戦神‐紅‐

投稿日:2010/06/04 16:43:31 | 文字数:1,100文字 | 閲覧数:111 | カテゴリ:小説

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歌詞[イクサガミ]の小説、MEIKO視点です。

補足説明。
メイコ(MEIKO)はとある大名の娘で、女武将です。一応総大将なのですが、今回の戦は彼女自ら出陣したことで辛くも勝利しました。
カイト(KAITO)は大名に仕える一族の出で、メイコの乳兄弟です。幼少期は一緒に育った仲ですが、現在は身分が違うと一歩引いた立場にいます。
ガク(がくぽ)はメイコに仕える武将です。メイコとカイトの過去は知りません。

……これ小説で言った方が良かったのかな(汗)。

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TEXT
 

 ――視界が単調だ、と彼女は呟いた。


 気が付いた時、既に西の空に太陽が傾いていた。
 日光に照らし出されたのは、足元に転がる“ヒト”だったもの。それは終わったばかりの戦で命を落とした兵士たち。彼らが流す“赤”と“赤い”夕日によって、目の前に広がる世界は“赤”一色に染め上がっていた。
 勝ったのだろうか、と思った瞬間、今まで分からなかった腐臭と鉄の臭いが嗅覚を刺激し、吐き気が襲ってきた。それを必死に抑えるように、彼女は空を睨む。

「まだ、慣れないわね……!」

 彼女――メイコは犯した所業をよく理解していた。しかし、頭で分かっていても、身体はいつまで経っても拒絶を繰り返す。
 漸く治まった頃、メイコは赤以外の色を見つけた。紫と、青。

「カイト、ガク」

 嫌というよく通る自分の声に、少し離れた所にいた男たちはメイコの方を向く。
 視線がぶつかった時、今更どのような表情をすれば良いのか、メイコは迷った。紫――ガクだけならまだマシだ。彼が仕える者として、それに相応しい顔をすれば良い。
 けれども青色、カイトには――。

「帰るわ、準備をなさい」

「御意に」

 ガクは頭を垂れ、本陣の方へ行った。しかし、カイトはその場を動かない。じっ、とメイコの顔を見つめている。

「……カイト、どうしたの」

 動揺を隠しながら、メイコは尋ねる。
 カイトとは子供の頃からの付き合いだ。その頃は、互いの身分に差があるなんて知らなかった。

『――ねえ、めーちゃん』

 かつて自分をそう呼んでいた彼も、今では一人の武人として認められるようになっていた。背はいつの間にか抜かされ、声も低くなり、見違えるほど立派な青年に成長した。
 けれども、青い瞳はずっと変わらず、綺麗なままで。

『ずっと、僕がめーちゃんを守るよ』

 そう、言ってくれたのに。


「……貴女の仰る通りに、メイコ姫」


 ずきり、と胸が痛む。
 目立つ赤い装束を纏い、刀を握って虚勢を張ろうとも、敵を斬り伏せ人々から“戦神(イクサガミ)”と呼ばれ畏怖されようとも、この痛みは治らない。

「……なら、行って皆に手を貸しなさい」

 カイトから顔を背けて告げると、彼は小さな声で「御意」と答えた。

 ――カイト、貴方は覚えているかしら。

 わずか数歩の距離が、今はとても遠く感じるけれども。

 ――私を“守る”のは、貴方しかいないの。昔も、今も。





   戦神‐紅‐





 いつか、あの頃のように穏やかな時間を過ごすために。その時は、貴方が隣で笑ってくれるように。

 私は、貴方の戦神となりましょう。

空神(うつがみ)です。
しがない物書きを自称しています。

活動は小説中心。時々歌詞もどきを書いています。

[好きなボカロ曲]
時忘人
七つの鐘
Paranoid Doll
siGrE
番凩

これらが特にお気に入り。

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