を見ていた、たこるかちゃんは、ちょっと感心した。
「ふーん。手作りのアクセサリーとか、作るのは大変だけど...小さな展示会とかで、少しずつ輪を広げていくんだな」
楽しそうに話すみんなを見て、彼女は思った。
「わたしも、コーヒーの淹れ方とかでも、まとめて日記にしてみようかな。とにかく何かを作ってみようか」
ふと気づくと、たこるかちゃんを、みんながのぞき込んでいる。
「どしたの?」
ぱみゅちゃんが聞いた。
「めずらしく真剣に、考え込んで。どっか、具合でも悪いのかと思った」
たこるかちゃんは、ぷっとふくれた。
「アタシが考え事するとおかしいって、なんじゃそりゃ!」
「あらー。カワイイお嬢さんが、怒ると、ゆでだこみたいですよー」
ゆくりさんの言葉に、思わずふき出したたこるかちゃんは、心の中で思った。
「“カワイイ”が無かったら、火に油だぞ、オマエ」;・_・)_θ
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