~~~~~ルカさん視点~~~~~


ネルの空間操作によって作り上げられた階段を駆け上り。


かなりあ荘の階段を駆け上って。



2階についてみると―――――





そこには、大きな荷物を抱えた黒い服に身を包む男がいた。



『ドロボ―――――――――――――――ッ!!!!!!!』



全員がびしりと指さし叫ぶと、男は驚いて懐から何かを取り出しこちらに向けた。―――――拳銃!!



「動くんじゃねえええええ!!!!!」

「ひっ……!!」



しるるさんやゆるりーさんたちはもちろん、イズミ草さんやTurndogも固まってしまう。

まずい。これは的になる!!


引き金に指がかかり、力が込められる。


「リン!! レン!! 護りなさい!!」

『ラジャ!!!!』


次の瞬間、銃声がかなりあ荘に連続で響いた。

全6発。それらは全て―――――リンとレンが一発ずつ、私が4発しかと受け止めた。よし、誰も喰らってない!!


それを確認した瞬間―――――私たちの横を、一瞬で通り過ぎてゆく影が二つ。



Turndogと、イズミ草さん―――――!!

まさかの銃弾全発防御に腰を抜かした男に向かって、一直線だ!!



「すりゃああああ!!!!!!!」



Turndogの竹刀が男の右肩を砕く。


そして――――――――――



『胴ォォォォ!!!!!』



イズミ草さんの鮮やかな―――――『逆胴』が、男の左脇腹をくの字に曲げた!!


「ぐげぼぉっ……」


汚らしい声を上げて男が倒れ込み、背中に背負った荷物から盗品が転がり落ちた。


その中から、ゴツンと硬い音を立てて―――――鰹節が転がり落ちた。


「げっ!!!?」

「あ……」

『うわわ……!!』


その瞬間、Turndogとしるるさんとゆるりーさんと雪りんごさんの顔が引きつった。

それが何を意味するのかは―――――私達にも伝わってきた。


後ろから感じる、凄まじいまでの殺意…………!!


「ぐ……小僧ども……ただで済むと思うんじゃねーぞ……!!」


男が腹を押さえながら立ち上がるが、Turndogは憐みの目を向けていた。


「あーあ……もうどうなっても知らねーぞ……」

「は? ふざけてっとぶっ殺すz――――――――――」




最後まで言い終わる前に。


パキン……と音がして割れた緑色のブレスレットが床に落ち。



次の瞬間には、どっぐちゃんが男の腹に、犬化した拳を叩き付けていた。


「ぎごぶっ!!!!?」

『よぐも……あだじの鰹節ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」


そのまま右手の爪を首に打ち込んで押さえつけ、左手の爪と拳で男をズタズタに嬲っていく。おお、こわいこわい。


……って!! さ、流石に止めないとかなりあ荘が血で染まっちゃううううう~~~~~~!!!!





~~~~~Turndog視点~~~~~



『ガウウウウウウグルルルルルルルルォォォォオアアアアアアアアア!!!!!!』


未だ吼え狂うどっぐちゃんをがっちりと抑え込んでいるのは、慌てたリンとレンが呼んできたメイコだ。ダンプを吹っ飛ばす腕力の持ち主を抑え込めるのは、やっぱメイコしかいないな。

隣ではネルが砕けた緑のブレスレットを修復していた。……と言っても後数秒で完成しそうだけど。


「よっし、できた!! メイコさん、ちょっとどっぐちゃんの腕をこっちに向けてくれる?」

「はいはいー。おら、腕よこせ!!」

『グルルルアォォォォ!!!!』


抵抗するどっぐちゃんの、犬化した腕をネルの方に向けると、静かに緑のブレスレットが通された。

途端に狂気が抜けていく。逆立っていた全身の毛や尖った耳が元に戻ってゆき、腕も人間の者へと戻っていく。


「……あれ? あたしどうしてたんだっけ?」

「暴走してたんだよ……鰹節盗まれて。まったく、少しは落ち着けってんだよ。どーすんだよあれが死んでたら。過剰防衛でおまわりさんこいつですになっちまうぜ」


ぴっと指さした先には、顔面を紅に染めた泥棒野郎が縛り上げられていた。ルカさんがどっぐちゃんを引き剥がすのがあと一歩遅かったら、こいつは今頃三途の川をどんぶらこしていただろう。


「……まぁ、今回は相手が相手だから、特別に許す。だが次やった時は、全身くすぐりの刑だからな?」

「ひぃ!!?」

「あ、じゃあそれ私にやらせてもらえます?」

「オッケゆるりーさん、そん時は丸一日貸し与えてあげよう」

「よしどっぐちゃん今すぐもいちど暴走よ!!」

「やあああああああああああああああああ!!!!!」


顔面蒼白でメイコの後ろに隠れるどっぐちゃん。暴走してんのはあんただゆるりーさん。




「それにしても、先輩もターンドッグさんもすごかったですよ!! あんな勇敢に向かっていって……!!」

「いやいや……そんなすごくないって。事実、あいつが拳銃構えた瞬間足竦んじまったし。あの場で唯一の男だったってのに我ながら恥ずいぜ……」

「でも、ターンドッグさんはルカさんやリンちゃん達が銃弾を受け止めた後すぐに飛び出したでしょ? 私はそれにつられて飛び出しただけですよ……!」


そういうのはイズミさん。ちょ、イズミさんにそんな高評価されるとか貴重やん。


「あの時、なんで飛び出せたんですか? やっぱりただ一人の男っていう責任とか?」


つかさ君が追及してくる。

……そんなの、簡単なことだ。


「一つは……突撃する直前、思い出しただけさ。俺たちには、銃弾をも素手で受け止める天才刑事と奇跡の双子がついてる……何も恐れることはないんだってことをね」


隣でルカさんとリンが赤面しながらはにかんでいる。やっべ可愛い……おっと。
(ちなみにレンはそっぽを向いていました)


「もう一つは……試合のままの感情でいたからかな。……俺はまだ死にたくない、相手を倒さなければ生き残れない。強い人とやる時はいつもその感情を抱えて戦っていた。その状態のままだったから、思わず足が動いてたって感じかな?」

「へぇ~……!」


感心したような表情のつかさ君。


……ホントはもう一つ理由があったんだけど、こんな雰囲気じゃ言えない。



奴と対峙した時、後ろから来たイズミさんが竹刀を捨てていなかったから勇気づけられた……なんて、一気にカッコ悪くなって言えないじゃないですかやだー。



「でもまぁ、決定打はイズミさんの逆胴でしたけどね!! いやぁあんな惚れ惚れするような逆胴初めて見たよ……あれ試合中に撃たれてたら間違いなくやられてましたねぇ。あはははは」


俺が馬鹿笑いしていると、イズミさんも軽く笑い始めた。

やっぱり、かなりあ荘にはこういう日常が一番よく似合うよな。


「……さて! 試合の続きやりましょうや!! 最後の勝負としゃれ込みまs」


「いえ、この試合はお預けにしましょう」



……はい?


「ターンドッグさんここまでの二本でへとへとな上、さっきの捕り物で完全にふらふらになっちゃってるじゃないですか。私はまだ一発技決めるぐらいの体力は残ってますし、こんな形で勝っちゃっても面白くないですよ!」

「え……いやでも」

「それに、今日はターンドッグさんに良いこと教えてもらったし! 生き残る意志……その覚悟を私が持つことができるまで、3本目はお預けにしましょ? ね?」


イズミさんが俺と同等の覚悟持っちゃったら絶対勝てないじゃないですかやだー!

とは言え、イズミさんの言い分も最もである。こんなヘロヘロを倒したところで、またロクに動けない状態で倒されたところで、消化不良にもほどがあるだろう。


「……わかりました。ではその時が来たら、決着をつけるとしましょう!!」

「ええ!」


しっかと握手を交わして、勝負は一時凍結となった。




「……あ、そろそろ私いかなくちゃ!」

「えっ!!? イズミさんもう行っちゃうんですか!?」


着替えを済ませ、荷物を抱えたイズミさんを見たしるるさんが悲鳴にも近い声を上げた。


「ホントに暇がちょっとできたから寄っただけなので……ごめんなさい」

「あ、いや謝られると逆にこっちが謝りたいというか……うん、また、寄ってくださいね?」

「もちろんですよ!」


しるるさんとも、ぐっと握手を交わす。この辺がこの人の人を引き付ける力なんかなぁ。


「また暇ができたら来ますから……その時また、剣道やりましょうね、ターンドッグさん!」

「ええ!その時にはせめて、もう少しましに動けるようにしておきますよ!」

『あははははははは………』


ひとしきり笑った後、イズミさんは『ばいばーい♪』と手を振りシアンの髪を揺らしながら去って行った。


「行っちゃいましたね……」

「そんな(´・ω・`)な顔しなくたって、半年もすりゃ絶対帰ってきますよ、しるるさん」

「うん……そうですよね!」


踵を返して、かなりあ荘の中に帰っていく俺たち。


「しるるさん、てぃあちゃんの歓迎パーティとかしないんですか?」

「うーん、イズミさんや他の皆さんがいない状態でやるのもちょっと……気が引けるかなぁ……」

「あ、私そんなの気にしないですよ!」

「いやでもやっぱりやった方が……」

「だったら、ネルの力で全員に連絡つけて、都合のいい日に徴収しましょう!ネルなら全員の電話番号暴くのなんてわけないですよ!」

『『うわぁ……ターンドッグさん悪党……』』

「えちょ、全員でツッコミとかやめて!?」

「でもそれしかなさそうですね。ネルちゃん、お願いできる?」

「おk!構わないわよ―」





そんなこんなで。


数日後、ネルにより今まで滅多に顔を出さなかったメンバーも、つい数日前に来たばかりだったイズミさんも引き戻され、全員で新しい入居者の歓迎をすることになるのだが、それはまた機会があれば……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町! Part8-4~TurndogVSイズミ草!!③剣士たちの正義の一刃

勧・善・懲・悪!!!!
こんにちはTurndogです。

なぜ子の不審者はいきなりかなりあ荘に忍び込まなければならなかったのか!?
理由は二つ。
一つはリビングのコメント276、私の『並の不審者ならフルボッコ決定ですねわかりますw』という一言。
もう一つは……試合を強制的に中断させたかったから。

『やっぱ試合するからには負けたくねーしなー俺一応男だし……だけど盛り上げるためには一本取られてから取り返すのがいいよな―でもそれだと俺疲れ果てて御仕舞だよなぁしかも初段相手に一本とれる気しないし、何よりイズミさんゲストだから勝たせたいし……』

『そうだ!勝負自体をうやむやにすればいいんじゃね!?』

その結果あの男はフルボッコされました。マジドンマイww

まぁ最終的にフルボッコしたのはどっぐちゃんでしたけどw
どっぐちゃんはホントはめっちゃ強いです。
それを両手に填めた二色のブレスレット型の手枷で押さえこんでいるわけですね。イラスト参照せよ。
後さいしょからルカさんたちがぼっこすればよかったんじゃねとかそれは禁句だ。

イズミさんまた出せるといいなぁ。
次回の主役は今回出番を潰された受験生トリオと器用貧乏なカイト、そして私です←

閲覧数:148

投稿日:2013/10/02 22:53:04

文字数:4,183文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    あああ!!!!
    本当にありがとうございます!!!
    これ以上の言葉はないです!!!
    ありがとうございます!!!

    2013/10/03 20:35:20

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    わあああ!僕が登場してますww
    有り難いですww

    2013/10/03 18:47:41

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      もっと登場させたかったけどあくまでイズミさんが主役だったからねぇ今回はww
      次出る時は清花ちゃん絡みになるかなぁ……?

      2013/10/03 21:56:45

  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    どうも、なぜか右手首を痛めたゆるりーですw
    さっき間違えて「炒めた」と誤字変換してしまい、バニカさんを思い出しました←

    さすがに拳銃出されたら、私ビビリますね…チョークは効きませんからね!((
    ところで、なぜ犯人は鰹節を盗んだのでしょう…?

    イラスト見てたので、暴走したどっぐちゃんをいつか見れるだろうなとは思ってました←

    暴走しているのは私だああああああ(黙れ

    次回楽しみです!
    ところでハロウィンが迫ってますね(サササ…

    2013/10/03 17:16:06

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      あらら。受験生の右手は受験校に対する最強の武器なんだから大事にしなさいね。
      あと炒めるのもダメダメよ☆バニカさんの小説読んだ―?

      こんな都合のいい環境(敵は全弾撃ち尽くしている+自分はリーチのある武器を持っている+横に逸れられない一本道)じゃない限り自分だってビビって足止まりますよww
      チョークの問題かいなww
      ……腹減ってたんじゃない?←

      まぁ設定があるのに動かさないなんてもったいない話はないもの←

      落ち着けw
      暴走したらどっぐちゃんに嫌われるよ?(((

      次回はあんたらよーw
      ……ん?私に何か言うことがあるんじゃないかね?
      ここに一つの冷凍ミカンがあるのだが……←

      2013/10/03 21:55:54

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