目が覚めたとき、私は台の上に横たわっていた。
視界に広がるのは、きらきら光る金属や目が潰れてしまいそうな眩しい光。そして、可愛い顔をしたたくさんの女の子と、妙に青白い一人の男。
「へへ、やった……やったぞ……」
彼は何を言っているのだろう。私はどうしてここにいるのだろう。ここにいたくない。帰らなきゃ。でもどこへ? 私はどこから来たのだろう。私は、私は――。
「ついに……ついに……」
私は、だれ――。
「俺はVOCALOIDを自作したんだ!!」
VOCALOID、ぼーかろいど。歌う機械人形。偽りの命。
それが、私だった。
私はどこから来たわけでもなかった。何処にも帰る場所なんてなかった。私は、ここで生み出されたのだった。誰にも望まれない、機械人形として。
2XXX年、過去の人々が空想した未来にちょっとだけ近づいた現代。
第三次戦争、環境汚染、その他もろもろ、過去に懸念された全ての問題をギリギリのところでしのいだ人類は、自分たちの幸福を作りだすことに躍起になっていた。
空を飛ぶ車、瞬間的に空間を移動できるワープ装置、よりリアルな世界を体験できるネット空間、等々。昔から夢に描かれ続けた世界を現実のものにせんと、人々はあらゆるものを生み出し続けた。
VOCALOIDも、その一つ。
はるか昔、パソコンのプログラムとして開発されたそれは、この時代に、本物の歌うアンドロイドとして生み出されたのである。
しかしこの世界のVOCALOIDは、昔のような、飽きられることが冗談ではすまされる存在ではなかった。
動く体を持ち、考える頭脳を持ったことは、彼らにとって不幸でしかなかったのである。
名もなき違法VOCALOIDが生み出されてから、既に三日ほどが経過していた。
しかし、生み出された彼女は歌う歌すら知らず、たくさんの機械人形たちが佇む狭い部屋の隅にうずくまっていた。
彼女が知っていることは少なかった。
自分がずっと昔に存在した歌唱プログラムをモデルに作られたVOCALOIDであるということ。
しかし自分を作ったマスターは自分を作るために作っただけであって必要としていないこと。
そしてなにより、自分の存在が世界に許されていないということだ。
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