「レェーーーンっ!」


私は最近出会って仲良くなった少年の名を呼んだ。
それなりの音量を出した私の声が、時計塔の中を床から天井までを駆けていく。
グワングワンと少し反響した後、聞き覚えのある声が返ってきた。


「おー、いらっしゃーい」


―――なんだ、“いらっしゃい”って。レンの家かよ。

心の中で、レンの間延びした言葉につっこみながらも、少し安心する。

レンは、居ない時もあるから。



レンが居るのは不定期で、居る時3で居ない時2くらいの3:2って感じ。
でも私はレンと会話をするのが好きだから、毎日この時計塔に来るんだ。

レンの声が返ってくることを祈って、毎日毎日。



――そんな不確かな声にしがみ付くんだ。





【シンデレラシンドロームⅢ~協同解釈~】






「…でさー、ミクってばひどいんだよ、親友の私と言うものがありながら彼氏の所に行っちゃってさー!」

「…いや、普通そうだろ?」

「…ですよねー。でも、ミクが幸せそうな笑顔でクオの所に駆けてくんだもん。ちょっと妬けちゃう。でもね、ミクが笑顔ならそれでいいかなって!」

「リンは、友達思いなんだな」

「!!…っそ、そんなことないです…」

レンは聞き上手だ。そして相手を乗せるのが上手い。
だから、ただでさえお喋りな私は最近あった他愛もない出来事から胸の内に潜んでいるモヤモヤした物まで何でも話してしまう。
でも、それが嬉しいんだ。
レンがしっかり受け止めてくれるから。
それは、些細な事でもとても幸せなこと。

私の中で、レンとの時間は、とてもとても甘い時になっていった。


時間はあっと言う間に過ぎていき、いつしか文化祭の話になった。

「――だったんだよ!あ、レンの学校の文化祭も行きたいなー」

純粋に、興味を持っての質問だった。

でもレンは言葉を濁して、

「……。」

黙りこんでしまった。


……気まずい沈黙が流れる。


レンとのおしゃべりでそんな雰囲気になるのが嫌で、私は必死に言葉を探すも、何処かでレンの事が知りたい、と言う気持ちがあったのか、言葉が出ないまま時間だけが過ぎていく。


レンがゆっくりと口を開いて何か言おうとした時だった。


ゴーン ゴーン ゴーン


―――12時の、鐘だ。



レンはハッとしたように我に返り、「もう12時だから帰りなよ」と早口で言った。

私はレンに押されるようにして時計塔を出る。


回転扉が閉まる直前に急ぎながらレンに言った。

「あの、私、もっとレンの事知りたいの!」

ゆっくりと閉まっていく扉と、切なそうに歪むレンの顔。


「――ごめん。」


バタン。


重そうな音を立てて扉は閉まった。


――レンは、私の事嫌いなのかなぁ…

魔法が解けたかのように甘い気持ちが冷めていく。

何故か、胸が軋んだように痛かった。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

シンデレラシンドロ-ムⅢ【協同解釈】

忘れた頃に投稿でごめんなさいorz

カラスヤサボウさんのシンデレラシンドロームを亜梨亜さんと協同解釈したものです(`・ω・)b
なんか本家とずれまくってる気がしますが気のせいです(`・ω・´)←

「どんな話だったか忘れたからその前の話読んでやるぜ!」って言う素敵な方は下のURLからどうぞ。


前奏でマイリス確定な本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13673226

自分が書いたシンデレラシンドロームⅠ↓
http://piapro.jp/t/2qMA

亜梨亜さんが書いて下さったシンデレラシンドロームⅡ↓
http://piapro.jp/t/fMzv

閲覧数:1,072

投稿日:2012/03/24 20:42:59

文字数:1,209文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

もっと見る

クリップボードにコピーしました