「カイトー、今日もお願い」

「今日もすか…ていうか先輩そのオトコいくらなんでも粘着がすごすぎな」

「だからあんたに頼んでるんじゃん〜代わりにご飯と布団は出してるし大学近いし悪くないリターンでしょ」

「まあそうですけど」


事の発端は数ヶ月前。


彼女に珍しく頼られ詳細を聞くと何でもかなり前のオトコに今更粘着されて困っている、と。

そのオトコのことはメイコさんから振ったらしいが、それがそのオトコの自尊心にでも触れたらしい。

だからしばらく彼氏の振りをしてメイコさんの家で寝て欲しいと。


…いやどう考えてもいろいろおかしくない?


ちなみに頼まれるようになってから結構経っている。
確か新年開ける前からじゃねぇかな。年越し何だかんだ一緒に過ごしたし。

自室にはたまに帰るがもうほぼ同棲状態じゃん…と思いながらサークル内仲のいい先輩後輩の関係を至って健全に続けているのはもう俺も意味がわからない。

ていうかメイコさんならさっさと新しいオトコ作って粘着元カレ追い返せるでしょ。
俺がお世話になっている布団はどうも元カレが使っていたやつらしい。本当に死ぬほどデリカシーない。何がクリーニングしたからだよ。メイコさん強すぎない?

先輩にそんなこと言える勇気も力もありゃしないけど。

「なぁなぁ、ぶっちゃけお前とメイコ先輩ってさ…」

「圧倒的に驚く程何も無いから」

「ソフレって実質セフレみたいなもんなんじゃないの」

「まずソフレじゃないし。フレンドじゃないし。あと俺メイコ先輩の夜間警備役みたいなもんだからね、布団違うし」

しいていえばこれのせいでもう半年は彼女出来てないし波動も無い。

そこに関するフォローも特には無い。
圧倒的に慈悲、無い。

「マジか…そういやお前誕生日だよね?」

「そうだけど」

「鍋パしねえ?」

「すごい、行ける気がしない」

慈悲の無い彼女のことだ、きっと御構い無しだろう。
繰り返すが俺は後輩だ。
逆らえる権利なんてあるはずが無いのだ。

「マジか。誕生日さえ無理か」

「無理っぽい、というかおそらく無理。気持ちだけいただくわ」

「お前の誕生日にかこつけてウェイウェイ出来ると思ったのに…」

「クソ大学生かよ」

気持ちはわかるよ。
俺もウェイウェイしたい。でももうここ数ヶ月出来てないけど。
もちろん合コンも行けてません。夜に飲みに行けるのはメイコさんもいるサークルの飲みくらいだ。

いや奴隷かよ。

それでも本日もバイト後向かわせる足は彼女の家の方向だが。

もうわかってるのだ、彼女の前では自分に選択権など無いということを。

「お邪魔しますー」

いくら入り慣れてても先輩の家にただいまと言う勇気は無い。

「あっカイト遅いねー」

「今日誕生日で祝われてたんで」

「誕生日なんだ おめでとー」

「緩くないっすか?まあありがとうございます」

「嬉しくなさそうで笑うわ」

「いや誕生日も貴女の家の夜間警備役ですからね、いつも通り」

「あー、そんなにそれ嬉しくない?」

「まあギリギリまで寝れる等リターンはあるから別にいいんですけど」

「ふぅん」

良くも悪くもいつもの彼女だ

まあ何も期待してはいない いつも通りのサークルの仲の良い先輩後輩だ

「ところで今日のご飯って…」

「カイトの馬鹿」

「えっどうしました?俺がいない間に粘着にでも絡まれ」

「ばか」

「いや話の展開がわからな」

「ばか」

「俺何かしまし…」


「気付かないかなぁ」


「だから、元カレに粘着されてるってのは最初から嘘で全く女気のない君の気を引きたいだとかどうにか君の理性が崩れてくれちゃってこの安泰が崩れてくれないかだとかさ」


「一日くらい君の硬い硬い理性の殻が剥がれて誰も知らない君の本性を覗き見した挙句独り占めしたいだとか」


「今こうやってネタばらしをしているのがとても癪だとかさ」


そう言いながらヤケになったのか彼女は安物のワインを勢い良く開け始める

「…そろそろみっともない酔っ払いがここに誕生するわ、悪いけどこれはあんたの誕生日プレゼントにはみっともなさすぎるから今からでも帰りなさい」

「気付かないあんたも大概悪いと思うけど、気付かない確率のほうが高いのが当たり前なのにこんなことした私も大概ね。」


…?

音がした気がする。
糸が切れるみたいな。


重なってがちゃりと無機質ばかり大袈裟な音。

「…これで満足ですか?」

間近に少し鼻に付くアルコールの匂い、2つの濡れたガラス玉、誰かの息。

「悪いわね、みっともない女で。忘れていいわ」

「思ってないくせに」

「年下のくせに生意気」

「年下にそれでも襲われたかったんでしょ?」

「…五月蝿いわよ、どいてちょうだい」

「そういえばまだ俺先輩からプレゼント貰ってないです」

「また後日渡…」

「俺今先輩が欲しい気分なんですけど」

「馬鹿言わないで」

「気が変わったんです、あんなにあんたが可愛いなんて知らなかったんで」

「随分都合良いわ…」

彼女の頰に軽くキスをする

それだけでもう顔が赤くて、こんなにいじらしくて可愛い生き物俺は他に知らない

「ほら可愛いじゃないですか、俺に襲ってほしいだなんて思っておきながらいざそういう状況になると頰の接吻だけでこんなに色を変えるところとか」

赤くなったまま言葉を発しない彼女は普段からは想像も出来ないくらい、紛れもなく『女の子』だ。

「で、あんたは結局どうしたいんですか」

「だから早く帰りなさ」

「…嘘です。今更貴女に拒否権なんてあると思いましたか」

先に誘惑したのは誰だったか。

あくまでもこっちは罠に引っかかったサイドなのだから何も後ろめたいことは無いだろう。

悪いのはあの人なのだ。

もう一度強く腕を抑えながら深く彼女の口内に潜る

今更効いてきた暖房のせいだろうか、やけに暑くて喉が渇く

彼女の潤んだ瞳に映っていた時計の針は確か日付が変わる頃だった気がする

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【KAITO誕】23:49【カイメイ】

遅刻どころではない。(確信)
初めてKAITO誕書けた〜〜〜!!!今何月だ〜〜〜?5月か〜〜〜〜!!!!!そうか〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

自分で書いてて「えっちすぎないか?」「頭がおかしすぎるのでは?」となりなかなか進みませんでした。
というか兄さんの誕生日はストレートに祝う想像が出来なかったごめん。でもいつも祝ってるから。ちゃんと祝ってるから。今年もビニスイーツ買ったから。

カイメイ愛に磨きがかかってます。
今年のマジカルミライは大好きな私がカイメイに落ちるきっかけになった楽曲on the rocksやるらしいので行きます。
この世は最高。

兄さんお誕生日おめでとう〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

閲覧数:276

投稿日:2018/05/04 23:00:13

文字数:2,512文字

カテゴリ:小説

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