第七十二話 愛しい背中

 彼旅立った。
もうあたしとレンが会うことはまずないだろう。

 見送りくらい行けばよかっただろうか。

 それでも、レンを見るときっとひきとめてしまう。
消えちゃうくらいに抱きしめて共に生きたいと思ってしまうわ。

 

 だから―――これで―――。



 「よかったのかよ。見送り、行かなくて」

 「うん……いいの……レンはあの子しか見てないから……」

 「ふん、大人ぶりやがって」

 こんな憎まれ口をたたくのは、カイトしかいない。
でも最近は――レンの≪人間界≫行きが決まってからは良く話しかけてくれていた。

 今あたしがいるのは自室。
乙女の部屋にノックなしで入ってくる根性は疑わずにいられないが、今はそんなことに突っ込みを入れられるような気分ではなかった。


 「3年前にね、≪魔界≫へ帰ってくるちょっと前くらいからね、あたしレンの幸せがあたしの幸せだって、思えるようになったんだよ」

 「無理してんじゃねーよ、馬鹿が」

 「向こうでレンがあの子と一緒に暮らして、幸せなら、あたしはそれでいい」

 「……そりゃぁ、ミクを殺したあたりの顔に比べりゃいいけどよ……。お前、自分のことも考えろよ」

 

 震えた。

 カイトのその言葉に、肩が、足が、心が。



 「さっきから聞いてりゃ、レンのことばっかだ。お前はちょっと自分の為のことも考えた方がいいぞ、馬鹿」



 「ホントだ……」


 さっきからレンのことばっかり考えてる。
でもそれくらい好き。

 すき、大好き。



 「伝えた……かったなぁ……」






 あたしは独りごとのように呟いた。





 もう行き場を失くした大きすぎる気持ちが、足元に転がったままどうしたらいいかわからなかった。



 だいすき。


 愛してる、レン。





 さようなら。

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ノンブラッディ

あれ?
グミちゃんサイドって後の予定だっけ??
まあいいかw

閲覧数:148

投稿日:2013/05/05 12:58:29

文字数:795文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    グミちゃん、行動力はあるくせに、そういうのは奥手すぎるよー

    自分のためにうごかなky……でも、自分を犠牲に出来る人ほど、損はするけど、周りからの信頼も厚い気がするよ

    2013/05/06 13:25:35

    • イズミ草

      イズミ草

      そういうところが可愛いんだと思われーww

      ですねーw
      そんな人になって、人から厚い信頼をされてみたいものです……
      でもグミちゃんまできたら、自分の為に動かなきゃいけないというか……
      いつ動くの? ……今でしょ! になりますねw

      2013/05/06 20:37:28

  • 和壬

    和壬

    ご意見・ご感想

    予定通りじゃなくてもぉー…
    別に皆楽しみにしてるからぁー…
    いんじゃね?

    いいんですよーもっと延ばして(((延ばしちゃえー☆

    おひさです。のーかです。
    じゃばにー

    2013/05/05 18:15:03

    • イズミ草

      イズミ草

      ええ!!??
      今はもう……遅かった……って感じですww
      もう私の中ではENDに一直線なのでww

      お久しぶりです!
      なかなかアイコン仕上げれてなくてごめんなさいです……orz

      2013/05/05 18:41:58

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