みんな、みんないなくなってしまった。
                   白い髪の私以外。
                  残った物は、心の傷。
                    あの絶望。
                  耳に付き纏う悲鳴。
               そして、焼け野原となった祖国。
             彼女の代わりに、私が死ねばよかったのに。
           私に生きる意味を教えてくれた、あの子の代わりに。
                   どうして。

                   どうして?

 異国の、港町の教会で新たに暮らし始めた。心に深い傷を負いながら。でも、決して死のうとはしなかった。潔く死んでいった彼女のように、私もなりたい。だから、自ら命を絶つなんて事はしない。死にたくなくても、あの日死んでいった人がたくさんいるのだから。あの光景を、忘れたとは言わない。どれだけ苦しくても、自害するなんて無様な事はしない。
 ――でもやっぱり、
「寂しい、な………」
 私は苦笑するように、小さく笑う。

 そしてある日、革命で黄の王女が死んだと、風の噂で聞いた。あの暴君の、王女が。
「……」
 それは、当然だと思う。
 きっと、あの日大切な人を、恋人を、親を、子供を、殺された人がいるだろうから。それに、あの青の王子。
 彼は未来(ミク)を失って、王女を憎んだだろう。もちろん、私もだけれど――…
 私は、教会のすぐそばにある砂浜を歩く。特に、何かしようとは思わない。けれど、こうして1人で歩いていたら、彼女が。
 彼女が、
『もう、何でこんな所にいるの。寒いでしょ、早く私の家に来て!』
 ………なんて、ひょっこり帰って来るかも、しれないから。あの日、居なくなった彼女が。まだ、二十歳にもなってなかった、彼女が。
「……………ぅ」
 私は、声を押し殺して泣く。昔からの癖だ。声を上げて泣いたら、また村の人に嘲笑(わら)われるから。いつも、暗い部屋の隅で泣いていた。父さんが居なくなって、1人で泣いていた。絶対に、外に聞こえないように。
「………」
 でも。
「………く…」
 今だけは。
「…み、く………未来……!!うわああぁぁぁぁぁぁ!?」
 今だけは、声を出してもいいよね…

 ひとしきり泣いた私の視界の端に、何かが映った。
 人だ。
 人が倒れている。まるで、あの時の様。千年樹の傍に倒れ居ていた彼女が、もしかしたらまた――
 私の僅かな期待はすぐに消え失せた。倒れている人は、髪が短くて、それに黄色だった。そして短い髪を気持ち後ろでポニーテールにしている。
 見た目は14歳位だろうか?
 私は彼女に駆けよる。そして生きているのを確認すると、彼女を抱き抱え教会に入った。そして聖堂の椅子の一つに彼女を寝かせる。

 しばらくすると、彼女が目覚めた。
「あれ、貴女は…?」
「私は、白(ハク)。あなたが砂浜で倒れていたから、ここまで運んできたの。あなたの名前は?」
 それに彼女は驚いたように蒼い瞳でこちらを見つめて、そしてすぐに笑う。
「有難う。私、お世話になった様ですね。私は、凛(リン)と言います」
 言葉遣いが、14歳とは思えないほど綺麗だった(聞けば本当に14歳らしいが)。まぁ言葉遣いとかそういうのはよく知らないが、私の村の人たちよりは綺麗だった、という事だ。
「…それで、どうして倒れてたの?それに男の子みたいな格好…」
 男の子、というよりは召使という感じなのだが、それは言わないことにした。それに彼女は暗い表情になって、呟く。
「………とが」
「え?」
 小さくて聞き取れなかった。もう一度聞きなおそうとしたが、その必要はなかった。彼女は目に涙を浮かべて、
「…弟が、殺されて……私の、せいでっ!」
 私は、凛の肩に手を置く。
――まるで、私みたい。

            いつのまにか二人は、とても仲良くなった。
            だけど、私と彼女、何もかもが違った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

third chapter 白ノ娘ト黄ノ娘

リン登場!

そろそろ終わっちゃうかなー…

ちなみに投稿中のBGMは『プリティふんどし☆悪マレン』です(笑)

閲覧数:331

投稿日:2010/02/03 06:41:39

文字数:1,707文字

カテゴリ:小説

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