「VOCALOID HEARTS」~第3話・黄の少女~
投稿日:2013/08/16 17:28:42 | 文字数:4,140文字 | 閲覧数:503 | カテゴリ:小説
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ピアプロの皆さん、お久しぶりです!今回は第3話・黄の少女をうpしました!
…にしても、また1話のような恋愛展開を臭わせる内容に。こういうのもアリですよね?(迫真)
今回のボカロの皆さんは、キャラクター崩壊のオンパレードでした。本当にすみません…
というわけで、ここまで読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました!
次回は第4話・住処の街並みに続きます。早めの更新を目指していきたいと思います。
3月9日の夜7時。まだ冬の寒さが若干残っているこの季節に、その少女はやってきた。やがて、この少女の存在がMARTを、そしてレンを大きく変えていくことになろうとは、まだ誰も知る由はなかった。
「よし、何とか予定の時間までに間に合ったな。薄々モモが料理をヘマして、間に合わなくなるんじゃないかって心配していたんだが…」
「いやぁ、それほどでも!」
「褒めてないぞ…とにかく、ルナやめーちゃん、それにレン君には感謝しろよ」
「まあとにかく、歓迎会の準備が間に合ってよかったじゃない」
「ええ。それに今日のモモは、料理を除けばとても頑張ってくれてましたわ」
「それもそうだな。モモ、そこは褒めておくよ」
「あはは…」
「さあ、もうすぐ7時を過ぎる。みんな玄関で出迎えよう」
カイトに続くメンバーたちは、玄関に移動した。黄髪の彼女は、もうすぐそこまで来ていた。冷たい風が体を刺すような寒さの中、迷いながらも必死に道を人に聞きながら。インターホンの音が響きわたる。
「MARTの本部…MARTの本部…ここかなぁ?」
「おっ、来たんじゃないか?」
「え~っと…MART本部長・カイトさんの中央支部局は、ここですか?」
「そうですよ。そちらは?」
「えっと…カイトさんと本部メンバーさんのお手伝いにやってきました、鏡音リンです! よろしくお願いします!」
「ははっ、丁寧な挨拶ありがとう。待ってたよ、鏡音リンちゃん。寒かっただろう、中に入ってくれ」
「お邪魔します!」
「…モモ、そのよだれは何ですの?」
「あぁ、すみません、つい…ジュルリ……」
「リンちゃん、こんな寒い中よく1人で来たわね。大変じゃなかった?」
「何回か間違って、別の人の家に来ちゃいました…えへへ」
「まさかこんな狭い暗がりの路地に、MARTの本部があるなんて思わないわよね」
「さあリンちゃん、座ってくれ。早速だが、まずそれぞれ自己紹介をしようか。みんな席についてくれ!」
こうしてMARTの新たなメンバー、鏡音リンを迎える歓迎会が始まった。話は弾み、リンとMARTのメンバーたちは、どんどん打ち解けていった。みんなは、彼女の明るい性格に自然と笑顔になっていた。そしてレンは、リンとの共通点の多さに好感を抱いていた。
「リンちゃん、僕と同い年なんだね…」
「よし、一段落ついたところでいくか!」
「準備は整いましたわ」
「総長、いつでもオッケーですよ!」
「レン君、用意はいい?」
「はいっ!」
「リンちゃん、改めてMARTへようこそ。これから俺たちと共に暮らしていく大切な仲間、その君へメンバー全員でこの曲を送ります」
「え!? 曲を演奏して下さるんですか?」
「これがMARTのお約束なのよ。観客はリンちゃんだけ」
「そう、リンちゃんのためのオンリーライブだよ!」
「わぁ、すごい!嬉しいです!」
「それじゃあ、みんなでいきますよ!」
「Let's Music!」
日も沈んだ頃、東京の路地には明るい音色が響いていた。そして歓迎ムードをぶち壊す、しんみりしたルナティック・ミュージックを演奏したのは言うまでもない。だがMARTのメンバーたちもリンも、心の底から楽しんでいた。
「おっと、俺たちを差し置いて、みんなでパーティーですか?」
「おっ、雷歌兄妹も来てくれたか!」
「待ちわびていたわよ」
「これを待っていたんでしょう? 特性雷神鍋とお神酒。仕込みに時間がかかりましたけど、冷めないうちに皆さんで食べて下さい!」
「今日の晩餐に相応しい料理だな。ありがたくいただくよ。さあ、2人とも上がってくれ」
時はすぎ、午後8時半。二次会はメイコを中心に、更にヒートアップしていた。もうパーティー会場はドンチャン騒ぎ。こうなったら、もう止まらない。モモに至っては、無理矢理メイコに飲まされた上に、お酒に弱かったのもあって、真っ先にダウンしてしまった。
「はーい! 飲ーんで、飲ーんで♪ 飲んで・飲んで・飲んで♪」
「くーっ! しっかしまぁ、相変わらずキツい酒だな」
「雷鳴酒は、稲妻の如く頭に酔いが走るお酒ですからね。イブキなんか一口二口飲んだだけで、ぶっ倒れたぐらいですから」
「そうか、酒にめっぽう弱いモモはともかく、酒に強いめーちゃんでさえ、あの有り様だし…」
「カイトさん、お酒って美味しいんですか?」
「ん? そうだな。お酒ってのは大人の楽しみの1つだ。こうやってヒビキみたいな年の近い男と飲み交わすのは、いいもんだよ」
「ふーん…」
「それにしても、ここはアンドロイド支援機構という組織なのに、普通に会社員の宴会と変わらないことをやってますよね」
「そうだな。だけど毎日を自由にみんなと楽しくやっていく方が、いいじゃないか。こうやって笑いあって、話し合って、団欒を囲みあって…」
「うん…そうですよね」
「でもこの一方で、どこかで命の危険に晒されているアンドロイドたちがいるということを、忘れてはいけない。それを分かった上で、毎日の仕事は何があっても絶対に怠らない。だけど今日はMARTのメンバーが新しく増えた。だからこういう時だけは、弾けるくらい楽しくやりたい…それだけさ」
カイトはヒビキやレンに向かって、自分の夢や理想について話し始めた。彼自身、ほろ酔いの状態だったので、そのせいか口調が語りかけるようだった。でも2人は、いつにもないカイトの話に、しっかりと耳を傾けていた。
「そしていつか、すべてのアンドロイドたちが、人と何の隔たりもなく、性別も上下関係もなく笑いあっている世の中にしたい…そんな夢を想像することがあるんだ。これが実現できるなら、どれだけ嬉しいだろうか」
「カイトさんの口から、こんなに話が聞けるなんて…」
「俺がこんな話をしたら可笑しいか?」
「あ、いや…」
「ふっ、それもそうだろうよ。俺は曲がりなりに、MARTの総長をやってるような奴だからな…」
「そう言わないで下さいよ…」
「…ああ、少し酔いが回ってきたようだ。もう9時になる。飲み屋連中は当分寝そうにないから、子供たちはお開きにしようか。レン君、リンちゃんを頼む。その後は宴会が終わるまでに、風呂に入って寝るんだぞ」
「はい」
「じゃあなレン、いい夢を見ろよ。それと、リンちゃんとは仲良くやれよ」
「勿論ですよ、ヒビキ兄さん」
夜も更け、レンとリンの2人は一足先に寝床についた。これまでの間に、ますます2人は距離が近づいていた。2人は顔を見合わせて、今日の事について話していた。
「リンちゃん、今日はお疲れ様」
「うん、今日はとても楽しかったよ! MARTの皆さんがとても優しくて…本当に楽しかった」
「今日はお酒騒ぎになっちゃったけど、みんなリンちゃんのことが、とても好きになったと思うよ」
「本当に? とっても嬉しい!」
「僕も出会ってまだ半日しかってないけど…リンちゃんのこと、好きになったよ」
「…えっ?」
「いや、これから一緒に過ごしていく仲間としてでだよ! そういう意味じゃないから…」
その後にレンは「リンちゃん…」とボソッと呟いた。だがリンにはそれが聞き取れなかった。
「でもレン君、私もレン君のことが好きだよ」
「…え!?」
「だって私と、色々似てるところがあるから、すごく…」
一方、今日のMARTの歓迎二次会は、更にと荒れる様相を見せていた。メイコの一気飲みは止まらないし、モモとイブキはダウンしてしまうし…ルナと男勢は、後始末に苦労していた。
「はぁ~い♪ も~っと、飲んで♪ 飲んで・飲んで・飲んで♪」
「まったく…お前もメイコさんに飲まされてやがって…ほら、帰るぞ…!」
「あ~ららぁ~♪ 今日も~お賽銭箱の中はゼロですよ~♪」
「…手伝おうか?」
「いや、それよりあの2人を…こっちは何とか大丈夫ですから…」
「また今度も雷神料理、持ってきてくれるか?」
「ええ、でも雷鳴酒だけは少し考えますね…」
・用語説明
「中央支部局」
一言でMARTといっても日本のみならず世界各国にその拠点を構える。例を挙げると、南北アメリカ、ユーラシア、アジア、ヨーロッパ、オセアニア、そして中南米・中東諸国・アフリカ地域に一部。
ちなみに中央支部局はMART・極東区域の本拠地である。東京の入り組んだ路地裏に居を構えているのは、トリプルエーのような査察組織からの監視の目を逃れるためである。トリプルエーについては第2話の解説を参照。
「ルナティック・ミュージック」
偉大なる作詞作曲家(?)天音ルナの創造するロマンティックかつ悲壮感の溢れる曲を指す。今回演奏したルナティック・ミュージック「黄昏色の楽器」は第2話の本文参照。しかし、作詞のセンスがまるで無いうp主。
「雷神料理」
雷神鍋、雷鳴酒などがその代表であり、平安時代の末期から続く伝統料理である。
芥川龍之介の著作・羅生門を読んだ方ならイメージしやすいかもしれないが、平安時代の終わり頃に盗み、地震や台風などの天災、流行病などにより、世情はとてつもなく荒れ果て、人心は乱れていた。貴族の雅な生活の面影は、何処に求めようもないほどに。
雷による災害も昔から数多く起きていたが、初代の稲妻神社の神主が雷を含めたこれらの大災害を鎮めるため、神社を建て、食べ物を集め、人を集めた。食べ物もお金も全て捧げて神に祈ったのである。
雷神鍋や雷鳴酒はその時に作られた料理なのである。豪華な食材をふんだんに用い、味噌をベースとしている。日本珍味鍋100選にも選ばれているほど。結果それが神の怒りを鎮めたと言うべきか、やがて大災害は去り、同時に貴族主権の時代は終わりを迎えた。
代々続いていた稲妻神社の神主が急死し、後継者もいなかったため、後の守護者は神主アンドロイド・雷歌兄妹に引き継がれることになった。
作品へのコメント2
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ご意見・感想
オセロット隊長、お久しぶりです!
コメントが遅れてしまい申し訳ありませんッ!
まさか新メンバーがリンだったとは!
しかもこの2人の関係…これはリア充ルート必須ですねwww
しかし…レンはイブキさんの事が好(ry
第4話の完成待っているであります!2011/06/07 15:14:10 From ミル
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メッセージのお返し
ミルさん今日は!
そのコメントを待っていた…待ちわびていた!
そうなんですよ、このままだとレン君の二途、下手すると二股ストーリーになっちゃうんですよ…ってもうなりかけてるかw
取り敢えず昼ドラ展開は避けるように書いていきたいと思いますww
次も頑張ります!2011/06/07 15:24:07
オレアリア
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ご意見・感想
読ませていただきました!!
ヤバいですこの作品!世界観が既にツボで、すらすら読めてしまいました!こういうの大好きです!!
自分的には曲を演奏するシーンが入っているのが「VOCALOIDであること」を意識させてくれて凄く印象的でした!!自分の小説はその辺全く意識出来てない……反省しなくては……
続き楽しみにしています!レンはリンとくっつけばいいと思うよ!!←2011/06/07 00:07:59 From 瓶底眼鏡
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メッセージのお返し
瓶底眼鏡さん今日は!
メッセージを頂いた事、本当に嬉しい限りです!
小説を書き始めて2年少し、これほど気に入って頂いた方は初めてです!
いやぁ…メッセージを拝読させて頂いた後にもう小説止めずに書いてて良かったなぁ……って病院の中1人喜んでましたw
吹奏楽の人間である自分には、やはり大好きなVOCALOID達がクールに演奏する描写を出したいって思ってしまうんです。
ボカロデビューのが叶ったら、OTHERprojectさんが作曲作詞されたミラクルペイントのようなジャズミュージックを作りたいと思ってます!
また今日に瓶底眼鏡さんの作品を拝見させて頂きます!
レンとリンは…くっついちゃうかも知れないよ!
瓶底眼鏡さんは「ハク姉さんがラヴ!」と言う事を知ったので番外編かサイドストーリー扱いになるかも知れませんが、小説内で活躍させたいと思います!
2011/06/07 13:02:45
オレアリア
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様々なクリエイターさんの創作作品を見たい思いでピアプロにやって来ました。そのピアプロのユーザー様のおかげで、底辺の作家ながら今日まで創作活動を続けられています。
現在はシリーズものを中心に、番外編も交えながら小説を書いています。イラストは自身の画力不足で、とてもうpできません…でも、ごくたまに晒すかも? そんなワケで、ここでは身内や友人のイラストを投稿させて頂いています。更新の方は自身の都合上で、なかなか思うようにできていませんが、時間の合間を縫いながら少しずつ書いています。
なお、7月下旬から「VOCALOID HEARTS」シリーズ多数が注目の作品入りしています。こんな駄作が…ありがとうございます!
軽い挨拶と紹介になりましたが、皆さんよろしくお願いします! 余談ですが、カラオケでの十八番はいろは唄とかだったり←
メッセージ等は必ずお返しします…とか言っときながら返信おせーよ!
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