バットが姿を消して【TABOO】は分裂状態になっていた。主だった奴等は菖蒲の元【Yggdrasil】に協力体制を取っているが、一部では不安を理由に離脱する者、【MEM】に捕獲された者、助かった奴等からBSを密かに治療して欲しいと頼みに来る者、少しずつ綻びが生まれていた。

「使土?」
「ごめん、俺、先帰る…。」
「お兄ちゃん?」

【Yggdrasil】を嫌う訳じゃない、木徒だって居るし、何より皆を守ってくれている。あの場所には『安心』がある…。なら俺達は?バットが…啓輔が居なくなっただけでこんなにも容易く崩れる物だったのか?俺が木徒を突き放してまで守ろうとしたのはそんな脆い物だったのか?

「…あ…れ…?あいつ…。」

遠目に小さな花束を持ったレンチ女が居た。だけどいつもの煩いまでの元気は無くて、心此処に在らずと言った様子だった。

「おい!レンチ女ー…おい!…えっと…白雪りんご!」
「えっ?!あ…使土君…。」
「車に轢かれるぞ、どうした?ボーッとして。」
「あ…うん、今からネムリのお見舞い行こうと思って。」
「ネムリ?ああ…。」

言い掛けて口を閉じた。コンサート爆破事故の時こいつを庇ってBSになったと言う友達だったか。

「なぁ…その、ネムリってBSになったんなら怪我治ったんじゃないのか?なのに
 どうして見舞いが要るんだ?」
「…あんなのネムリじゃない!」
「え?」
「怪我は確かに治ったよ?!だけど…だけど…!」

泣きそうな顔だった。涙は零さなかったけど。何かを必死で堪えてる、おそらくたった一人で。

「俺も行って良いか?見舞い。」
「え…?」
「お前が元気無いなんて気持ち悪い、槍でも降りそう。」
「ちょ…!失礼過ぎ!そんなんじゃモテないよっ?!」
「余裕出来た?行くぞ。」
「何よ…バカ…。」

罵りつつも手は繋ぐのかよ…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -77.亀裂の狭間で-

気付けよ…。

閲覧数:154

投稿日:2010/06/25 18:51:59

文字数:781文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

もっと見る

クリップボードにコピーしました