INTERMISSION2 M-mix
「……。そう、そういう、こと」
自分の部屋に座って、会話の途中で唐突に通話の切れたケータイを冷ややかに見つめ、ミクはぽつりとそう言った。
(まさか、ルカはあれで誤魔化しきれたとでも思ってるのかしら)
ミクの前では約束を守っているふりをして、彼女の見ていないところでは舌を出してカイトとしてはならないはずの幸せに浸っていたらしい。友人だと信じていた、あのルカという女は。
ケータイの向こう側から聞こえてきたルカの動揺する気配。そしてカイトの声。ミクは、それを聞いて尚、平然としていられる筈もなかった。握りつぶしてしまいそうなくらいに強くケータイを握り、部屋の壁に向かって思い切り投げつける。
鈍い衝撃音とともに、衝撃で半開きになったケータイがベッドに落ちる。その様子を睨み付けると、ミクはコルクボードに貼っていた、カイトと自分、そしてルカの三人が映る写真を剥がした。その写真を投げ捨てるようにテーブルに放ると、黒のマジックを取り出して写真を塗りつぶす。三人が写っているその写真の、ルカの所だけを。
この時の幸せはずっと続けられると思っていた。なのに、ルカがそれを壊した。もう二度と、この時に戻ることなど出来ない。ミクにはもう、ルカを認めることなど出来なかった。
(ルカ。この時の私達の関係を壊したのは、アナタでしょう? わたしとの約束を破ったのも、アナタだものね)
ミクは写真を持って立ち上がり、部屋の窓を開けると写真を外に投げ捨てた。そんな、苦痛しか呼び覚まさない写真などミクはもう見たくなかった。
「……許サナイ」
雨の中、ひらひらと近くの道路に舞い落ちたその写真が、通りすがりの車に轢かれていくのがミクの視界に映る。
その光景を一瞥すると、ミクは踵を返すように玄関へと向かう。その途中、ミクはキッチンでナイフを手にした。
(ソウ、コンナ事ニナッテハナラナインダ……)
彼女の瞳は暗く、ともすれば何も映っていないかのように、外の景色を見ることを止めてしまったかのように見える。その瞳には空虚さが漂い、彼女の内心に灯る暗い炎の存在を覆い隠してしまっていた。
(許サナイ……)
だが、彼女の中でくすぶっていただけだったその炎は、確実に燃え上がり、全てを焼き尽くさんばかりにその勢いを増していった。
ゆらりと揺れるように部屋から出て行くミクの心を押し留めるものは、最早何も残されていなかった。
(許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ……)
ACUTE 9 ※2次創作
第九話
間奏部後半をお届けします。
当初、この「許サナイ」だけで1話まるまる使おうかと考えていました。
まぁ、やめましたけれど(苦笑)
それはともかく、一つの事実があったとして、その事実に対して3人が3人とも違う解釈をしてしまった事により、原曲のような最悪の結末に――という流れをうまく表現出来ていればな、と思っています。
「AROUND THUNDER」
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