展示会の、ブースの前で、しつこくリンちゃんにからんでいる、謎のオジサン。
その前に立ちはだかったのは、霧雨さんだ。
「あのねぇ、ここ、うちの出展ブースなのよ。妙にからまれると、みんな困るんだけどサ」
ちょっと気だるそうに、落ち着いてしゃべる彼女。
落ち着いている分だけ、そこに恐ろしさがある。
オジサンは、さすがにたじろいで、一歩引き下がった。
すると、いまは霧雨さんの手の中にある“はっちゅーね”が、彼に向かって喋った。
「アンタ、一体、ナニモノ?」
●あわや一発触発!
その声を聞くと、ブースの周りにいた、リンちゃんのファンの男の子達も、口々に言い始めた。
「そうだよ。オジサン。あんた誰?」
「そうそう。ちょっと馴れ馴れしいんだよ、ボクらのリンちゃんにさ」
ちょっとふくれ面をして黙ったオジサン。
霧雨さん、リンちゃん、ファンの男の子は、一発触発、という感じで向かい合った。
すると。
「あ~れー、れおんさんじゃない。何してんのよ」
ブースの後ろの方から、すっとんきょうな声が飛んできた。
それは、首をかしげながら近寄ってきた、たこるかちゃんだった。
「オー、たこるかチャ~ン、よく来てくれマシター!」
ホッとしたように、オジサンは叫んで、両手を広げた。
それを見て、霧雨さんは腕組みをして、眉をしかめた。
「ん? 何、この人たち、知り合いなの?なんなんだよ、一体」
●いまのうちに逃げましょう!
「れおんさん、また無理なこと、してたんじゃないの? 困ってるじゃない、みんな」
たこるかちゃんは、小柄な体ながら、上向きに睨みつけるようにして、言った。
「ノーノー。ボクはただ、ここにいるリンちゃんと“はっちゅーね”がカワイイので、お話してたダケデスネー」
れおんさんと呼ばれた彼は、苦笑いをしながら頭をかいた。
彼をとっちめてやろうと息込んでいた、霧雨さんは、ちょっと気勢をそがれて立ちすくんだ。
「この女の子、移動カフェの人よね。このオッサンも、関係者なの?」
そう思っている彼女の心を、代弁するように、手に持った“はっちゅーね”が言った。
「ナンカ、たくらんデルのかー?オマエサン」
れおんさんはビックリして、霧雨さんの“はっちゅーね”を見ている。
それを見て、リンちゃんのファンの男の子たちは、彼女をせきたて、ブースから離れさせようとした。
「ささ、いまのうちに、リンさん!変なヤツから逃げないと」
リンちゃんもうなずいて、彼らとともに歩き出した。
と、歩き出した目の前にいたのは、コヨミ君だった。
「あれっ、コヨミさん」
「ふふ、いろいろ、賑やかですね」
コヨミ君も、にが笑いをして、つぶやくように言った。
「なるほど。“はっちゅーね”のイメージガールに、リンちゃんか。れおんさん、また、うまいこと考えるな…」(  ̄ー ̄)
コメント1
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
こんばんは! 早速拝読させていただきました♪
うーん、れおんオジサンの”怪しさ100%”も、さすがに”用心棒の霧雨さん”と”ある意味私設SPのファン連中”の気迫に負けてしまいましたね! でも、救世主”たこるかちゃん”と”コヨミ君”の登場で、ちょっと形勢逆転の気配!? というか、ますます話がこじれそうな勢いのよーな気配が。
でも、れおんオジサンの正体は、わかってきそうですね。というか、わかった時点で、ファン連中が寝返って、”リンちゃん&はっちゅーね、大メジャーリリース化計画”なんかに、協力しそうな気配も…。熱狂的ファンって、こういう話には弱いからなー。
これからが楽しみです! ではでは~♪
P.S なんか最近、また天候不順ですね。是非ともご自愛くださいませ。
2013/03/31 21:45:32
tamaonion
enarinさん、メッセージを有難うございます!
>さすがに”用心棒の霧雨さん”と”ある意味私設SPのファン連中”の気迫に負けてしまいましたね! でも、救世主”たこるかちゃん”と”コヨミ君”の登場で、ちょっと形勢逆転の気配!? というか、ますます話がこじれそうな勢いのよーな気配が。
ですね?。こじれずにスンナリいくと、普通の現実の展示会でも、ありそうな風景ですし。
いちおう、“争奪戦”なので、ややこしくなると思います(笑)
>わかった時点で、ファン連中が寝返って、”リンちゃん&はっちゅーね、大メジャーリリース化計画”なんかに、協力しそうな気配も…。熱狂的ファンって、こういう話には弱いからなー。
そうですよね、特に、サブカルのファンは、メジャー化を歓迎しますよね。
でも、先のビブリアのように、そうでない例もあるので、一概には言えません。
リンちゃんのファンはどうするでしょう…
また、ぜひ感想を聞かせてください。
p.s.春なのに雨が続き、すっきりしない毎日です。健康に留意したいですね。
それでは、また。
2013/04/02 20:50:14