!!!Attention!!!
この話は主にカイトとマスターの話になると思います。
マスターやその他ちょこちょこ出てくる人物はオリジナルになると思いますので、
オリジナル苦手な方、また、実体化カイト嫌いな方はブラウザバック推奨。
バッチ来ーい!の方はスクロールプリーズ。
耳から入って体の奥まで響くその低音は、とても心地良い。初めてこの声を聴いたその時よりもずっと・・・ずっと奥の方へと届く声。
私の真似ではなくて、カイトらしい歌い方で聴くその恋の歌は、力強いのにどこか悲しげで涙が零れた。
カイトの歌うその歌を何度聴いても・・・今でも涙が出る。
彼が歌っている動画を司くんが投稿してくれたのは、ほんの数日前のこと。あの日の全てが落ち着いた後だった。
再生数は伸びていて、コメント数も順調に伸びている。それはまるで、カイトの存在がどんどん大きくなっていくように。
「泣いてくださった方がたくさんいらっしゃるみたいですよ?」
自分のことでもないのにすごく嬉しくて弾む声で言うと、私が座っている椅子の背もたれに両手をついたカイトは、後ろからディスプレイを覗き込む。
音量を上げると、流れてくるカイトの歌声。他のカイトの声とはまた違う、彼の声。
愛しい人を想って、でもその人には伝えられないと悩みながら、それでも伝わればと強く願う声。こんな声で歌われたら、きっとその気持ちに気付いた人は皆涙してしまう。大人の恋を知った、子どものよう。好きだと伝えれば伝わるものだと思っていたのに、それが叶うものではないと知って伝えられなくなって、静かに諦めることもできず足掻いている。
「・・・激しくて、けれど繊細で。
焼け付くような、胸を締め付けるような・・・大切な人を呼ぶ声」
超えられない壁を前にして、諦めるしかないと知っていながらも呼ぶ。
目を閉じて耳を澄ませば、誰かが胸の奥を叩く音がしそう。
カイトに想われている人はとても幸せだ。
目を開こうとした時、ふと肩に重みが乗る。遅れて目を開くと、視界の端にカイトの顔が映った。
「――マスター、抱きしめていいか」
至近距離で囁かれたかと思うと、次の瞬間には腹部でしっかりと腕が固定されていた。聞く前に抱きしめるなんて反則だ。
「ふ、え・・・か、カイトさ・・・きゃぅッ」
きゅっと不意に力が込められた腕に、思いっきり驚いてしまった。心臓が口から飛び出しそうな勢いでうるさく鼓動を刻んでいる。ボーカロイドだとわかっているのにどうしてこんなに緊張しているんだろう。
動画から聞こえるカイトの歌声が、まるで私に宛てたもののように聴こえてしまって余計に恥ずかしい。
息をする微かな音が耳から伝わってくるのが、妙にリアルすぎる。
「なあマスター、『カイト』って呼んでくれないか」
耳元にかかる息と直接体に響いてきた声に、「ひあっ!」と妙な声が出てしまう。緊張しているのは私だけだというのに。
恥ずかしいし、何だか情けない。顔も体も全部熱すぎて考えまで沸騰してしまいそう。
カイトが顎を肩口に預けて俯きながら、手にきゅっと力をこめるのがわかった。
「呼んでくれたら・・・離すから」
混乱がその声に解けていく感じがした。
呼んでくれと言われているのに、どうしてだろう・・・離れたくないから言わないでくれと懇願されているような気がするのは。
子どもが親に縋り付いているような状態で、カイトはただじっとしていた。言うべきか言わざるべきかと悩みながら、腹部辺りにあるカイトの手にそっと触れる。カイトの手は強張るように少しだけ動いたけれど、それ以降は動かなかった。
「カイトさ・・・・・・カイト」
言葉にすると、回されていた腕が力をなくして、ようやく解放される。
ちょうど、動画が終わったところだった。
カイトに向き直ると、何だか少し難しい顔をしている。調子でも悪いんだろうかと考えかけたその時、何かを言いよどむ様子だったカイトが口を開いた。
「――マスター、俺にはあなたが必要だから。
だから、自分をあまり傷つけないでくれ」
真っ直ぐに見つめてくるカイトの目は、青く透き通っていて胸が締め付けられる。
カイトはあの時も、私の一番欲しかったその言葉をくれた。いらない子だって思い続けていた私に、違うんだよって言ってくれたんだ。
だから私も胸を張って伝えるんだ。同じことを、カイトにも。
『私にも、カイトが必要だよ』って。
→ epilogue (Gathering Note)
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ご意見・ご感想
sunny_m
ご意見・ご感想
こんにちは、sunny_mです。
完結お疲れ様です!こっそりと物陰読者をしていました私です。
(私は女子ですが、きっと律ちゃんは怯えちゃうだろうという勢いのストーカーっぷりでした)
痛くて泣きそうな出来事に、途中で読めなくなりそうにもなりましたが、それでもやっぱり読んでしまうあたりが+kkさんの文章の恐ろしいところだと思います。
なにこれ、麻薬ですか(笑)
虐げられる恐怖というのは、辛いです。
普通だったら怒りに変換されるべき感情が、できない、閉塞感。
痛いほど分る感情で、自分に価値はないと思っても仕方がないと思う。
だけども、もー何度、律ちゃんにアンタ、怒っていいんだからね!と言いたかったか。
(だから、最後のところで律ちゃんがカイトくんに「あなたに何がわかるの」と怒ったときはちょっとほっとしたし、嬉しかった)
今後、カイトくんに対して律ちゃんはちゃんと怒ることができるようになれば良いと思う。
そして、カイトくんは格好良いその姿で、だけどしょぼんとしてみたり、でもちょっと嬉しかったりすれば良いと思う。
そしてそして、そんな姿に司くんがちょっと淋しく感じちゃったりすれば良いと思う。
(いい加減、自重を憶えるべきだと思う自分)
それでは、遅くなりましたが、素敵なお話をありがとうございました☆
2010/04/12 14:16:34
+KK
>>sunny_mさん
こんにちは、sunny_mさん。そして、ありがとうございます!
りっちゃんはきっと女の人なら大丈夫だと思いますよ! 作者以外なら←
何だか本当に痛々しいところもありましたね・・・正直なところ、自分でも最後まで読んでくださる方はいくら心が広くてもいないだろうなんて思ってました。
・・・中毒性がありますのでご注意くださいって書くべきでしたかね?(笑
まさかりっちゃんが怒ったところをそんなに見ていただけてたとは思いませんでした。
本当に彼女は全部溜め込んでたと思うので、少しずつ出していければいいんですけどね。
sunny_mさんに「怒っていいんだからね!」と言ってもらえたら彼女も善処すると思いますが、いかがですか(待て
おおお、それはつまり司→律←ナイトですね?
何その逆ハーレム!(りっちゃんがどう思っているかは別として)
何はともあれ、みんなが笑っててくれるのが一番いいですね。
あと、そんなところで自重しなくても大丈夫です。寧ろ自重するのは自分の方。
遅くなったなんてとんでもない。
こうしてメッセージまで残してくださって、何とお礼を言えばいいやらです。
こちらこそ、最後までありがとうございました!
2010/04/13 19:38:25