満月の夜は星が少ない。月の光が星を飲み込んでしまうからだ。
ベランダで星を見上げながら三人でアイスを食べる。というか二人に食べさせる。
手摺りの上にいる二人が落ちないかと思いつつも、床だと高さ的に見にくそうなので仕方がない。なるべく大人しくしてもらおう。

「マスターっ」

先程からコウはアイスの催促ばかりだ。モカと半分ずつの予定だが、そろそろ食い過ぎな気がする。というか月を見ろ。
団子や芒を用意しているわけではないが今日はお月見だ。見事に丸くなっている月がいつもよりも綺麗に見えるような気がするのは単純なのだろうか。

「……………………綺麗……ですね………」

手摺りの上に座っているモカが呟く。コウと違いちゃんと月を見ているらしい。
ほら、コウも月を見ろ。綺麗だぞ。
言うが、コウは大きく口を開けて次のアイスを待っている。鳥の雛のようだ。
しかしこのままではもう一匹の分が無くなってしまうので無視して次の雛の口へと入れた。

「ちょっマスター!」

予想通りコウが怒る。
でも無視。

「なんでそーゆーことするんですかっ」

自分の食べた量を考えろ。後はモカの分だ。
今回のアイス、マカダミアナッツはわりとわかりやすい性格になった。からかいやすい単純な所がKAITOに近しいものを感じる。
ナッツ系のアイスは他に食べさせた事がないが、多分少しずつ違うのだろう。
マカダミアカラーなのか、とても表現のしづらい白系の色をしたコウがじたばたと怒る。

「ま、マスターがそのきならおれにもかんがえがありますよ…!」

頬を膨らませながらコウは座っているモカの手を取った。
何をする気だろう。

「モカ!いっしょにれいぞーこあさろうっ」

言ってコウはベランダの中へ飛び降りた。もちろんモカを道連れに。
おいコウっ…。
かなり高さがあるはずなのだが、見事に二人とも着地した。不意をつかれて飛び降りる形になったモカも一応大丈夫なようだ。
ではなくて。
一瞬にして家の中に走っていった二人を追いかけなくては。
走っているとはいえ小さいだけありすぐに追いつくはずだ。
冷蔵庫に向かうと、案の定コウが冷凍室を開けようと跳ねていた。

「…………………コウ………」
「モカっ、てつだって!」
「…………………無理…だと……」

思うけど、とモカが小さく続けた。
確かに無理だろう。
この冷蔵庫の冷凍室は引き出しタイプだ。手の届かない二人には開けれないだろう。
何も言わず近づくと、コウが半泣きで睨んできた。
…この程度で泣かないでほしい。
思いながら最後の一口のアイスをモカの目の前に差し出す。モカは少し困ったようなそぶりを見せたあと、口を開いて食べた。

「…っずるい!マスターおれのぶんは!?」

もうない。
半分以上コウが食べたくせにまだ足りないらしく、寝転がってじたばたと駄々を捏ね始めた。

「ずるいずるいずーるーい~!おれのアーイースー!!」

………五月蝿い。
諦めろ、ほとんどお前が食べたんだ。
しかし泣きわめくコウには聞こえないらしくおさまる気配がない。モカの呼びかけも耳に届いていないようだ。
あまりにも五月蝿いので一口だけでも食べさせて黙らせようかと思い冷凍室を開けるが、残念な事にマカダミアナッツはもうなかった。
まぁ普段あまり食べないから二個も三個も買ってるわけがないのだが。
コウ、ないから我慢しろ。
ないものはないのだから諦めてもらうしかない。
だが。

「かいにいきましょうマスター!」

…恐らく、言うタイミングを計っていたのだろう。
してやったり顔が逆にムカついてくる。
行かない。何時だと思ってるんだ。
ちらりと見ると時計は九時前をさしていた。こんな時間に出たくない。

「つきもきれいですし!ね!」

何がね!だ。
アイスばかりで見てなかったはずだが。いつ月を見ていたんだこいつは。
確かに月は綺麗だし、満月だから外も普段よりは明るい。二人は夜外に出たことなどないから面白いかもしれない。
しかし面倒臭い。アイスのためだけにこの時間に出たくない。
さてどうするか。

「………………行くん……です、か…?」

…行きたいか?
問うと僅かに逡巡し、こくりと頷いた。
横で成り行きを見ていたコウが期待に瞳を輝かせながら飛び起きた。
はぁ…。
仕方ない。たまにだし、行くか。
ため息をついて出かける準備を始める。後ろでコウが喜ぶ声が聞こえた。
全く…。
あまり甘やかしたくはないのだが、中々厳しくもなりきれない。難しいところだ。
自分の育て方に疑問を持ちながらも二人を肩に乗せて家を出る。
不思議な表情をした見事な満月が、こっちを見ていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種25(亜種注意)

Q、月見はいつでしょう?
A、九月中のどっかだろ。
……………お月見が書きたかったんだ……っ(逃走)
月見の日にちを知らなかったせいか全く月が出ていません。関係ないですか。すみません。

本当はまだ書きたいのですが現在の執筆速度だと色々きついので、ずっと予定していた話しを書き始めようと思います。秋を逃したら書けないんだ…。
……うぅ、暇がない…。



本家様はちゃんと月見出来たのでしょうか。
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on

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投稿日:2009/09/22 23:47:01

文字数:1,932文字

カテゴリ:小説

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