夕方。
 パタパタと廊下を歩き、リンはレンの部屋のドアに手を掛けた。
 ガチャっ

 「レン~」
 「っいきなりノックもしないで部屋に入ってくんなよバカリン!!」
 「ぴゃあっ!ご、ごめん!」

 ドアを開けて部屋に入ると、突然レンの怒声が振って来た。
 反射的に悲鳴を上げて謝罪の言葉を言うと、レンはフンッとリンに背を向けてベッドに寝転がる。
 そんな彼にビクビクしながら、リンは用件を口にした。

 「そ、そろそろ夕飯だからリビングに来なさいって、カイト兄が言ってたよ?」
 「もう外で食べてきたからいらない。」
 「えっ…」
 「用件はそれだけか?だったらさっさと部屋から出てけ。」

 次の日の朝。
 「ふぁ…あ。おはよーレン」
 「…っ」
 「レン?」
 「……朝っぱらから煩い。喋りかけてくんな。
 それから乱れてるパジャマちゃんと整えろ。
 見たくも無いリンの貧乳が見える。」
 「んなっ…!?」

 夕方。
 「レンー」
 「……!!」
 「お風呂上がったよー。次どうぞ!」
 「もっもう入ったからいい!てか早く髪乾かすか何かしろよ!!」
 「えぇ?だってお風呂上りって暑いんだもーん。
 もうちょっと湯冷めしてからドライヤーしないと、折角キレイに身体洗ったのに汗でべたべたになるじゃんか!」
 「だったら早く自分の部屋に行け!とりあえず俺の部屋から出てけ!!」

 夜。
 「ねぇレンー…今日一緒に寝よー?」
 「ふざけんな。」

 冷たく返された返事に頬を膨らませ、楽譜から目を放さないレンを恨めしげに睨む。
 いつからか、レンはとても素っ気無くなってしまった。

 ―リン何かしたかなぁ…―

 落ち込む心で自問自答し、項垂れる。
 心当たりがありすぎて怖い。リンはお気に入りのクッションを抱き締めながら、大きなため息を吐いた。

 「…俺の周りで盛大なため息吐かないでくんない?鬱陶しいから。」
 「あぅ…ご、ごめんなしゃい…」

 素直に項垂れながら謝ると、レンがチラリと一瞬だけ視線をリンへと移動させた。
 だが直ぐに楽譜へと戻る。そんな彼を寂しそうに見つめながら、リンは勇気を振り絞って口を開いた。

 「ぁ、あの…レン…?」
 「何」
 「……リン…何か、レンを怒らせるようなこと…した……?」
 「…は?」

 何言ってんのコイツ。と言うような怪訝な表情で、レンは涙目になっているリンを見遣った。

 「だ、だってっ…何かレン、最近凄い冷たいんだもん…怒ってるみたいだし…」
 「………別に怒ってないし。」
 「お、怒ってるじゃんかぁ!…眉間に皺寄ってるし最近笑わないしぃ!!」
 「毎日毎日ヘラヘラ笑ってる方がおかしいだろ。」
 「そうだけどっ…でもっ……」

 ついに大きな瞳に溜められていた涙が零れ落ちた。
 それを見たレンは一瞬目を見開き、盛大なため息を吐く。
 そんな彼をどう解釈したのか、リンはボロボロ流れてくる涙を止めようと、必死に擦り始めた。

 「…おいリン。あんま目ぇ擦んなよ。赤くなって腫れるだろ」
 「ふぇっ…だってだってっ……」

 止まらない涙にリンは目を硬く瞑る。
 そんな彼女を見て、今度はふぅ…と小さく息を吐いた。
 徐に椅子から立ち上がり、ソファに縮こまって泣いているリンに近付く。
 近付いてきたレンに気付かずに、リンは流れる涙を必死に止めようとしていた。
 距離が充分に縮まると、レンはリンが座っているソファの前で膝立ちになり、手を彼女へと伸ばす。

 「!」
 「…ほれ見ろ。目ぇ真っ赤じゃんか。」

 顔を覆っていた手を掴んで顔を覗き込むと、レンが忠告した通りになったいた。大きな瞳は赤く腫れ上がっている。
 リンは久しぶりに彼の顔を至近距離で見られた事の嬉しさから、更に瞳を潤めた。

 「ひっく……れん~…」

 涙声と甘え声が混ざり合った不思議な声音に、レンは一瞬身体を強張らせる。
 そんな彼の反応に珍しく気が付いたリンは、涙目のままこてんと小首を傾げた。

 「……っ!…おま……何でそう…~~~~~~っ」

 自分の前髪をくしゃっと握り、レンは今日一番大きなため息を吐いた。
 心なしか顔が赤くなっている。リンは不思議そうな顔をして、レンの頬に触れた。

 「っ!!」
 「レン顔赤いよ…?どしたの?」

 顔を近づけてきたリンに、レンは目を見開く。

 ―プツン。
 何かが切れる音がした。

 「…人が折角我慢してたってのに……」
 「? なぁに?レ…」

 唇に柔らかい感触。一度離れたと思えば再度押し付けられた。
 状況を理解するのに数秒時間が掛かったリン。
 大きな瞳をパチパチさせ、徐々に頬を染めて行くリンを見て、レンは口を開いた。

 「…アホリン。無防備すぎる。そんで鈍感すぎる。」
 「…………」

 ムスッとした表情を浮かべてはいるが、レンの頬もリンと同じように赤くなっているのでまったく迫力がない。

 「…え、えッ…?…今のって…」
 「チューしましたが何か」

 あっけらかんと答えたレンに、リンはボフンッっと勢い良く顔を赤面させた。

 「何だよ」
 「レ、レン…リンのこと嫌いになったんじゃなかったの…?」
 「やっぱり勘違いしてやがる…。
 俺の気持ちに全然気付かないでパジャマ乱れたままで無防備に近寄ってきたり風呂上りの濡れた身体のまま部屋に入ってきたりしやがって!」

 赤い顔で一気に捲くし立てたレンを見ながら、リンはポカンとしていた。
 そんな彼女に構わずレンは続ける。

 「あまつさえ一緒に寝ようだぁ!?いい加減にしないと本気で襲うぞバカリン!!
 ………俺が……どれだけ我慢してたと思ってんだよ………!」

 絞り出したような声は震えていて、俯いている顔は見えないが耳まで真っ赤なのが分かる。
 徐々にレンの言葉の意味を理解していくと、リンは目を大きく開いて頬を桜色に染めた。

 「……………ね、レン」
 「なに……っ!?」

 顔を上げたレンが最初に見たのは、ドアップなリンの顔。
 そして、唇の辺りから聞こえた可愛らしいリップ音。それは、リンの唇がレンの唇に触れた音であった。

 突然のリンからの口付けに目を丸くして硬直する。
 それから先ほどのリンのように、レンはボフッと勢い良く顔を赤面させた。

 「~~~~~っ!!?」
 「…あの、ね レン。リンはレンにだったら、何されても良いんだよ?」

 大好きだから…そう呟いて、リンは未だ顔を真っ赤にしたまま口をパクパクさせているレンにギュッと抱きついた。
 
 ―嫌われた訳じゃなかったんだ…良かったぁ―

 抱きついたまま微笑むリン。
 大分落ち着いてきたレンは、恐る恐るリンの背中に腕を回して呟いた。

 「…り…リンがそう言うなら……もう我慢しないからな?好きにするんだからな!?」

 そう断言すると、遠慮がちだった腕に力を入れてギュウッとリンを抱き締めた。
 抱き締められたリンはとても嬉しそうに笑う。

 「レン、だーい好き!」
 「お、俺だって…!世界で一番リンが大好きなんだからな!!」

 此処に今、鏡音バカップルが誕生したのだった。




終わっとけ。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

思春期なんです。

お読み下さってありがとうございましたm(_ _)m
グッダグダで申し訳ない;
小説作成スランプ中に無理やり書き上げたものなので見苦しいですね( ̄▽ ̄;)
無理やり終われせた感がヒシヒシ伝わってくるし。←
本当にすみませんでした。
こういう初々しい?可愛らしい?なレンリンもたまには書きたくなるのです。
まあレンリンならヤンデレだろうがツンデレだろうがアダルト(…)だろうが
大好きだけどね(笑)

閲覧数:1,735

投稿日:2010/09/20 06:50:26

文字数:2,989文字

カテゴリ:小説

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