砂嵐以降、天気はずっと快晴だ。
まあ、砂漠の天気が荒れることはそうそうないんだがな。
空は相変わらず青く、突き刺さる日射しは肌を刺す。その日射しは、廃墟と化したこのビル群を鮮明に映しだしてゆく。所々欠けている白い壁、コンクリートからはみ出した灰色の鉄筋。それらの生々しいまでの傷口を、容赦ないまでに鮮明に浮かび上がらせる。さながらそれは、旧時代の亡霊のように見えた。
ミクの揺れる青い髪を追いながら街の風景を眺めていたら、脈絡もなくそんな感想を抱いた。
「ほら、ケイ! あそこにミライが!」
ミクが指を指した先には、ミライがいた。
「何やってんだ、あいつ……」
ぶら下がっていた。大きく床が張り出している。壁は崩れ落ち、床だけが残っている形だ。天井というか、その階層以上の部分はなくなっていた。視線を横に移すと、コンクリートの残骸やら、砂から張り出した鉄筋が見える。なるほど。このビルの上層部は何らかの理由で崩れ落ちたというわけか。
高さは……4階分ぐらいか。かなり高いところにいるな。
ミライは、そんな崩れかけたビルの張り出したコンクリートの床に、必死にしがみついていた。
「助けてあげて! ああっ、ミライ危ないっ!」
「キュピー……!」
しがみついていた右手部分の床が崩れ落ち、一瞬落ちそうになるミライ。どっこいしたたかな小動物はしぶといもんだ。その短い左手で懸命にぶら下がっている。小動物らしい軽い体重だから助かっているのだろう。奴はああ見えても力は結構ある。オレを引っ掻く時の衝撃と言ったら、それこそ憎々しいほどの……いかん。今は奴を助けてやることを考えないとな。
「お願い、助けてあげて!」
「ああ、わかってる」
ミクは珍しく狼狽えている。彼女にとって、それほどミライは大切な存在なのだろう。ミライにはちょっとした恨みがないわけでもないが……ミクのこんな顔を見るのは気持ちいいものじゃないな。本腰を入れて助けてやらんとな。
しかしどうする? 奴は自分の体重を支えられるだけの腕力があるとはいえ、長時間は持たないだろう。奴が落ちてくるところをキャッチするか? 2階ぐらいの高さだったらそれも良いが、正直この高さじゃそれは懸命とはいえないな。
となると、オレが上から引っ張り上げてやるのが一番だな。
「……ん?」
ミライがぶら下がっている階層の奧から目を刺すような鋭い光を感じる。太陽の光を反射しているのだろう。目をこらして見てみる。
何かの残骸が、ミライよりも奧の部分に隠れている。下から見上げる形だから、その全貌は確認できないが、その残骸を構成している何かが日の光を反射しているのだろう。
……なるほど。奴があんなところにいる理由がわかった。
おおかた、この前の砂嵐で飛ばされてきた“光る何か”を回収しようとして、こんな事になってるのだろう。まったく、底意地が張っているというか……。その欲望に忠実な生き方は、ある意味羨ましいぜ。
「ありゃ上から引っ張り上げるしかないな。ミク、お前はここで待ってろ。オレが行ってくる」
「うん。ケイ……」
「ん? なんだ?」
ミクが神妙な顔をしてオレを見ている。どうしたんだ、一体?
「気を付けてね」
「心配すんな。あのアホな小動物を連れ戻すだけだ。すぐに戻るから待ってろ」
オレはミクの頭を撫でてやった。
「……うん」
な、何か調子狂うな。素直なミクなんて……。いつもだったら照れ隠しに憎まれ口のひとつやふたつ言うくせに。まあ、可愛いから良いか。
「んじゃ、行ってくる」
心配そうなミクの視線を背中に受けながら、オレは崩壊しかけているビルの中へ入った。
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