ねえ、それ面白い？
　面白いんだ、そうなんだ
　あたしはさっぱりわからない
　みんなが見ているバラエティ
　どこがどうして面白い？
　だって映った芸人は
　太っていると言われてさ
　それでみんなに笑われて
　泣きそうな顔しているよ
　それでもこれが面白いんだね
　みんながみんなそう思うんだね
　それじゃあ、あたしがおかしんだよね
　わかってる、ちょっと確認したかっただけ
　それじゃあ、テレビのまねをして
　誰かを指さし笑うのも
　おかしなことじゃないんだね
　そうだよね、そうだよね

　ねえ、ドラマじゃよくさ
　熱血漢の主人公が
　誰にも相談しないでさ
　たった一人で行動し
　自分の想いを貫いて
　みんなが無理だと言うことを
　結局解決しちゃうけど
　それっていったいどうなのさ？
　なんでお前は万能なのかな？
　ホントはもっとあったはずだよ
　いい方法があったはずだよ
　だけど自分で決めつけて
　一人の方がかっこいいから
　他人の力は借りないで
　そうして無理矢理解決するんだ
　なんだよそれ、馬鹿みたいだよ
　心配している周りが馬鹿みたいだよ
　どうせあたしはおかしな子だから
　言ってやるよ、大声で
　なんだよそれ、やってられない、馬鹿みたいだよ

　ねえ、救うって行為はさ
　きっと偽善的なんだ
　だってそれは誰かを救わないってことを
　決めてしまう行為だから
　きっと偽善的なんだ
　仕方がないけどそういうことさ
　だから誰かを救うときは
　必ずみんな歯をくいしばって救ってるんだ
　きっとそれは無意識だけど
　悲しみとも呼べない悲しみに耐えてるんだよ
　そういうことさ
　それだけのことさ

　きっと言っちゃいけない
　好きだとか嬉しいとか
　悲しいとか苦しいとか辛いとか
　そういうことは言っちゃいけない
　いけないんだ
　その感情は口にした途端、
　相手の気をひくための
　パフォーマンスになっちゃうから
　たとえどんなに真実でも
　嘘かどうかわからなくなる
　だからホントは駄目なんだ
　あたしたちは黙ったまま
　伝わらない感情を伝えるしかないんだ
　そしてそんな不可能に敗れ続けて
　いつしか嘘に慣れ切ってしまうんだろうね
　ううん、もう慣れ切ってるんだろうね
　あーあ、悔しいなあ、悲しいなあ
　……なんてね、
　あたしの言うことは別に信じなくていいから
　どうせあたしはおかしな子
　みんなとちょっと違うらしいから
　これもきっと間違ってるよ
　正しさなんて多かれ少なかれ独善的で
　多数決にならざるを得ないから
　きっとみんなが正しいよ
　傷つくことが怖いから
　他人と距離をあけたあたしは
　絶対どこか間違ってるよ

　独裁者になれたらな
　他人がどうとか悩まなくてすむのにな
　独裁者になるにはさ
　自分だけを信じればなんかなれそうだよね
　だけどやっぱり独裁者になってもさ
　きっとあたしは悩むだろうな
　他人がどうとか悩むだろうな
　独裁者になったとしても
　あたしはあたしのままだろうな