「私のだ、部下からの調査報告みたい。こ、これは…?」
「ネル?どうかしたの?……っ!」
ミキはネルの携帯の画面を見ると、驚いた顔で画面を見続けていた。不思議に思ったカイトはすぐにネルに何があったかを聞いた。
「ネル、ここは私に説明させてくんない?」
「あ、ああ。うん…」
「ありがとう。カイト君?グミ博士の作ってる兵器の名前が解りました。それは…《ジェノサイドウェポン》です」
全員「……」
一同が驚きを隠せない表情で一斉に黙り込んだ。
カイトは唾をゴクリと飲み、ミキに聞き返した?
「ミキ、一体それは何だ?」
「古い言い伝え何ですけど、こういうのがあります。『光ト闇ガ衝突スル時、天カラノ裁キニヨリ、生命ハソノ終ワリヲ告ゲル…』」
「何だそれ?どういう意味だ?」
「この世界には一般の歴史とは別に世界から消されつつある、暗黒歴史と言うものがあります。あまりにも酷く残酷な歴史なので表上ではあまり触れられない過去になりますね。その中で1番酷かったのがさっき言った《ジェノサイドウェポン》です」
「暗黒歴史…?そんなものがあったのか」
「はい。その昔、光の聖剣…ラグナシアと闇の魔剣…バレンシアを持つ二人によって戦争が起こりました。その戦争は一般に《聖魔戦争》と呼ばれています。《聖魔戦争》の悲劇は口では語り尽くせないほどです」
「そんなデカイ戦争が…。しかもその聖剣が俺の処に…」
「それは解りませんが、《聖魔戦争》を起こした人間に呆れた神は愚かな人間に禁じられた技術を与えました。その技術を使って作られたのが《ジェノサイドウェポン》…それは世界を崩壊し、人類は自らの手で愚かな歴史に幕を閉じました」
「待てよ!その話しだと俺達は存在しない事になるんじゃねぇか?」
「これにはまだ続きがあります。そして失われし世界を見て哀れに思った神は一人の人間を創りました。創られた人間は聖剣を使い聖霊を召喚しました。火の聖霊は汚れた世界を焼き払い。水の聖霊は津波を起こし火を消し、母なる海を創りました。地の聖霊は海の上に大地を創り、自然を創りました。そして風の聖霊は大地に癒しを、大地に命を芽吹きました。創られし人間は聖剣の力を使い、聖霊に世界の監視を任せ、アダムとイヴを創ったとされています」
「待てよ!じゃあ俺達は…」
カイトが机をバンと叩く。怒っているなどと言ううまでもなくカイトの怒りのオーラが全員に感じ取れた。
「ミキの話しが本当なら、私達は本当は居ない存在…。神に創られし存在って事になるわね」
「じゃあ全部神様が創ったコマに過ぎねぇじゃねぇかよ!神様の気まぐれでどうにか出来る世界なんて俺は認めないぞ」
その言葉に過剰に反応するレンはカイトと同じように机を叩く。
「レン…」
「考えても仕方ねぇ。よし、とりあえず今日は解散!各隊長はメンバーが決まり次第、俺に報告。良いな?」
「了解」
全員が席を立ち、緊迫した雰囲気から解放された皆は次々と雑談を始めた。
そんな中カイトは若干焦った様子だった。
「テト、図書館入らせてもらうぞ」
「構わないよ。戸締まりはちゃんとしてね」
カイトは親指を立てテトに見せると、血相を変えて図書館に向かった。
「カイト…?」
カイトの様子がいつもと違う。真相を確かめるべくミクはばれないようにカイトを追いかけるミク。
カイトはテトから預かっていた鍵で図書館に入ると昔の事が載った本を片っ端から読んでいった。
それをばれないようにじっと見るミク。
「違う、これでもねぇ!えっと…あった!」
目的の本を見つけると食い入るようにその本を読みだした。
「あの本はさっきの事が載ってる本?暗黒歴史について調べていたの?」
「やっぱりか…。もしかしたらこの戦いは神威の覆讐だけじゃない、世界の存続をかけた戦い…。しかも鍵は俺と《ジェノサイドウェポン》、たぶんミクやルカ…」
「いったいどういう事なのよ?」
「記憶…。大切にしないとな…」
カイトの初めて見る弱気な顔、そんなカイトを思ってかミクは静かにその場を立ち去った。
一方会議室では…
「ネル?アタシと共に来ない?」
「さっきの言ってた部隊の事?」
携帯を弄るネルの頭を優しく撫でるハクは頷いた。
「アタシはネルを危険な目に遭わせたくないから嫌なら別に良いのよ?」
「義姉さん、私は義兄さんを助けに行く!本当は助けれるかどうか解らないけどやるだけやってみるよ!」
「本当に良いの?兄さんはもうアタシ達の事は覚えていない、兄さんの姿をした他人よ?貴女にそれが割り切れる?」
「…うん。もう、あの優しかった義兄さんは居ない…解ってるよ。だからこそ!私はこの手で義姉さんと共に義兄さんを…」
いろんな想いがこみ上げネルは涙を零した。ハクはネルを抱きしめ優しく呟いた。
「バカね。無理しなくてもいいのよ。貴女はアタシの大切な家族…地は繋がってないけどアタシの自慢の妹よ。きっと兄さんだって同じ事言ってるわ」
「義姉さん…。ありがとう。私はもう迷わない!絶対にやってみせるわ!」
「ありがとう、後はカイトさんに報告ね」
壁にもたれて一人考えるルカ。誰を連れていくか考えているようだ。
「さて…私はどうしようかな?」
「よぉ、悩んでるなら俺を連れていってくれないか?」
「ルコ?貴方、キヨテルに何かあるの?」
「あぁ、ちょっと言いたい事があってな…」
「言いたい事?」
「あぁ、詳しくは話せねぇが、俺は昔王国の親衛隊に所属してたんだ、それで我らが隊長があいつ…キヨテルなのさ」
「初めて聞いたわ、あなたも私と何処かで繋がっていたのね」
「そんなデカイ繋がりじゃないけどな。まぁ、色々あって辞めてこっちに来てるが、後悔はしてねぇ。むしろこっちのが良い」
「ルコ…」
「気にするな記憶がないから言っても無駄だけど、奴に一発殴ってやらないと気がすまねぇんだ」
「ふぅ。じゃあ貴方さえ良ければ私と一緒に来てくださる?」
「仰せのままに…姫。」
ルコは方膝を立て、ルカの手を取った。顔を赤らめるルカ姫はあまりにも可愛く、可憐にルコの目には映っていた。
「メイコ師匠の相手かぁ…僕に出来るかなぁ?」
ため息をつくテトを後ろから抱きつくミキ。
「テートちん♪何なら私を連れていってよぉ」
「ミキ、お前はグミ博士の兵器に対抗する兵器を創る役目が残ってるだろ?」
「はぁ、そうかそれがあったんだ…めんどくせぇ。兵器よりテトちんの側に居たかったのに…。大丈夫だよテトちん!私が兵器で支援するからね!危なくなったらいつでも無線で連絡してね!」
「お前に任せるとこっちが滅びそうで怖いわっ!」
テトがミキの頭を叩いて、辺りを見渡すとため息をついて、リツに話し掛けた。
「リツ、今回の作戦だが…」
「今のため息は何ですか?」
「深い意味は無いんだ。ただまともに話せるのがお前しかいなくてな…」
「解りましたわ。メイコさん相手にどこまで通用するかは解りませんがベストを尽くします!」
「いつもすまないな、リツ。ありがとう」
「テト様から感謝の言葉なんて初めて聞きましたわ。雨でも降らなきゃ良いですけど…」
テトは黙ったまま、リツを見ていた。
そこにちょうどカイトが帰ってきた。
「まだ皆居たのか?」
カイトの腕には図書館から持って来たであろう、ぶ厚い本がニ、三冊あった。カイトはそれを机に置くとハクが近づいて来た。
「カイトさん、部隊の編成決まりましたよ」
「そうか。どんな編成だ?」
「アタシとネルが組みます」
「私とルコが組みますわ」
「そして僕とリツ」
「なるほど、良い組みあわせだな、ミキ!対抗兵器の調子はどうだ?」
「うーん。今設計図作ってるんだけど…この調子じゃ部品が少々足りないのよねぇ…テトちーん!この部品って無いよねぇ?」
設計図をなびかせながらテトに話しかける、テトは指差す場所を見ると首を横に振った。
「すまないな、うちのギルドにそんなものすらないんだよ」
「けっ!使えないの…」
「なんだと?」
「まぁまぁ。ねぇミキさん?何が足りないの?」
「大地の欠片と言う鉱石と、紅蓮の油、凍てついた輝石、疾風迅雷の宝玉ですわ。ちなみに余れば皆の武器の強化の材料に出来るわよ♪」
ミキは人差し指を立てウインクした、返すようにリンとレンが顔を見合わせて頷いた。
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