A1
雪を照らす弓張月(ゆみはりづき)を
翳(かす)ませ 花魁道(おいらんどう)
百燈(ひゃくとう)灯した 大籬(おおまがき)で
さぁさ 甘い夢を見て


B1
“闇の夜(よ)は 今宵も、
吉原ばかり 月夜かな”など
誰かが歌う

云い得て妙な話に
思わず笑って
凛と 夜見世(よみせ)に並ぶ


S1
明日も知らぬ命ならば
あの唐ノ橋(からのはし)までは送らせて
明日は違う「貴方」の為
咲き乱れる花ともなりましょう



A2
遊里(さと)の色は肌に馴染んで
咽(むせ)ぶ色情(いろ)も愛しい
百度交わした 秘め事には
きっと真(まこと)はないのに


B2
“闇の夜(よ)は 今宵も
吉原ばかり、 月夜かな”など
誰かが囃(はや)す

云い得て妙な話ね
思わず哂(わら)って
凛と 夜見世(よみせ)に並ぶ

S2
べんがら越しの 冬景色
昔のしなびた思い出よりも
情け深く包むけれど
ふと 袖濡らす何か込み上げて


S3
「お前だけ」と嘯(うそぶ)く罪
互いに戯れに口をついて
夜の帳が下りたなら
仮初めの恋だけを染めていく


C1
はらり はらり 雪のように
気の向くままに 風の吹くままに
今は 一夜の 雪花火
数多(あまた)の「貴方」へ捧げて生きる



S4(同S1)
明日も知らぬ命ならば
あの唐ノ橋(からのはし)までは送らせて
明日は違う「貴方」の為
咲き乱れる花ともなりましょう


S5
咲いて 咲いて 散りゆくまで
幾度でも蝶を通わせる身が
貴方だけの 雪花火に
いつかなれる日を待ちわびている

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

雪花火

今宵は一夜 数多の「貴方」様へ捧げる身。
いつの日か ただ一人の貴方と寄り添う身。
咲いて とけあう 花となる。


歌詞の情景・一部語句説明などは「前のバージョン」に書いてありますので、そちらをごらんください。
こちらではやや深く掘り下げた説明を行いたいと思います。


Bメロの“”部分は榎本(宝井)基角の俳句を元にしています。
“闇の夜は吉原ばかり月夜かな”。
これに「今宵も」と「、」を加えたものが歌詞になっています。
注目していただきたいのは、「、」の場所がB1+B2で違うということ。
B1の場合は、闇の世でも吉原だけは月夜のように輝いている。
B2の場合は、月の輝く夜でも吉原(の女たち)だけは闇夜のようだ。
という内容に捉えることのできる二面性を持ったものになってます。


おそらく初めてとなる「私」という一人称の出てこない歌詞です。
そして明白な二人称となる人物も出てこないものでもあります。
一人称に関しては途中まで意識していなかったのですが、
「一貫して同じ人物の視点だし、「私が私が」と何度も書くと情緒にかけそうだから、今回は最後まで書かずにいこう」と決めました。
「貴方」は今回の歌詞のキーワードのひとつになっていますね。
説明不要とは思いますが、「」付きはお客としての不特定多数の男性を指し、最後のサビの無印の貴方はいつかただ一人を指すためのものです。


最後にタイトルでもありもうひとつのキーワードでもある「雪花火」について。
これは参考にさせていただいた長島槇子さんの「吉原純情ありんす国」の
「廓の花は江戸の華、花火のようなものでありんす」
という一文から着想し、また今回は「冬」をテーマとした作品になることから生まれました。
花魁を花火のように例え、雪のように淡く儚く毎夜とけ、いつかはただ一人ととけあうために花を咲かせる。そんな意味を込めました。


参考資料
長島槇子「吉原純情ありんす国」
永井義男「図説 吉原入門」

※こちらの本には大変お世話になり、またここからの一部引用もありますので、動画の説明に一文くわえていただきますようお願いいたします。

※この歌詞は和風コラボ「歌詠ミ鳥」にて使用しております。

閲覧数:501

投稿日:2013/12/19 23:41:13

文字数:661文字

カテゴリ:歌詞

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