街中でイルミネーションが点り、豪華な料理が出てプレゼントをもらう。子供は朝起きると綺麗にラッピングされたプレゼントが置いてあり、サンタに感謝する。
十二月二十五日、クリスマスの事だ。
……どうしよう。
気づけは二十六日、クリスマスは過ぎていた。
売れ残りのケーキが安くなっているのを見て、やっとクリスマスの事を思い出した。ここ数年クリスマスを祝うなんてしなかったし、最近忙しかったせいだ。
別に自分としてはどうでもいい。クリスマスを祝おうと忘れようと関係ない。
しかし。
あいつらはどうだろう。まずクリスマスの存在を知っているのか疑問だ。…普通に考えて知らないだろうな。
でも知っていたならば。やっぱり、ちゃんとケーキを食べたりとかしたかっただろうか。
む…。
一応ケーキ、買っておいた方がいいだろうか。それとプレゼント…アイス、か?
……過ぎてるけどクリスマス、やってみるか。


家に帰ると真っ先にケーキの箱に興味を持たれた。箱に入っているからこんなに興味を持たれるとは思わなかった。もしかしたら単純に箱に興味があっただけかもしれない。
とりあえず皿にケーキを盛りつける。カットケーキ二つ。自分の分と、モカとコウは二人で一つ。まぁサイズ的に足りるだろう。
ショートケーキとチョコレートケーキ。好みがわからなかったので二種類買ってきたのだが。
お前ら、どっちがいい?

「…みーみみみ」

間を置いてコウが何か言う。
…なんだって?

「………………チョコ…食べたい、けど……イチゴも欲しい………そう、です…………」

ふむ。
モカはどっちがいいんだ?

「………………どっちでも……いい、です………」

じゃあイチゴあげるからチョコにしろ、モカはそれでいいか?
こくりとモカが頷いたのでチョコレートケーキの横にイチゴを添えて目の前に置いてやる。
キラキラと目を輝かせながらコウが飛び掛かった。あぁ…どろどろだな…後で丸ごと洗うか……。
面倒でもそうするしかない。フォークはデカすぎるし。それこそ食べさせるのは面倒だ。
両手でスポンジを毟って食べている姿を見ていると、まぁいいかと思えてくる。
普段のアイスを自力で食べてくれれば、たまにだし、良しとしよう。

「みーっ」

身体中に黒い生クリームをつけながらコウが叫ぶ。心なしかモカもいつもより食べる速度が速い。
なんだかやけに嬉しそうだ。
そんなに美味しいのだろうか。
…待てよ。
もしかしてこいつら、ケーキ初めてか?
ホットケーキなら何度か作った。二人のお気に入りだ。でもケーキは初めてかもしれない。なにせ買った記憶がないし、作った記憶もない。むしろ食べただろうか。
考えても思い出せない。アイスの記憶ばかりだ。
…そうか。ケーキ、初めてか。
だとするとこのはしゃぎようもわかる。
カットケーキとはいえデコレーションはされているし、スポンジも初めてだ。確かにテンション上がるだろう。
コウがクリームだらけになりながら口の中にケーキを詰め込む。頬袋でもあるみたいだ。
遠慮してると全部食われるぞ?
モカにいうと、クリームのついた手を舐めながらじっと見つめられた。

「………………なんで…ケーキ……」

モカはそこで言葉を切った。
なんでケーキを買ってきたのか、ということだろうか。
クリスマスだったんだ、昨日。
モカの頭の上にクエスチョンマークが浮かんだのが見えた気がして笑いそうになった。
クリスマスっていうのは、イエス様っていう…まぁ偉い人だな、の生まれた日で、クリスマスはイエス様の誕生を祝う日なんだ。
別にキリスト教を信仰しているわけではないが、クリスマスは祝う。…日本人ってそんなものだよな。偏見かもしれないけど。
それでクリスマスにはケーキを食べてプレゼントを交換するんだ。

「……………プレゼント……」

そうだ、プレゼントだ。
説明とモカの呟きにその存在を思い出し、冷蔵庫に向かう。冷凍庫から馬鹿でかいアイスを持ってきて机においた。
黒いクリームに塗れたコウが何事かとこっちを見た。それでも口をもごもごと動かしている。というか、どれだけ食べてるんだお前。一気にケーキが無くなったぞ。

「………………これ……」

アイスだ。
たまにある、自分で欲しい分だけ取り分けるでかいやつ。冷凍庫に入るか心配だったが、ぎりぎりだったな。
不思議そうにアイスを見る二人に言う。
一日過ぎてるけど、クリスマスプレゼントだ。

「みみ?」
「………………本当に…?」

嘘ついてどうするんだ。…プレゼントなんて改まって何か貰った事なんかないか。そう考えると仕方ないな。
これ丸ごとお前らのだ。二人で一つになるけど、喧嘩するなよ。
滅多に買わない高いアイスが普通かもしれないが、普段食べているアイスの多くがだっつだったことを思い出し、止めた。
珍しさを追求した結果、一人では絶対買うことのないでかいアイスを買ってみた。
二人の反応を窺っているとコウが跳びはね、叫んだ。

「みー!!」
「………………ありがとう、ございます……」

おお、モカが笑った。コウは文句なしの笑顔。
とりあえず、買った分に見合う反応だ。あげる方としても嬉しい。
クリスマスなんて年に一回だし、たまにならばこういう贅沢をしてもいいのかもしれない。
後はサンタだけだが…これは諦めてもらおう。来年、覚えていたらだな。

「…………マスター…」

怖ず怖ずと、モカが口を開く。
モカもいつの間にかチョコクリームだらけだ。ただし元が茶色なのであまり目立ってないが。

「………………………一緒に……」

……一緒に?

「………………一緒、の、布団で……寝たい、です………」

言うとモカは恥ずかしそうに俯いた。
以外な言葉に戸惑う。
いつもは同じ部屋で寝ているものの、確かに一緒の布団で寝たりはしない。何故ならはモカとコウが小さくて潰してしまいそうだからだ。
一瞬断りそうになったのを思い留まり、考える。
モカが何か頼んでくる…この場合我が儘だろうか、なんてほとんどない。こういう我が儘を言われるのはむしろ初めてかもしれない。
そう考えると無下に断りにくい。
……クリスマスだしな…。
心の中でため息をついて、了承する。
ぱぁ、とモカの表情が明るくなった。

「…………ありがとうございます……!」

………初めてこんなモカのしっかりした声を聞いた気がした。
もしかしたらずっと前から言いたくて言えなかったのかもしれない。
ちょっとした罪悪感を感じて頭を撫でてやる。クリームがついたが気にしない。
嫌じゃないのか、モカもされるがままになっていた。
コウが自分も撫でろと五月蝿いので撫でる。やっぱりクリームがついたが無視。というかクリームすごいなお前。

その夜、初めて三人で寝た。
朝起きて潰れていたらどうしようかと思ったが、大丈夫と言い聞かせる事にした。
そんな心配をよそにモカとコウはとっとと眠ってしまった。幸せな奴…。
実際、ものすごく幸せそうだが。
…クリスマスとはいえ、少々甘すぎやしないか、自分。
なんだかんだときっと親バカなんだろうな、と思いながら、眠りについた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種29(亜種注意)

滑り込みセーフ、か?
今日中に上げなくては無駄になるネタを書きました。間に合わないかと思った…。
最後の方乱暴ですみません。察して下さい。

さくさく書くって言った結果がこれだよ!ちゃんと書いてるのに師走が駆け抜ける速度の方が速いよ!



モモイト君はクリスマスプレゼント貰ったかな?
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on

閲覧数:454

投稿日:2009/12/26 23:58:47

文字数:2,951文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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