「私の財産…貴様なんぞには、決して渡さない」



冥界の主にそう告げ、歩き出す。
扉に飛び込んだ私の体は、地獄の底へと落ちていく。

罪は、私のさじ加減ひとつ。
たとえ冥界の主だろうと、私のこの罪を、裁くことは認めない。
裁いていいのは、私だけだ。

さて、散らばった「大罪の器」はどうしよう?
…そうか、再び集めればいいのだ。
失ったなら、また集めればいいだけのこと。

その時にこの地獄は、私と娘の
理想郷へと変わるだろう…

その時が、楽しみだよ。





<<【七つの大罪】ガレリアンと愉快な大罪者【二次創作】>>





「…あだっ」



地獄の底って深いな。
どんだけ深いのかわからなくて、体を打ち付けてしまったじゃないか。
生きていたら、死んでる深さだ。
もう既に死んでるから、もう一回死ぬっていうのはないけど。

とりあえず立ち上がる。
いつまでも倒れているわけにはいかない。

とりあえず、近くの扉を開ける。


ギイッ…



嫌な音がするなぁ。くもの巣張ってるし。大丈夫かよ。
扉を開けて目に飛び込んできたのは。


 _________________
|ようこそ地獄へ!ゆっくりしていってね☆|
 ―――――――――――――――――
         | |
         | |  ←看板
         | | 
       ーー^^^ーー



地獄に来てゆっくりできる奴なんて、何処にいるか。
何この妙にイラつく看板。
いつか壊してやりたい。

落ち着けガレリアン。
ここは地獄だぞ。
何があっても不思議は無いじゃないか!
大丈夫、驚くことがあっても不思議ではない。

落ち着いて…落ち着いた。
とりあえず適当に歩いて道を進む。

そういえば、落ち着いて、気がついたことがある。
ここ…

…本当に地獄ですか?

ってくらいに、立派な風景である。
道がレッドカーペットだし。
城か何かかよ。

壁にはランプがかけてあり、肖像画もある。
その肖像画が、なぜ食べものなのかが気になるが。
なんでネギ。
っていうか肖像画じゃないだろ。なんでネギなんだよ。なんで地獄に来てまでネギを見たくないよ。

まぁ雰囲気を楽しんでいても仕方がないので(いや、楽しんではいないが。
私はそのへんの部屋に入った。いつまでもネギ(の絵)を見ているわけにもいかないし。


ガチャ



「「「「「「…あ、いらっしゃーい」」」」」」


とりあえず、ドアを閉めた。

きっと今見たのは幻覚なんだ。
地獄でトランプやって、負けたヤツが罰ゲームでスク水着てるのは、絶対にありえない。

とりあえず深呼吸をして、再び部屋に入った。
うん、さっきのは幻覚だったようだね。よかったよかった。


「…誰だお前ら」


とりあえず尋ねてみた。(今日だけで私は「とりあえず」って何回言ってるんだろうか)
なんか見覚えのある顔ばかりが揃っている。



「…あんた、うちに居たうだつのあがらないコックじゃない。」


そう言ったのは、茶髪で赤い服を着た女だ。
どっかで見覚えが…
ってかなんだよ、うだつのあがらないコックって。


「私はコックになった覚えはないし、あなたのことも知らないが」
「そうかしら?私にはどう見てもクズでヘタレで【自主規制】なコックにしか見えないけど。まぁ今更コックが地獄に来るのはおかしいし、違うと言うのなら、人違いかしら」


人違いです。
そして酷いぞ、いろいろと。
なんで初対面の人にここまで言われなきゃいけないんだろう。
でも見覚えあるしな…


「あ、そうそう。私の名前はバニカ・コンチータよ」
「コンチータ?歴史上の悪食娘か」
「フフフ、一応私のことをして知ってるのね。よろしくね」


どうりで。肖像画が教科書に載っていたくらいだし、見覚えがあるはずだ。


「アナタ…とうとう、私に会いに来てくれたのね!」
「人違いです鋏を向けないでください」


イキナリ襲い掛かってきたこちらのお方は、赤い着物に桃色の髪の女性。
鋏は凶器ですよ。向けないでください。
しかも何その鋏、血とかこびりついてるんだけど。凄く怖い。


「どうして…?私を知らないの…?」
「いや、会ったことないですし」
「私はあんなにアナタを愛したのに…どうしてわからないのよ」
「いやだから初対面」
「ああそうだわ。そうよ。だったら思い出させてあげるわよ!」ビュッ
「危ないんですけど!?ちょっと待って何この人ヤンデレ!?」


間一髪で鋏を避ける。
最近、何かと襲われるな。
ん?この女性も、どこかで見覚えがあるような。


「きみは、仕立屋のカヨ・スドウか?」
「わかってるんじゃないの初対面って言ったくせに嘘ツキウソツキ」
「カヨー危ないから戻ってラッシャーイ」
「そうよ思い出させてあげるわどれだけ私が傷ついたかを」
「カヨー彼を含めて皆が傷つきそうよー」
「浮気の怖さを知りなさい!」
「今なによりアナタが怖いわよーバカなのーバカだねー」


バニカがカヨに向かっていろいろ言っているが、彼女には届いていない。
おいバニカ、何某棒読みキャラのセリフを口にしてるんだよ。
やがてバニカはため息を一つつき、


「カヨー。今すぐに黙らないと、アナタを食べるわよ?どうやって食べようかしら、【自主規制】かな、でも【自主規制】でもいいわね、うわぁ迷う」


満面の笑みでそう告げた。
さすがは悪食娘。言葉も一味違う。
現に震えが止まりません。凄く怖い。
さて、カヨはというと


「ごめんなさいごめんなさいだから骨まで食べないでください」


凄い。いきなり泣きながら土下座しはじめた。
なんか見てて悲しくなるほどの謝罪だよ、許してやれよ。
さっきまでそいつとトランプしてただろ、そこまで仲いいんなら食うなよ。


「食べるならおいしく調理してください」


おいおかしいぞ。
食われる気マンマンじゃないか。
お前はMか何かなのか。


「冗談よ、食べないわよ」


バニカさん。冗談に聞こえなかったんですけど。
凄く怖かったんですけど。気のせいですかね。意のせいだといいね。
と、そこへ





「カスパル…あなたは、私のギフトで幸せになったんじゃ…?」


私の娘に似た女性が言う。
だが雰囲気が、娘とは違う。
なんか怖い。だって殺気が漂ってるもん。

そして、ギフト。ということは、この女性は。


「マルガリータ・ブランケンハイムか?」
「そうよ。でも私はアナタの…お飾りのドールじゃないわ!」
「はい!?」
「この女タラシ!」
「私は一途だ!」
「私も一途よ」
「カヨは出てこなくていいから!これは私とカスパルとの問題なのよ!」
「私はカスパルではない!」


やはりこうなるのか。
どれだけ人違いが多いのだ。
帰りたくなってきた。それがダメなら泣いていいですか。


「マルガリータ。彼はカスパルじゃないわよー」
「嘘よ!彼は絶対クズでバカでアホでマヌケでヘタレのカスパ――」
「食べるわよ」
「心の底からごめんなさい」


あれだけ怒っていたマルガリータがおとなしく土下座をしてしまった。
バニカ、恐るべし。
っていうか何故私はさっきから罵倒されるのだろう。
できるなら、今すぐにでも死にたい。
あれ、もう死んでたんだっけ。





「カイル兄様…あ、あ、あ、ごめんなさい!」


こちらは黄色いドレスを身にまとった少女だ。
なぜ謝る。カイルってアレか、かつての王か。
あれ、先祖だっけ、わからんくなってきた。


「カイル…君がミカエラを…!覚悟!」


こちらは召使の服を着た、少女によく似た少年。
危ないんですが。剣をしまってください。
何故私はいちいち初対面の人に殺されそうになるんだ、本当に。


「やめてアレン!カイル兄様は悪くないわ!私のせいなのよ!」
「でもリリアンヌ…」
「私が国を滅ぼせなんて言ったから…だから彼女が亡くなったのは、私のせいなのよ!」
「でも…うー…リリアンヌがそう言うなら…」


リリアンヌ?アレン?…双子で、そういうのがいたような…
あ、思いだした。


「悪ノ娘と召使か」
「? あ、よく見たらカイル兄様じゃない…?し、失礼いたしました!」
「あ、ほんとだ。これは失礼しました」
「え?うん」


この二人、子供なのに礼儀正しい。
さっきまで少年のほうは私を殺そうとしていたよね。
ていうか、本当に人違いが多いな。なんですか、この地獄人違いが多いんですか?





「カーチェス…お前がここに来るとは…」



こいつは紫の長髪の男だ。
ここまでくれば、誰かはもうわかるような気がしてならない。
色情狂のサテリアジス・ヴェニマニアっぽい。ってかそうだろう。カーチェスとか言ってるし。


「私はカーチェスではない。人違いだ」
「カーチェス。女装して俺を刺すなんて卑怯だぞ…」
「私は女装したこともないのだが。人違いだ」
「あの時の恨み…晴らしてくれる!」ヒュッ
「ナイフ投げないでくれますかヴェノさん。人違いです」


間一髪で避ける。
こんなのばっかりだ。
なんか回避スキルがあがってきたような気がする。


「ここは貴様に」
「ヴェノさん聞いてます?私はカーチェスでは」
「トランプ勝負を申し込む」
「ツッコミどこが多いよヴェノさん!」


なぜトランプ!?
普通、そこは決闘とかだよね!?
なんですか、この地獄は決闘方法がトランプしかないんですか!?


「そして俺は貴様に勝つのだ!覚悟、カーチェス!」
「私はカーチェスではなくて」
「やかましいわカーチェス!」
「やかましいのはお前だっ!」ブンッ


持っていた槌を、ヴェノさんに向かって投げる。
なんで投げたかって、なんかいろいろとめんどくさくなったからだ。
ちなみにヴェノさんと言っているのは、名前が長いので略したからだ。
あと親しみやすい呼び方だよね。


「あいたっ…ひ、卑怯だ…さすがはうろたんだー…」
「先にナイフ投げたのはそっちでしょ!?あと、他のPの曲の名前が入ってるよ!」


こいつが一番まともじゃなさそう。
一番まともなのは、あの双子だな。
大人がまともじゃないって、どういうことっすか。
常識がないんですか、ここ。


「…ていうか人違いなら、早く自己紹介しなさいよ青いの」


バニカがそう言う。
青いのって何だ。


「あー…私はガレリアン・マーロン。生前は裁判官だった」


ここに居る全員に人違いされるとは思わなかった。
しかも鋏向けられたし、剣を向けられたし、ナイフ投げられたし、罵倒されるし。
あげくの果てには女タラシって言われるし、トランプ勝負申し込まれるし。


「そういえば、それらしい服装ね」とバニカ。
「言われてみればそんな雰囲気」とカヨ。
「なんだ、カスパルじゃないのね」とマルガリータ。
「かっこいいー」とリリアンヌ。
「カイルの一族っぽいんだよなー」とアレン。
「むう…非常にそっくりだが信じるしかあるまい…」とヴェノさん。


ていうか、服装で人違いって分かってほしい。



「ガレリアンさん、どうせだからトランプやりませんか?」
「それいいねリリアンヌ!僕も参加する」
「なら私もやります。着物の仕立てばかりだと疲れますし」
「じゃ私もー。ブランケンハイムの名にかけて参加する!」
「マルガリータ。それ関係ないわよ。私もトランプやりたい」


私をおいて和気藹々と盛り上がる女性達。
バニカってツッコミ役ですか?


「…と、いうことだが。どうする?ガレリアン」


ヴェノさんがこちらを見てくる。


「俺も参加するが」


全員参加っすか。



「…みながやるというのなら、私も参加させていただこう」
「そうこなくちゃな。」


ということで…
なぜか、私は新しくできた仲間と、トランプをすることになった。
どうしてこうなった。




…あ、最後に言っておきますが…



ここは一応、地獄ですよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【七つの大罪】ガレリアンと愉快な大罪者【二次創作】

最近、ギャグ書いてないなーと思い息ぬきで書きました。
大罪メンバー勢ぞろいですね。

納得いかない部分があるので書き直したいと思います


2012.11.07 追記
タグ増えとるがな。

閲覧数:9,526

投稿日:2012/05/03 18:13:31

文字数:4,957文字

カテゴリ:小説

  • コメント7

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  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    ホントだwwwwwww爆笑誘発成分が増えてやがrぶほあぁwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
    げほっ、げほっ!笑いすぎてミカンの果汁が鼻に逆流した(汚えよ

    ちょブクマ25とかwwwそんなんイラストでしか見たことねえwwwwwテキストでそんなん見たことないわ……さすがゆるりーさん、尊敬を超えて恐ろしい…!

    2012/11/03 13:54:25

    • ゆるりー

      ゆるりー

      なんか納得いかなかったので書き直しちゃいました…w
      みかん!?大丈夫ですか!?

      私も見たことありません…
      「どういうことだ」というのが私の感想でした←
      多分もうこれ奇跡です…

      2012/11/07 19:05:56

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    あれ? 久しぶりに読んだら、色々と付け加えがされてるような……
    それにしてもブクマ数凄いねww25とかwww

    2012/11/01 17:32:32

    • ゆるりー

      ゆるりー

      付け加えちゃった、テヘ☆(((((殴←
      「25ってなんだよwwwなんだそのブクマ数凄すぎだろwww」って自分でも思ったwww

      2012/11/01 19:02:14

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    このシリーズいつも楽しませていただいています!

    うん、こんな地獄だったらジャンジャン悪いことして堕ちてみたいww

    例えば―――
    あいつの首の肉を食ってみたり
    俺を振ったあいつを(自主規制)してみたり
    気に入らない天才どもを次々首討ちにしてみたり
    俺の彼女をかっさらいやがった奴を嫉妬で斬ってみたり
    勉強も何もかもほっぽり出してゴロゴロしてみたり
    金のためにすべてを動かしてみたり

    うーん…ここまでやったらこんなほのぼのはできないかな?原罪者いないし…。

    2011/12/12 01:10:58

    • ゆるりー

      ゆるりー

      メッセージありがとうございます!

      こんな地獄だったらいいですねw

      そうですね――ってなんか凄いことになってますけど…w
      逆にほのぼのできないですw

      読んでいただき、ありがとうございました。

      2011/12/12 16:08:57

  • 雪葉

    雪葉

    ご意見・ご感想

    何このほのぼのな雰囲気wwwこれならありがたく地獄に落ちたいwww
    ブクマ決定だな、あれもこれもそれも。

    2011/11/02 21:00:38

    • ゆるりー

      ゆるりー

      雪葉さん、メッセ&ブクマありがとうございます!
      そしてユーザーフォローもありがとうございます!!
      嬉しすぎてはしゃいでその辺に腕をぶつけました。痛いですww

      こんなに地獄でほのぼのしてる人はいないんじゃないでしょうか。
      このあと、きっとリリアンヌは大富豪でぶっちぎりの一位ですw

      ブクマありがとうございます。
      あ、あれもこれもそれも…?
      え?←

      2011/11/02 21:32:26

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