時代が拭き残した侭 我関せず焉の
雨降り旧市街 退廃区
丸い背で彼は今日も往く

凡ゆる搾取が溶け合った異臭に嗅覚器は
曲がるばかりか一回転して無感覚だ
彼は今日を往く

荷台の不明な花の種の海が時化て
転げ落ちた一粒
自己の孤独な境涯が
それを連れ帰る動機となった

種を蒔いた土塊を
習慣になった落涙で濡らせば

花が咲いた 花が咲いた
涙で花が咲いた
真ん丸一つ目 暖色の睫毛で
彼を見てる
取るに足らない暮らしの中
取るに足らない現象の結晶が
これ程迄に美しいという事
確かに彼の救いだった

魔法の草は彼の手で切り花となって
雨降り旧市街 蚤の市
弱々しく綾なすものの

少年一人が珍花と呼ぶ平凡そうな宿草に
芝居を打つ融通は大人もまた
欠落していた

「いいさ 元々鐚銭も蝦蟇も
持たぬ様な毎日だろう
そうさ 僕にも値打ちがあるのさ
花になる涙を持つのさ」

花が咲かない 花が咲かない
涙がまだ足りない
焦りで彼の動脈は恰も岩漿の畝り
自己を痛め 他人を痛め
不幸がまだまだ足りない
愚行の数々を魔法の草は見てる
薄明光線の序でに

花が枯れた 花が枯れた
愛しき花が枯れた
翻って涙の泉は溢れ返り
咽び泣けど 咽び泣けど
虚をただ不毛に濡らしけり
死に馬に鍼

花が枯れた 花が枯れた
愛しき花が枯れた
真に平凡な宿草の一つに
過ぎないのだから
花は開く 花は開く
季節がまた巡れば

死ノ誤想デ贖イ自負ヲ保ツカ
自己ノ無力ト共ニ生ヲ知ルカ

どちらが彼の救いだった?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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珍花商-歌詞

閲覧数:1,228

投稿日:2021/03/28 00:28:49

文字数:642文字

カテゴリ:歌詞

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