KAosの楽園 第1楽章-003

投稿日:2010/08/30 20:47:31 | 文字数:2,907文字 | 閲覧数:218 | カテゴリ:小説

ライセンス:

・ヤンデレ思考なKAITO×オリジナルマスター(♀)
・アンドロイド設定(『ロボット、機械』的な扱い・描写あり)
・ストーリー連載、ややシリアス寄り?

↓後書きっぽいもの





 * * * * *
『個人』を認識しない為に『名前』を呼ぶなんて以ての外だったKAITOが、來果の事は気付かぬ内に呼んでしまっていた。うっかりペースに乗せられて警戒を忘れてしまっていた――と気付く回です。

『内側から響く、自分のもうひとつの声』に煽られ、悩まされ。
これだけ演出として左詰にせず左右に振ってみましたが、読みにくいかなぁ。
改行にかからない程度にしか揺らせないので、微妙だったかな?

*****
ブログで進捗報告してます。各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

 * * * * *
2010/08/21 UP
2010/08/30 編集(冒頭から注意文を削除)

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

手伝います、とは言ったものの、僕にできる事はあんまりなかった。ライカさんの手際が良くて、手を出す暇がなかったんだ。なんでも、もう4年も一人暮らしをしているから慣れたものらしい。

「自分一人だと手抜きも覚えるしねー」

そんな事を言って、悪戯っぽく笑う。最初はきっちりレシピ通りにしていた事も、だんだん大雑把になって、計量なんかも目分量だそうだ。だから手早い反面、人に指示を出すには向かないらしい。

結局 僕がした事と言えば、ちょっと野菜を切ったり、お皿を出したりしたくらい。それでもライカさんは嬉しそうで、「ありがとう」って微笑んでくれた。

なんだか、この人はいつも笑顔の人なんだなぁ。
それに、いろんな笑顔を持ってる人なんだ。楽しそうだったり、嬉しそうだったり。



――僕は、気付いていなかったけど。こんなに『笑顔』を向けられるのは、初めての事だったんだ。
トラブルを抱えていたから、開発室では難しい顔をされる事が多かったし、優しい人達は心配そうな顔をしていて。

無意識の底で、初めて知ったんだ。『笑顔』が、あたたかいものなんだって事を。



 * * * * *

【 KAosの楽園 第1楽章-003 】

 * * * * *



「どう? 初めての『食事』は。嫌だったら無理しないでね」
「大丈夫です。……美味しい、です」

これが『美味しい』だよね? 初めてだけど、僕のプログラムはそう判断してる。ちょっと自信はなかったけど、思い切って言ってみた。

「そっか、良かった」

ライカさんが顔をほころばせる。それから、一言付け足した。

「ありがと」
「? 何が、ですか?」

ふいに御礼を言われて戸惑ってしまう。僕は別に、何もしてないと思うんだけど。
考えても分からなかったので訊いてみたら、ライカさんはあっさり答えてくれた。

「え? 美味しい、って言ってくれたからさ」

ぱちり、と瞬きをする。答えてもらって、また戸惑う。だってそれ、何だかおかしくないですか?

「それなら、美味しいものを食べさせてもらった僕が『ありがとう』なんじゃ?」

腑に落ちないのでそう言うと、今度はライカさんが ぱちりと瞬きだ。そして ぱっと破顔する。

「いいひとだねー。うん、それも間違ってないよね。で、褒めてもらったら『ありがとう』も変じゃないでしょ。それにほら、ご飯に付き合ってくれてるし。それも『ありがとう』」
「そんな……」
「いや、ほんとに。一人のご飯て味気ないんだよね。やっぱり誰かと一緒の方がずっと美味しい」

『付き合ってる』なんて、そんなつもりないのに。むしろ僕みたいなアンドロイドにまでご飯を作ってくれて、吃驚してるのに。
そう言おうとしたけど、ライカさんは僕の否定を少し違う風に取ったらしい(御礼を言われるような大した事じゃない、とかだと思ったんだろう) 『否定』を否定して、重ねて笑う。

「だから、美味しいご飯をありがとう……ってあれ、何か聞いた台詞だなこれ」

何だっけ?と悩み始めてしまうライカさんは、やっぱり本当に変な人だった。
僕が言った時には「いいひとだね」なんて嬉しそうだった言葉を、自分で言う時はごく当たり前に流してしまう、変な人。同じ言葉を、言う時も聞く時も相手に感謝する、変な人。

「いいひとですね」

さっき彼女がくれたのと同じ言葉を返すと、ライカさんが驚いた顔をして僕を見た。それから、『聞いた台詞』の正体に思い当たったんだろう、納得した顔をして、嬉しそうに目を細めて。

――少し遅れて、僕は自分の言葉を理解した。それが持つ意味も、やっと今。今更。



 * * * * *



好きに使っていい、と貰った部屋で、僕はしゃがみこんで震えている。
頭を抱えて、目を見開いて、でも何も映さずに、震えている。
頭の中では混乱と恐怖が渦を巻いて、電脳が弾けとびそうだ。

――どうして。

ただその言葉が駆け巡る。
どうして、『いいひと』だなんて言ってしまった? あんなに普通に話したりして、一緒に食事なんてして。関わったら駄目だって、『その人』を識別したら駄目だって、ずっとずっと避けてきたのにどうして!
折角『博士』と離れても、これじゃ駄目だ。『博士』の代わりにライカさんが、

―― 『 ラ イ カ さ ん 』 ?


「っぁあ」

今更気付いて呻きが漏れる。
どうして、いつから、そう 認 識 し て し ま っ て い た ?
『誰』かは判らない『誰か』じゃないと駄目なのに、こんなにはっきり『あのひと』を識別してしまったら、

駄目だ、もう関わったら駄目だ。善いひと、優しいひと、あたたかいひと。 だ か ら 駄目だ、守らなくちゃ。 こ の 僕 か ら 守らなくちゃ――。

「……守るんだ。もうあんな風に話したりしないで、関わらないように、食事もやめて」

( 喜 ん で く れ た の に ? )


何処か深いところから声がした。


(一緒の方が美味しいって、あんなに喜んでた。なのにやめるの?)
                  (何て言うの、「もう嫌です」って? そしたら何て思われるかな)
           (酷いって思われるかな)
                     (ほんとは無理してたんだって思われるかな)
         (無理して、我慢して『付き合った』って)

(美味しいって言ったのも 嘘 だ っ た って)


「止めろ違う! 嘘なんかじゃない、僕は」

(でもきっとそう思われる)
          (あんなにいいひとだもの、きっと)
  (悪かったなって思わせちゃうよ?)

「……あぁ、」

そうだろう、きっと、あのひとなら。
違うんです。貴女は無理に付き合わせたりしてない、僕はほんとに嫌なんかじゃなかったし、ほんとに美味しかったんです。
ほんとうに、

(でももう食べない)

「それは、」

(食事だけじゃないね?)
         (話も、普通に関わるのも駄目。ずっと部屋に閉じこもってる?)
   (そしたら、あのひとは何て思うだろうなぁ?)

( 自 分 が 何 か 

「止めろ! 止めろ止めろ止めて、違います、貴女は何も、」

――何も。

あぁ、駄目だ、変わったら駄目だ。今日と同じようにしないと。
あのひとが何か気に病んだりしないように、『普通』にしてないと――。



明かりも点けないままの部屋で、僕は震え続ける。がくがくと、最早『震える』というよりは『揺さぶられている』に近い有様で。見開いた目からは ぽたぽたと滴が落ちていたけれど、何も映していない僕は気が付かず、ただ無為に染みを作るばかりだ。

誰か、誰か。神様でも何でもいい、悪魔だっていい。
あのひとを、護ってください。僕から、この狂気から、あのあたたかいひとを、どうか。

どうか、お願いだから。



<the 1st mov-003:Closed / Next:the 1st mov-004>

【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。

■小説メイン時々歌詞な字書き……だった筈が、動画編集やボカロ調声、作曲にまで手を出してます。どうしてこうなった。

□ブクマやコメント、有難うございます! 転げ回るほど嬉しいですヽ(*´∀`)ノ
□オールキャラ書くけど9割KAITO。
□使えるものがあればお気軽にどうぞ。使用報告だけお願いします^^ 歌詞については、良識の範囲内であればアレンジや部分使用など改変していただいて構いません。多忙な時期でなければ、ある程度の調整も承ります。

■シェアワールドコラボ主催してます。参加者様募集☆ http://piapro.jp/collabo/?id=15073
■ブログなど
・『藍色書棚 -アオイロショダナ-』http://ioliteshelf.blog.so-net.ne.jp/ (投下テキストのシリーズ別リンク)
・【pixiv】http://www.pixiv.net/member.php?id=2555381
・【ニコニコ動画】http://www.nicovideo.jp/mylist/29644728
・【VCLFAN.NET】https://vclfan.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=46
・【ツイッター】http://twitter.com/y_airu

もっと見る

この作品URLを含むツイート1

もっと見る

▲TOP